第273話 『 キスは愛情の印 』


「んんっ! 今日の晴さんっ、いつもに増して、興奮してませんかっ?」

「当たり前、だろ。何週間我慢したと思ってるんだ」


 既に何度か欲望を解放したものの、それでも今夜は収まる気配がない。


 美月に無理させている、とは思っているものの、身体は美月を求めて止まらない。


「激しっ……晴さっ、激しいですっ」

「分かってる。けど、悪い。抑えられない」


 必死に息を吸おうともがいている美月を見るほど、感情が昂ってしまう。

 ぽたっ、と額から滴る汗が頬に伝って、美月の胸に落ちる。


「なんか、今日はいつもよりお前が可愛くみえる」

「――っ! 調子良すぎます……はぁはぁっ……そんなこと言われたら、もっと愛して欲しくなっちゃう」

「いくらでも愛してやる。だから、もっと感じて、可愛いお前をみせてくれ」

「んんぅ。はっ、はっ……今の私は、可愛い、ですか?」

「世界で一番可愛いぞ」


 そう褒めれば、美月はへへ、とはにかんだ。


「なら、世界一可愛い妻に……はぁ、はぁ……旦那さんから、ご褒美をください」

「何してほしい?」

「愛情を込めた、キスを」

「はっ。本当にキスするの好きだな」


 苦笑しながらも、晴は美月の要望通りにキスをする。ただのキスではなく、愛情を注いだ深くて蕩けそうなキスを。


「晴さんとキスするの、好きです。愛してもらえてるって、分かるから」

「今は、キスだけじゃないだろ」


 そう言えば、美月は嬉しそうにはにかむ。


 文字通り、美月と晴は一つに繋がっている。ベッドが軋む度に美月は嬌声を響かせて、晴は快楽に脳が麻痺していく。


「晴さんは今……気持ちい、いですか?」

「あぁ。すごく満たされてる気分だ」


 ぽたっと落ちる汗が、それを如実に物語らせる。

 そして肯定する晴に、美月は心底嬉しそうに口許を緩ませると、


「なら、もっと私で気持ちよくなってください。我慢させてしまった分、満足するまで私を抱いていいので、だからいっぱい、気持ちよくなって」

「……っ。なら、言葉通り、満足するまで付き合ってもらうからな」


 ギシッ、とベッドの軋む音がより大きくなれば、美月は必死に息を継ぎながらこくこくと頷いた。


「はいっ! 私も、私も晴さんとずっとしたかったから、だから遠慮なんてしなで。もっと、もっとして!」


 欲求に素直になった美月は、そうやって懇願してくる。


 背中に両手を回して、美月は晴の視線を下げる。顔が近づけば、無言で見つめあってお互いの唇を貪りあう。


 上も下も繋がって、心も繋がったような感覚。


 それが夫婦にもたらすのは、言葉にできないほどの多幸感だった。


「ねっ、晴さん」

「はぁはぁ。……なんだ?」

「愛してます」


 ふふ、と微笑みながら愛を囁いた美月に、晴は微笑を浮かべると、


「――あぁ。俺も同じだ。美月」


 数週間ぶりの夫婦の営みは、これまで以上に盛り上がりをみせたまま、日付が変わってなお続くのだった。


 ――――――――

【あとがき】

作者「やっぱエチチ回を書いてる時が一ッ番楽しいですね」

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