番外編 『 カットしようか迷ったけど、でもこういうエチチな話皆好きだよね? 』


「んっ……はぁはぁ、新年早々から私を抱くなんて、本当に堪え性のない人ですね」

「バイトも数日はないんだろ? ゆっくりできるってことは、こうしてじっくりお前を堪能できるってことだ」


 既に繋がり合っている状態の最中で、二人は言葉を交わす。


「それに、最初にキスしてきたのは美月の方だろ」

「でもその後に深いキスをしてきたのは晴さんです」


 それはリビングでの出来事。


 晴の座っているコタツに入り込んできた美月は、そのまま唐突にキスをしてきたのだ。なので、晴もお返しと愛情増し増しのキスをお返しすれば、そのままお互い雰囲気に呑まれて気付けばベッドに来てしまった。


「エッチするの、気を付けてたんじゃないんですか?」

「気を付けてはいる。が、散々過激なスキンシップをされるせいで理性が保てないんだよ」

「つまり私のせいと?」

「そうだ。お前のせいだ」


 悪戯な笑みを浮かべる美月に、晴はなんだか負けた気がしながらも顎を引いた。


 そんな晴に、美月は勝ち誇ったような笑みを浮かべて、


「貴方はもう、すっかり私の虜ですね」


 そうだな、と口を尖らせながら肯定すれば、美月がふふ、と笑った。


「どうですか、私に懐柔された気分は」

「悪くないな」

「八歳も年下の女にですよ?」

「それだけお前に包容力があるってことだ」

「むぅ。少しは悔しがってください」


 頬を膨らませる美月。

 しかし晴は全く表情を変えず、その桜色の唇を奪う。


「――んぅっ」


 柔らかな感触。甘い吐息と艶やかな嬌声が頬に感じながら、二人は舌と舌を押し付け合う。


 たっぷりと濃密なキスを後に出来上がるのは、十七歳とは思えない程に蕩け切った女性の顔で。


「その顔、鏡で見せたいくらいだ」

「はぁ、はぁ……晴さんのえっち。意地悪」

「俺は罵られて興奮するような性格ではないぞ」


 しかし、頬を上気させて瞳を潤ませる表情には煽情的なものがあった。


「お前のそんな表情を見られるのも俺だけかと思うと、余計に興奮してくるな」

「当たり前です。私は貴方の妻なんですよ」

「そうだな。妻の体を堪能できるのは夫の特権だな」

「体も心も、全部貴方のものですよ」

「そんな嬉しいこと言うと、また遠慮できなくなるぞ?」


 意図的なのか、或いは無意識か。晴の焦燥感を煽ってくる美月。


 奥歯を噛み締める晴に、美月はたおやかに微笑むと、


「遠慮しなくていいですよ。たくさん私で感じて、気持ちよくなってください」

「――っ」

「我慢しないで。貴方の感じてる顔、もっと私に見させてください」


 そう言って、美月は体を浮かすと晴の唇を奪った。

 さっきは晴が、しかし今度は美月が情熱的なキスを返してきた。


「「――んんぅ」」


 熱い吐息を注ぎ合いながら、晴は胸中で呟く。


 ――本当にこの妻は。


 恥ずかしりながらも大胆に攻めてきて、晴の男心を煽って来る。散々煽って受け止めるから、歯止めが効かなくなってしまう。


 ぷはっ、と吐息がこぼれる。


「……スイッチ、入りましたか?」

「入りまくった。だから遠慮しないからな」

「ふふ。思う存分。私を味わってくださいね」

「ならお望み通り、味わい尽くしてやる。覚悟しろよ?」

「既にできてますよ」


 最後の忠告をすれば、しかし小悪魔は妖艶に微笑んで晴の欲望を受け入れる。


「……明日、初詣に行く体力あるかな」

「あはは。じゃあ、その体力だけは取っておきましょうか。後はもう、全部使うくらいの勢いでしましょう」

「俺よりお前の方がスケベじゃねえか」

「でもそういう私が?」


 挑発的に問いかけてくる美月に、晴は「はぁぁ」と大仰なため息を吐きながら、


「――大好きだよ」


 妻に愛を囁いた直後、ベッドが強く軋み出した――。




 ―――――――

【あとがき】

そんなにエッチくないか……

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