番外編◎ 『 修也の気になる人 』
その人の名前は
そんな彼女と関わりを持ったのは、修学旅行から。
その時に連絡先を交換して以来、修也は可憐と時々メールでやり取りするようになった。
最近では幸運なことに、席替えで可憐と隣同士にまでなった。
「……やっぱり僕。朝霞さんのこと、好きなんだろうな」
無二の親友である冬真と同じく、修也も中学までまともに交友関係を築けなかった。女子となんて猶更で、名前すらうろ覚えだった。
そんな自分が、今ではクラスでカースト上位の女子とメールをやり取りするような仲になっているのだ。
勿論、それは単純に可憐が優しいだけで、修也にほんのわずかな興味を抱いているだけだということは、重々理解している。
それでも、やっぱり嬉しいものは嬉しいのだ。
「どうやったら、朝霞さんにもっと近づけるのかな」
彼女は謎が多い、というよりは不思議な性格だった。
基本全ての物事にやる気がないが、勉強や何か知識を得る瞬間の時だけはおっとりとした目に生気が灯っているように思えた。
どうやら彼女は、勉強が好きならしい。
「成績が上がれば、少しは僕のことを認めてくれるかな」
修也の今の成績は中の中で、成績上位者である可憐には足元にも及ばない。
「朝霞さんは運動嫌いらしい、運動ができる男子が好きでもないみたいだし」
前のメールで、一世一代の勇気を振り絞って『朝霞さんはどんな人がタイプですか?』というメールを送った。あの時は、直接聞いた訳でもないのに心臓が破裂しそうだったことは今でもよく覚えている。
そして、その時の可憐からの返信は、『私に尽くしてくれる従順な僕』だった。なんとも趣向の変わった好みだと、メールを見返すたびに苦笑してしまう。
でも、それなら、
「僕ってことは、つまりペットみたいな人ってことだよなぁ」
少しだけ、自信はあった。
ペットまでは行かなくとも、恋人を想いやり、尽くすことが大事だということは【微熱に浮かされるキミと】の傑や他のラブコメ作品を見ているから理解しているつもりだ。
「僕は、朝霞さんと恋人になりたいのかな」
可憐と付き合った自分を想像すれば、なんとなく違う気がしてうなる。
「朝霞さんは、きっと憧れなんだろうな」
それを高嶺の花というのは、知っている。
羨望に少しでも近づきたいというのは、誰しも持っている感情だ。
きっと、自分のこの感情はそれなんだと、そう問えば、胸がざわつく。
「朝霞さんにはもっと、相応しい人がいるって分かってる」
天井に掲げた手が、まるで己の言葉を否定するように強く握られた。
「でも僕は、朝霞さんにもっと近づきたい」
彼女と画面越しに会話をしている時が、修也にとっては一番大切で、好きな時間だった。
その時間を失いたくないと思ったし、もっと現実でも彼女と話してみたいとも思うから。
「明日。頑張って声を掛けてみよう」
今はまだ、メールをやり取りする程度の仲だけれど。
けれどいつか、彼女の隣に立ちたいと思うから、修也は勇気を出して一歩踏み出すのだった。
これは、とある少年の友達と、とある少女の友達の恋の話。
彼らが周囲に支えられて恋を進めていくのとは対照的に、自分たちで恋を芽吹かせていく、陰キャボッチと少し不思議な少女のお話だ。
――――――――
【あとがき】
ちょっと修也の可憐の話が書くの楽しすぎて続きがどんどん上がっていくかもしれないです。
なので今後、可憐と修也のお話には【番外編◎】が付きます。そして【出会い系アプリ】の派生として短編だけどサイドストーリーとして展開していくかもしれません。てかすると思う。
それくらい面白い話だし、作者の仲で可憐という少女を書いてて株が爆上がりしてるんですよね。
だって二人がどんな風に付き合うのか気になるでしょ? どんな風に愛し合っていくのは楽しみでしょ?
なら書くしかないっしょ!
そんな訳で修也と可憐の話は番外編として今後上がっていきます。そして、詩織ちゃんはちゃんとメインで出番があります! 安心してね詩織ちゃん。
……なんか今2作同時掲載してるけど、さらにもう一作増やしたら確実に作者死ぬなぁ。
応援よろしくお願いします! 完結もしてないのに過労死できるか!!
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