創造神の神殿3
さて、さっそく武器防具をクリエーションする訳だが、まずは素材の生産から始めなければならないだろう。
いまも神殿の外で元気にホーンラビットとじゃれ合い、もとい戦い合っている一尾を見るに、一尾の戦闘スタイルはヒットアンドアウェイだ。
ようするにゲリラ戦法である。
姿を隠す幻術を駆使して、死角からグサリと攻撃を加え、また消える。
その繰り返し。
よって、その戦闘スタイル故に大型の武器防具は邪魔になるし、重い装備もダメだ。
なるべく軽く小さく、そして姿を隠しやすい目立たぬ色を持った装備が最適解だろう。
例えば忍者や暗殺者をイメージしたデザインなんかだと良いかもしれない。
では、さっそく素材の一覧を確認しよう。
【天使:NoName】
お帰りなさいませ創造主。
何かクリエーション機能でお困りの事はありますか?
【創造神】
現在のマナで生み出せる素材アイテムの一覧が見たい。
装備を創造するのに必要な素材を表示することは可能か?
【天使:NoName】
当然可能です。
それではマナの消費量順にアイテムの一覧をご覧ください。
まずは鉱石から。
《オリハルコン鉱石》
《アダマンタイト鉱石》
《ヒヒイロカネ鉱石》
《ミスリル鉱石》
《鉄鉱石》
《銅鉱石》
《宝石類(原石)》
生体素材も表示致しますか?
装備に使用可能な生体素材の種類はほぼ無尽蔵に存在するため、オススメをご覧になられるのが良いかと思いますが。
【創造神】
大変参考になった。
生体素材についてはまた後程相談させてもらう。
そこで一旦会話を区切り、表示された鉱石類からマナの消費量も含め吟味する。
幸いマナの方は龍神が生まれ、そして人間が生まれてからどんどん資源の容量が増えていき、今では相当な量のマナが溜まっているために問題はなさそうだ。
しかしここでネックになるのはマナではなく、今の俺の錬金術師レベルで高位の金属素材が扱えるかどうかという点である。
最高位金属のオリハルコン鉱石とか、精錬すら出来る気がしない。
もしかしたらクリエーション機能の補助を受けてそれくらいは出来るかもしれないが、マナが豊富にあるのとマナを無駄に消費してしまっていいのとは、また話が別だ。
今のレベルで使えない金属に関しては、錬金術師レベルのレベル上げ用に一つくらい確保しておくのもありだが、今は実際に装備を作りたいためそれは後で考えることにする。
【創造神】
錬金術師レベル20からレベル30の範囲で錬金できそうな、オススメの鉱石はあるか?
もちろんクリエーションモードの補助を受けてという前提になるが。
【天使:NoName】
まぁ!
既に錬金術師をレベル20にまで成長させておいでなのですね、素晴らしいです。
しかしそれでも尚、オリハルコン、アダマンタイト、ヒヒイロカネを使った創造は補助を受けていても困難でしょう。
恐らくギリギリでミスリルが限界かと存じます。
【創造神】
分かった、説明ありがとう。
どうやらミスリルならばギリギリ可能らしい。
ミスリルの説明を追加で天使ノーネームに聞いてみると、素材の特徴としては『軽い』、『硬い』、『粘り強い』の三拍子が揃っている上に、さらに魔力を良く通すことから魔法への親和性が高く、魔法の発動媒体としても優秀な武器となる素材のようだ。
「ふむ、じゃあミスリルで装備を作るか」
ただ単に攻撃力を追及する武器ならば、軽すぎるミスリルは武器の素材としてはイマイチかもしれない。
ただし今回は武器で相手を叩き潰すような攻撃をする使い手ではなく、急所を狙ってチマチマと攻撃する一尾が使い手だ。
今回の創造に関しては、これ以上無い最適な武器だろう。
俺はミスリル鉱石を選択し、まずは素材アイテムを生産する事にした。
また、この素材アイテムは生産するとスマホの次元収納にストックされていくらしく、実際の創造に関してはキャラクターの生産職レベルを参考に、パソコンを操作して創造を進めるらしい。
次元収納されている無生物は全て素材として使用できるらしく、異世界で現地調達してきた魔物なんかも武器防具の素材にできるようだ。
そして俺はパソコンを操作し、ミスリル鉱石を精錬してミスリルのインゴットを量産する。
この鉱石をインゴットにするための作業では全て一定の成功を収めていて、どうやらクリエーションモードで創造した素材は自分のレベルに応じて全く同じ物が出来上がるらしかった。
何度インゴットを作っても、不純物が少し混じった中級のインゴットだと、画面にはその成分内容まで詳細が事細かく表示されている。
たぶん職業レベルが上がるか、もしくは神殿のレベルが上がるまでは何度やっても結果は変わらないだろう。
次いで、今度は精錬し完成したインゴットを武器として完成させる事にする。
クリエーションモードに備え付けられた機能でインゴットの形状を変え、強度や粘度などの金属における各種パラメーターを確認しながら作業を進めていく。
なんというかこの機能、実際に鍛冶や錬金を行う際の参考には全くならないな。
やっている事がパソコン画面を見てマウスでポチポチ、キーボードでカタカタだし……。
ま、まあ良品が出来ればなんだっていいので、その辺は気にしない事にする。
その後、俺は数時間かけて一尾の武器を調整していき、たまにリプレイモードで召喚した魔物を全て倒した一尾が「儂、強い!」とかいって騒ぎに来るので、さらに数を多くした群れに突っ込ませたり、もう少し上位の魔物の群れに突っ込ませたりしながら作業を進めた。
「……で、完成したのがこれか」
完成した装備を次元収納から取り出すと、そこにはパソコンで操作した通りの武器が淡い紫の光を放ちながら存在を主張していた。
まずは鑑定を試みてみる。
【ミスリルの短剣】
完成度:A+
耐久度:100%
特殊効果:魔法威力増加、魔法速度上昇、※※※の加護。
備考:斎藤健二が作り出した完成度の高い短剣。加護が付与されている事で、使用者に職業経験値ボーナス。
うん、なんかヤバイのが出来た。
完成度や耐久度は別に問題は無い、常識の範囲だ。
むしろ扱えるギリギリの鉱石を素材にした割には、良く出来た方だろう。
問題は特殊効果の加護の方だ。
なんだ、『※※※』って。
これ絶対、その中に創造神って単語が入ってるでしょ。
幸い鑑定レベルが足りないのかなんなのか正確に表示されないし、よほど高位の者でないと見極められないんだろうけど、もしバレたら大変な事になる。
効果は職業経験値にボーナスという、ゲームで考えればありきたりなモノだが、創造神という存在がこの惑星には俺しかいない事を考えると、唯一無二のレア能力だろう。
これはヤバイ、見つかったら確実に荒れる。
しかしかといって、クリエーション機能を使って作った装備でこれが付与されたという事は、今後俺が補助を受けて神殿で創造するアイテム関係は常に加護が付与されるハズだ。
ならば逃げる事は出来ないので、諦めて現実を受け入れるしかないだろう。
もし高位の鑑定持ちに加護の存在がバレたら、「きっと私の創造の熱意に応じ、神様が祝福してくれたのでしょう!」とかいって誤魔化そう。
そう決意を固めた俺はそのまま創造神の加護付きの鞘も作り、短剣とセットで一尾に進呈することにした。
一尾はめちゃくちゃ喜んでいたので、まあこれで良かったんだろう。
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