単純すぎない?


 リーフフィアはいきなり、森の中でも開けた場所に出たのだ。


 その場所は、断崖絶壁が立ちはだかる場所だった。


 これで戦いやすくなると少し楽しく思ったが、それは疑問に変わる。


「ん?あれ?」


 フォレストタイガーは開けた場所に近づいてこない。


 それどころか、開けた場所にいるリーフフィアから逃げるように森の中に帰っていく。


「どうしてだろう?」


 リーフフィアの後ろにあるのは、断崖絶壁の崖であり、変な生き物の巣などない。


 不思議に思ったリーフフィアは、断崖絶壁を調べることにした。


 ペタペタと断崖絶壁を叩いてみるが、何もない。


「ん〜?何もないんだけど?」


 試しに何か魔法を撃ち込んでみようか、と考えたリーフフィアはにっこりと笑って杖を構えた。


「えっと、それじゃあ、【サンダーランス】【フレイムランス】【ウォーターランス】【アイスランス】」


 適当に魔法を撃ってみると、全ての魔法が通り抜け、断崖絶壁の中に入っていく。


「ん〜……叩いたらダメ、魔法はオッケー、って……ん〜?」


 どうやって断崖絶壁の中に入るのか分からなくて悩む。


「合言葉とかがいるのかな?」


 叩くだけではダメなのだ。何か特別な合言葉的なものが必要なはずなのだ。


「まあ、あり得ないと思うけど……“開けゴマ”」


 リーフフィアがボソリと呟いても何も起こらない。


「ですよね〜。流石に、ベタすぎますよ、ね?」


 セリフを最後まで言い終わる前に、詳しく言えば、“ね”を言う前に、ゴゴゴゴゴッと変な音が響き、断崖絶壁だった場所から洞窟が見える。


『スキル【言霊】を獲得しました』

『称号【言の葉の使い手】を獲得しました』


「えぇ……ウソでしょ……」


 試しに魔法を撃ち込んでみるが、きちんと暗闇の中に入っていく。


「マジか」


 ベタすぎて言葉もうまく出なくなってしまっている。


「……うん、開いたのはラッキーということで、洞窟の中、行ってみよっか」


 何度も自分に暗示をかけるように同じ言葉を繰り返し、1人頷く。


「よし、行ってみよ〜!」


 リーフフィアは元気よく右手を上に掲げて、暗い洞窟に進んでいった。

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