創造神の神殿1
扉を潜り創造神の神殿に入室すると、そこにはどこまでも続く真っ白な地平に青い空、そしてその中にポツンと佇む白い家があった。
どうやらここが創造神の神殿レベル1、というやつらしい。
確かに神殿……、というか家は小さいがそれでも色を含めデザインが神殿っぽい。
なんというかこう、神聖な雰囲気を感じる。
「な、なんじゃここは?
「大丈夫だ安心しろ一尾。ここは俺の……、俺の力か? まあその辺はいいや、その俺の力のようなもので生み出した空間だ。危険はない」
「そ、そうなのかえ? …………はふぅー、安心した」
ビビリ妖怪である一尾は俺が生み出した空間という言葉に安心したのか、足から力が抜けへなへなと崩れ落ちた。
しかし、それにしても殺風景な空間だな。
確かに神聖さは感じるが、空間のほとんどが空と白い地平しかないだけに、ちょっと寂しい感じがする。
まあ、とりあえず神殿に入ってみるか。
神殿に入ると、そこには小さな礼拝堂のような場所と椅子と机が存在し、机にはなにやらマウスとノートパソコンが備え付けられていた。
なんて違和感のある光景なんだろうか、礼拝堂にパソコンはダメだろう。
雰囲気ぶち壊しである。
「むむっ、あの得体の知れぬ白い箱から力を感じる……」
「え、そんなの分かるのか?」
一尾は狐耳をピクピクとさせてパソコンを凝視する。
しかしそうか、この感知能力に優れたビビリ妖怪がパソコンから力を感じるということは、この神殿の主な役割はアレに集約されていると見て良いだろう。
俺はさっそくパソコンの前に座り、マウスで画面を操作する。
するとそこには、アプリの時と同じような書体でメッセージが書かれていた。
ただ、そのメッセージを表示しているのは画面にいる天使のようなキャラクターであり、スピーカーが無いために音声はないものの、口を動かし喋った言葉がメッセージ欄に文章となって表れている。
【天使:NoName】
初めまして創造主よ、ここは貴方様が管理する異空間『創造神の神殿』でございます。
ここでは貴方様が神殿の機能を自由に使い、今まで出会ってきた強敵たちとの血沸き肉躍る戦いを繰り広げる『リプレイモード』や、アイテムの生産や創造を楽しめる『クリエーションモード』が存在します。
ただし『クリエーションモード』の機能解放には、職業『錬金術師』や職業『鍛冶師』などの生産系職業を習得している事が前提となりますので、ご了承下さい。
また、『クリエーションモード』ではマナを使用し簡単なアイテムや素材を生み出せますが、高度なアイテムの創造にはそれ相応の職業レベルが必須でございます。
それではさっそく『リプレイモード』、または、『クリエーションモード』をお楽しみになられますか?
【《YES》/《No》】
なんだなんだ、急に案内役みたいなのが出て来たぞ。
こういう機能をもっと早く、アプリの方に搭載して欲しかったんだが……。
まあ、我儘は言うまい。
この天使が何者なのかは全く分からないが、たぶんアプリの機能で出現したってことは敵ではないんだろう。
そもそも天使とは表示されているが、こいつが生きているのかAIなのかも分からない。
もしかしたらAIどころか、決まった文章を表示するだけのハリボテかもしれないし、分からない事だらけだ。
「
「いや、封印ではないと思うぞ。たぶんこの画面の中がこいつの元々居た住処だ」
「ほー、変わった人間もおるんじゃな」
たぶん現代の人間社会を知らない一尾には何を言っても伝わらないと思うので、適当に話を合わせておく。
それにしても選択肢がイエスかノーの2択しかないが、これはどちらかを選ぶまで先に進まないのだろうか?
そう思って少し待っていると、今度は選択肢が消えてメッセージ欄が現れた。
【天使:NoName】
お決まりにならないようですね。
もちろん今すぐにどちらかをプレイする必要はございません。
もし『リプレイモード』か『クリエーションモード』をお楽しみになりたい場合は、『コメント入力欄』にて私にお申し付けください。
そう言って天使ノーネームは一旦選択肢を引っ込め、代わりにキーボードで入力するタイプのコメント入力欄を出現させた。
おいおい、コメント入力って何を入力すればいいんだよ。
これで俺が「昨日はご飯食べた?」とか入力したらどう反応するんだろ。
……やってみるか。
【創造神】
昨日はご飯食べた?
【天使:NoName】
申し訳ありません。
私は物理的な肉体を所持していないので、栄養の摂取という機能が備わっていないのです。
よって食事を採ることもありません。
代わりに貴方様とのコミュニケーションが私に活力を与えますので、それが食事と言えば食事でしょうか?
おいおいおいおい!
本当に返事したよこの天使!
え、もしかして本当に天使だったりするのか?
いや、惑星を創造させるようなアプリが、アチーブメント達成なんていう隠し要素で出現させた異空間だ、何が起こっても不思議じゃない。
まずはこの天使が本当にいるという前提で考えよう、その方が精神的にも難しい事を考えずに済んで楽だ。
その後、俺はここぞとばかりに天使へアプリの事やこの惑星の事を聞いたが、返って来た答えは「申し訳ありません。私の知識には該当する項目がないようです」だった。
恐らくこの天使は神殿に関する情報しか持っていないのだろう。
いくらコミュニケーションが取れるからといっても、そうそう上手い話はないようだ。
ちなみにこの神殿に現在備え付けられている機能の、リプレイモードとクリエーションモードについての知識は物凄く詳しかった。
リプレイモードは過去に出会った事のある強敵を出現させ、戦闘不能になっても命を失わない疑似的な結界を作り上げて存分に戦えるらしい。
出現させる敵の数やこちらが挑む人数なんかに制限はないようなので、様々なシチュエーションに応じて戦闘訓練が行えるようだった。
「しかし、うーん。リプレイモードか」
「うーむ」
リプレイモードについて考える俺と同じような仕草で、何も分かっていないであろう一尾も考える。
うーん、リプレイモードで戦った場合でも職業レベルは上昇するのだろうか。
俺はそこが気になる。
まあまだ最近取得したばかりの【魂魄使い】はレベル4だし、レベル上げに大した経験値も必要なさそうだから試してみれば分かるだろう。
例えばワイバーンくらいの強敵を出現させ戦えば、少なくともレベルは上がるハズである。
そう考えた俺は天使ノーネームにリプレイモードを注文し、表示される一覧の中からワイバーンを選択してみることにした。
ちなみに戦える項目には今まで出会った者という宣言の通り、魔族や魔物は勿論の事、人間であるミゼットやその護衛、果ては地球人である戸神源三の爺さんやお嬢さんまでが選択可能であった。
これはすごいな、後で一尾にも遊ばせよう。
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