第222話 『 金城のこと好きになっちゃってるんだけどおぉぉぉぉぉぉぉぉ 』
金曜日。
「お、おはよ~」
「「おはよう千鶴」」
朝。ぎこちなく挨拶をすれば、美月と可憐は特に気にした様子もなくひらひらと手を振り返した。
それからもう一人も。
「おはよう、四季さん」
「は、はよ」
「?」
すっかりイメチェンを果たした冬真に爽やかな挨拶を送られれば、千鶴は思わず視線を逸らしてしまった。どうにか必死で挨拶は返すも、自分でも違和感を覚える出来だった。
「どうしたの四季さん? なんか顔赤く見えるけど……」
「なんでもないっ」
眼鏡を外したからなのか、はたまた相手をよく見ているからなのか、冬真の指摘に千鶴は声を荒げた。
外見は変わっても中身は変わらないようで、冬真は「ひい⁉」と怯えた露骨に落ち込んだ。
「あらら~。どうしたのかね千鶴さ~ん。そんな朝から反抗期の娘みたいな態度取っちゃって」
「べつに……これが普通だし」
「お母さんはそんな風に育てた覚えありません⁉」
「ちょっと可憐、私が言ってるみたいにアテレコしないでくれる⁉」
可憐が茶化してくれたおかげか、千鶴もようやく緊張の糸が解けたような気がした。
ぷっ、と堪らず笑みが噴き出て、そのままお腹を抱えてゲラゲラと笑う。
千鶴の胸裏を読んだ訳ではないのだろうが、可憐に『ありがとう』と内心で感謝を伝えて置いた。
それから千鶴は息を整えると、自分の席に座る。隣の席には、先の一件でまだ落ち込んでいた冬真が座っていた。
「さっきはごめん」
「ううん。でしゃばった僕が悪いから気にしないで……ください」
「敬語はやだ」
拗ねた子どもみたく言えば、冬真は姿勢を正して「すんません⁉」と謝った。
「いつも通りでいいよ」
「う、うん」
素っ気なく言えば、冬真はぎこちなく頷く。
それから、二人の間に微妙な空気が流れ始めた。
「(ううっ! やっぱこれって恋なのかなぁ⁉)」
昨晩。冬真を好きになった疑惑が生じてから、千鶴はずっと悶々としていた。中々寝付けず、おかげで起きたのは目覚しの十五分後だった。
「(少しだけ走って来たから、髪乱れちゃってるかも)」
気になって髪の毛に触れた瞬間、ハッと我に返る。
「(いや私って今まで髪の毛が乱れてるかとか気にしてことあった⁉)」
自覚していけばいくほど、今の自分に違和感を覚えていく。
〝恋〟というものを自覚してから、何かが変だ。
「(私、本当に金城のこと……)」
好きなのかな、と思った瞬間。
冬真とバチッと目が合った。
「――っ⁉」
「?」
その刹那、千鶴は慌てて視線を逸らす。
「……なに、これ」
心臓が、バクバクと五月蠅い。
顔が熱くなる。
目が合わせられない。
これでは本当に――、
「(金城のこと好きになっちゃってるんだけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ⁉)」
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