再び異世界へ3
他国の行商人からミゼットらしき人物の
ちなみに俺の目的地はこの国の端っこの方にある港町で、アプリではそこから大陸同士を結ぶ船が行き交っていた事を確認している。
といってもまだこの世界の文明はほとんどが未発達で、まだまだ人間が世界の謎や地理を解き明かしていない面が多い。
幸いこの大陸と向こうの大陸はお互いに認知し交流があり、冒険者ギルドという国を跨いだ組織も存在している。
まあそれでも文化や思想に若干の違いはあるようだが、だいたい王や貴族が国を治めて教会があってと、今まで異世界で培ってきた常識が通用しそうな感じだった。
その代わり、超エリート職業の聖騎士を特権階級として召し抱えている代わりに、別の複合職や上位職を優遇していたり、教会の思想が異なっていたりするという細かい部分はそれぞれに違いが出ているようだ。
ちなみにこの知識はガルハート伯爵家でクレイ少年やミゼットに勉強を教える傍ら、一緒になって勉強したことで得た知識である。
そんな感じで一尾に騎乗していた俺は、国境を渡りきったあたりでその背中から降り一尾を獣人モードへと変化させた。
「
「ああ、そのつもりだ。前の国には用が無かったから無視してきたけど、俺はもともとこの国の港町に用があって旅してたんだよ」
「ふぅーむ。大地が繋がっておるのに別々の王がおり、それぞれの支配領域が分かれているのじゃな。人間なのにまるで妖怪の縄張りのような事をする、なんとも妙ちくりんな世界じゃなぁー」
あまり興味がなさそうに一尾は語る。
一尾がどれくらい前に存在していた妖怪なのかは知らないが、こいつの暮らしていた時代では人間の国家は統一されていたようだ。
日本の直近の歴史的には、将軍がそれぞれの支配領域を持っていたりしてたはずだが、それでもその支配者の上位には将軍たちを纏める権力者が存在していた。
たぶん一尾は最上位の支配者である国王が、一つの大地に複数存在する事に違和感を抱いたのかもしれない。
将軍ってこの世界でいうと貴族みたいなものだからな、確かに王ではないだろう。
まあこれは世界観の問題というより、この妖怪が世界を知らなすぎるだけな気もするけどな。
地球だって外国には国なんていくらでもあり、大地の支配領域が分割されている。
「まあ、日本は島国だからなぁ」
「そうなのかえ?」
「何だ知らなかったのか?」
「う、うむ。海がある事は知っていたのじゃが、まさかあの大きさで島だとは思わなんだ……」
俺の回答に唖然とする一尾。
まるでハトが豆鉄砲をくらったような呆け方だ、面白い。
思わずその呆けた顔が面白かったので、スマホのカメラ機能を使って写真を撮ってしまった。
ちなみにこのスマホの中には既にミゼットの写真や異世界の風景や魔物の写真、また参考になるだろうと思って撮った本の資料の写真などが数多く保存されている。
決して隠し撮りではない。
ミゼットは何をされているのか分かっていなかったようだが、ちゃんと正々堂々と包み隠さずシャッターを切っている。
まあ何回か写真を撮ると、ミゼットは鋭い直感でスマホが絵を描画する魔道具か何かだと推測して欲しがっていたようだが、あいにくこのスマホは俺から離す事ができないためさすがのミゼットも諦めた。
そんな感じで一尾とか、ついでに思い出として国境をパシャりと撮っていると、急にスマホが震えだした。
どうやらアプリ関連で新たな更新があるらしい。
【ストーリーモード中の特定行動『国境横断』を達成したことにより、アチーブメントを獲得しました。またアチーブメントを取得した事により、新機能『創造神の神殿:レベル1』が解放されます】
「な、なにぃ!?」
「ぬわぁ!? ど、どうしたのじゃ
なんだアチーブメントって、【ストーリーモード】にそんな機能があったのか、知らなかった……。
特定の行動というのがどういった事を指すのか分からないし指標も無いが、とにかくアプリのお眼鏡に適う行動をした事で新機能が解放されたらしい。
【ストーリーモード】のログアウト項目のひとつ上に、創造神の神殿という項目が追加されている。
いったいどんな機能なのか分からないので、さっそくタップして説明を読む。
【創造神の神殿:レベル1】
異空間に存在する創造神の部屋。
現在の広さは6畳間のワンルーム、庭付き。
部屋の中ではリプレイモードがお楽しみいただけます。
いや、その説明じゃ何も分からないから。
相変わらず説明不足のアプリだ。
というか、6畳間のワンルームってそれ神殿というより小屋じゃん。
威厳の欠片もないな創造神……、レベル1だからかな?
リプレイモードというのが何かは分からないが、まあその謎はやってみれば解明するだろう。
それにしてもアチーブメントか……。
もしこれが今後の実績により神殿のレベルが上がっていくと仮定すると、アチーブメントを取得する条件のようなものが気になって来る。
確か俺は魔族を倒したはずだが、あれは実績には含まれないのか?
……もしかしたらだが、実はあの魔族問題は未だ未解決であり、今後あの魔族がなぜスタンピードを起そうとしたのかなど、その背景や足取りを追う事でアチーブメントを獲得する可能性はあるかもしれない。
レベル上げも大事だが、アチーブメントも気になる。
うーん……。
ただアプリが実績として認識するくらいの事だとしたら、放っておいたら色々マズい気がするんだよな。
まずはこの大陸における魔族の動向から調査してみるとしよう。
「よし、方針は決定。それじゃさっそく入ってみるか」
「て、敵は!? 敵はどこじゃ
「あ、ごめん。敵は居ないから落ち着け」
「て、敵はぁあああ!?」
一尾には悪いと思うが、驚いてしまったんだから仕方がない。
いままでも敵となる魔物は幾度となく現れたが、そのほとんどがホーンラビット級の雑魚だった為、今回俺が慌てたのが相当堪えたのだろう。
だが説明しようにも怯えすぎて狐耳を自分からペタンと閉じている一尾には、何を言っても聞こえないようだ。
まあ、すまんとしか言いようがない。
その後は過剰な怯え方をするビビリ妖怪を掴み、問答無用で創造神の神殿を選択する事にした。
まあ、中でじっくり落ち着かせればいいだろう。
そして神殿を選択すると目の前に輝く扉のようなものが出現する。
たぶん、この扉をあけて部屋に入れということなのだろう。
俺はさっそく中に入ってみることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます