嫌な予感がヒシヒシと……


 洞窟の中に入ったリーフフィアは、暗すぎて前が見えないことに恐怖を抱いた。


「えっと、【ライトボール】」


 ただの光の玉を出して手のひらの上で浮かせる。


 ライトボールが照らす範囲は、あまり広くないのでとても怖い。


 周りがよく見えないので、今エネミーに襲い掛かられたら確実に死ぬ。


「……【フレイムウォール】」


 取り敢えず、灯り確保と敵に対する防御と攻撃のために自身の周りに炎の壁を展開させる。


「これで何とかなるかな?」


 きょろきょろと洞窟の中を見渡してみるが、エネミーが襲いかかってくる雰囲気はない。


「エネミーがいないエリア、とか?」


 自分で言ってみて、それはないだろうと考えを改める。


「どっからどう見てもヤバそうな洞窟だもんなぁ」


 リーフフィア自身は気付いてないが、そもそも、フォレストタイガーが近づこうとしなかった時点でこの洞窟はヤバい場所なのである。


「進んでみよう」


 ライトボールとフレイムウォールを駆使し、光源を絶やさないようにしながら前へと進む。


「……【サンダーショット】」


 バチバチと凶悪そうな音が鳴る、雷の弾丸を辺りに飛ばしてみるが、何一つ反応はない。


「何も、いない」


 リーフフィアは嫌な予感がひしひしと襲いかかってくる気がした。


「うん、気のせい、って信じたいな〜」


 そうして、洞窟の奥へ奥へと進んでいく。


 ある程度、洞窟の奥へと進むと、ぽっかりと穴が空いており、そこから淡い光が溢れている。


「……出口、な訳ないよね」


 リーフフィアは一度立ち止まり、今まで使っていた魔法を消す。


「向こうから、嫌な予感が、ひしひしと、こういう時は、絶対当たる。リーフフィアの辞世の句……何ちゃって。死ぬわけないよね」


 MPの回復を待ちながら辞世の句を詠み始めるが、リーフフィア自身は負けるつもりはさらさらない。


「さて、MPも回復したし、使える魔法の確認も終わった。じゃあ、行ってきます!」


 リーフフィアは笑って淡い光が溢れ出す奥へと駆けて行った。

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