第226話 『 神様とご邂逅/驚くのは当然です 』

【まえがき】

 最近、更新頻度が多いのはひとえに「あ、これこのまま1話更新してたら文化祭編終わるの11月半ばになるな」と思ったからです。一応、文化祭編は11月初旬に終わる予定です。なので更新量も多いかも? 

――――――――――――――――


「四季さん⁉」


 冬真とミケを、千鶴が呆然と見つめていた。


「金城、その人誰?」

「ええと、この方は……」


 挨拶も忘れて問い詰める千鶴。それにどう説明するかと狼狽する冬真だが、次の瞬間目を見開く。


 それは、冬真の隣に立っていたミケが一歩、前に出たからだ。


「初めまして、えーと、千鶴ちゃんでしたっけ?」

「な、なんで私の名前知ってるんですか⁉」


 既にミケに名前を知られていたことに驚愕する千鶴。


「にゃはは。実は私、美月ちゃんからアナタのこと聞いてるんすよ」

「えっ、みっちゃんの知り合いなんですか⁉」

「はいっす。美月ちゃんとは友達っす」


 美月の名前を挙げられたからか、千鶴の警戒心がわずかに和らぐ。

 ならば俄然、千鶴としてはミケのことが気になって。

 好奇の視線を向ける千鶴に、ミケは丁寧に挨拶をした。


「改めて。初めまして、千鶴ちゃん……でいいっすかね?」


 ぎこちなく頷く千鶴に相槌を打って、ミケは続けた。


「私は冬真くんをアシスタントとして雇っている――黒猫のミケと言います」

「黒猫の、ミケ……」


 ミケが丁重に挨拶を済ませると、千鶴はミケのペンネームを復唱した。


「待って。その名前、どこかで聞いたことがある気がするんだけど」


 ぶつぶつと何かを呟く千鶴。その顔は必死に何かを思い出さそうとしているように見えて。


「ええと、四季さん」

「なに金城。今私集中してるから話しかけないで欲しいんだけど……」


 額に手を置いて思案している千鶴に、冬真は気まずそうに告げた。


「四季さんが聞き覚えあるのも当然だと思うよ。だってこの方、【微熱に浮かされるキミと】のイラストレーターさんだから」

「――は⁉」


 冬真の言葉に千鶴は一瞬呆ける。


 そんな馬鹿な、とでも言いたげな顔をする千鶴に、冬真は複雑な表情浮かべながらこくこくと相槌を打つ。


 それからさらに数十秒経過して、千鶴はようやく冬真の言葉を飲み込み始めると、プルプルと顔を震わせながらミケを見た。


「え、え、えっ⁉ この人が黒猫のミケさん?」

「はいっす。冬真くんの言う通り、【微熱に浮かされるキミと】のイラストを担当してるっす」


 そうミケ自身が答えれば、千鶴は徐々にこの状況を理解し始めていく。


 冬真の隣にいる女性が、自分の好きな作品の絵を描いている人で、しかも超有名なイラストレータだという、衝撃的な事実を。


「(あはは。千鶴さん。困惑してるなぁ)」


 冬真も千鶴と同じ境遇に遭ったことがあるから、今の彼女の気持ちはよく分かる。


 たぶん、その感情は胸の内には留まらないはずで、


「えぇぇぇぇぇぇ――――――――――――ッ⁉」


 やっぱり叫ばずにはいられないよね、と冬真は千鶴に同情したのだった。


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