約束は守るよ


『【天地創造】』

「【フレイムランス】」


 神の魔法が発動する前に、天に炎の槍を飛ばす。


 炎の槍は、何にも邪魔をされることなく、赤い月にぶつかり、月は壊れた。


 また、森の木も生き物も倒れて、ダメージエフェクトを散らしながら消えていく。


『何故……』


 神は倒れ込みながら、何とか声を絞り出した。


「簡単だよ?だって、森を燃やしたら、月の色が変わったんだから」


 仕掛けは単純だった。


 森と、その森の中の生き物と、月と、神のHPが連動していただけ。


「……神様の話は、本当だよね」


 リーフフィアは消えていく神様を見ながらぽつりと呟いた。


「だって、私に嘘をつく必要はないもの」

『嘘だ、と言ったら?』


 神様が弱々しく、自虐的な笑みを浮かべて尋ねてくるが、リーフフィアの答えは決まっている。


「私は、信じる。それが例え、嘘だったとしても、私はあなたを信じる」


 だから、リーフフィアは笑って尋ねる。


「私に出来ることは?」


 神様も笑って、答えた。


『他の、私の友人を、救ってくれ』

「神に仇討ちはしなくていいの?」

『興味は、ないさ』


 全てが消える前に、神様は胸元から一枚の紙を取り出す。


『ここに、私の仲間が、いる。どうか、救って、くれ』


 リーフフィアは、紙を受け取りインベントリに仕舞い込んだ。


「分かった」


 リーフフィアの言葉を聞いた神様は、涙を零して、最後に一言だけ、言った。


『ありが、とう』


 完全に消えて行った神様は静かで穏やかな笑みを浮かべていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る