第308話 『 慎くんが枯れるまで、しようよ 』
慎と詩織の恋人の営みは、大抵詩織が上になる。
それは、聖夜の日であっても変わらなかった。
「んんっ……ここ、気持ちいい」
「詩織ちゃんっ、あんま、激しくしないで……ッ」
本来ならばそういう行為は男である慎がリードするはずなのに、詩織の欲求がそれを超えてしまうのだ。
「ごめんね慎くん。でも、我慢できないの」
恍惚とした表情で謝りながらも、詩織は更なる刺激を欲して体を動かす。
「今日は、お酒も入ってるからっ、余計に感じちゃう。あっ、んんっ!」
部屋に響く嬌声。ビクッと体を震わせてなお、詩織は止まることはない。
「俺っ、そろそろ、限界……かもっ」
「はぁ、はぁ。ダメだよ。慎くん。もっと一緒に、気持ちよくなろ?」
「くっ……ホント、性欲強いね」
「慎くんの感じてる顔見てたら、体が勝手に興奮しちゃうの。……それに、指輪まで填められちゃったんだもん」
「それだけでっ、興奮するの?」
「しちゃう。しちゃうの。私単純だから。指輪を填められた時からずっと胸が温かくて、慎くんとしたかった」
いつにも増して積極的な詩織は、慎の生気を情欲のままに搾取していく。
「んんぅ。キス、大好きぃ」
顔面を両手でガッチリホールドされて、貪るようにキスさせる。
体から湯気すら立ち込めてしまうほどの情熱的な性交を、二人は繰り広げる。
「出しちゃったらもう終わりでしょ?」
「なら、今日は、頑張るから……だから、一回楽にさせてっ」
「あはっ。やっぱり慎くんの快楽に耐えるその顔。私大好きだよ」
「んぐっ⁉」
軋むベッドが、さらに強く軋む。
体も頭も蕩けて、自分が誰なのかも分からなくなってしまうような快楽が襲ってくる。
ぞくりと、背筋に寒気すら覚えた瞬間。
「――くっ!」
「~~~~っ⁉」
お互い、ひと際大きく体を震わせる。
数秒。荒い吐息を繰り返すと、詩織が小悪魔めいた笑みを浮かべながら言った。
「気持ち良かったね」
「はぁ、はぁ……気持ちよすぎて、頭おかしくなるところだったよ」
ギュッと抱きしめてくる詩織に、慎は重い吐息をこぼしながら返した。
一歩間違えば、本当に狂いかねない快楽。
それも終わりだと安堵しかけて――否、慎に安寧は訪れない。
「ふふ。慎くん。私はまだ、満足してないよ」
「ちょ、ちょっと休憩」
「だめ。すぐに続きしようよ」
甘い吐息が、慎を魅惑の森へ誘おうとする。
必死に拒もうとするけれど、しかし詩織は抱きしめて逃がそうとしない。
「ふふっ。慎くんの息子さん。また大きくなりましたなぁ」
「こ、これは詩織ちゃんと抱き合ってるからで」
「理由なんてどうでもいいでしょ」
詩織が滑らかな手で避妊具を外して、それから耳元で囁いてくる。
「こーんなに硬くなってる」
「――ッ。詩織、ちゃん」
「慎くんは素直じゃないけど、こっちは従順だね」
ぺろっ、と詩織が耳を舐めてくれば、思わず変な声がもれてしまう。
「今日の私。いつもより興奮してる。やっぱり、
「――――」
「それとも、慎くんの可愛い顔をたくさん見られてるからかな」
「――――」
慎は答えない。
けれど、そんなのお構いなしに、詩織は艶然と嗤うと、
「理由はきっと全部なんだ。全部が、私を興奮させる。体の奥が火照って、自分じゃ制御が効かなくなる」
ねぇ、と慎の意識を向けさせれば、詩織は可愛らしい声で言った。
「この疼く欲求を、慎くんが満たして?」
「――っ」
「私に、もっと愛情をちょうだい」
熱い吐息が鼻先に触れて、そしてそのまま慎の唇を奪ってくる。
返答は必要ないのだと、そう言うように、舌を絡ませて言葉を紡がせない。
「しお、りちゃん」
「もう一回……ううん。今日は慎くんが枯れるまでしよう? 頭がおかしくなるくらい、二人で満たし合おうよ」
答えはもう、下半身が証明している。
一度目よりもさらに逞しくそそり立つそれを視線で捉えた詩織は、ぺろりと舌を舐めずさると、
「あぁ、もう最高だよ慎くん。それでこそ、私のカレシだね」
「お、お手柔らかにお願いします」
「それは無理な相談かな。さっきも言ったでしょう、慎くんが枯れるまで、今日はたくさんするって」
「あと一回くらいしか出せないです」
「それは慎くんが決めることじゃなくて……」
熱い視線を、詩織は慎の下半身に注いでくる。
「こっちが決めることだと思うよ」
「い、いや。ホントに……」
「じゃあ、またいただきますっ」
「勘弁してぇぇ⁉」
こうして慎と詩織のクリスマスは、カレシがカノジョに生気をこってり絞られながら過ぎていくのだった。
「んっふぅ。あぁ、やっぱり慎くんと私、体の相性最高だよ。私をこんな淫乱な女にしたツケ、払ってもらうから――んんっ‼」
「死ぬ。俺今日、間違いなく死ぬ……ぐあっ⁉」
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