番外編 『 週末のお楽しみ/妻はえちえちです 』

 ――最近変わったなぁ、と思うことがある。


「……くっ。はぁはぁ……晴さん」


 互いの熱に触れ合う愛しさに身を焦がされながら、美月は耽る。


 変わったこと一つ目。それはやはり晴の美月に対する態度だろう。前よりさらに美月を甘やかすようになった。まぁ、本人はお願いされたことに応えているだけと言っているが。


 変わったこと二つ目。夫婦の営みの時、晴がより積極的になった気がする。まるで我慢していたものが爆発したように食らいつかれて、たっぷり愛情を注がれる。


 そして何よりも変わったと思うのは、その注がれた愛情をもっと欲しいと求めている自分だった。


「そこっ……気持ちいいですっ」


 頭が真っ白になる感覚に陥りながらも、胸を熱くする快感に歯止めが効かなくなる。


 ぎゅっ、と力強く抱きしめられるのが堪らない。


 自分を貪ろうとする吐息が堪らない。


 ぽたっ、と滴り落ちる汗が堪らない。


 何よりも――目の前で気持ちよさそうにしている夫の顔が最高に堪らない。


 表情の変化に乏しい顔も、ずっと見てきたからか今どんなことを考えているのか分かってきた。


「(必死な顔して堪えてる……そろそろ我慢も限界かな)」


 悶える顔と荒くなった息に彼の限界を悟り、美月は声をかける。


「いつでも……いいですからねっ」


 美月の言葉を聞き届けたその数十秒後。荒くなった息が落ち着き始めた。


「はぁはぁ……ふぅ。満足、しました?」

「気持ち良かった」

「ふふ。なら良かった」


美月の問いかけにこくりと頷いた晴。どうやら達成感に浸っている最中のようだ。


一週間。溜まりに溜まったものを吐き出すのは余程の快感なのだろう。満足そうな顔をしている晴を見て美月は思わず笑みがこぼれてしまった。


でも。


 一週間。我慢していたのは晴だけじゃない。


美月だって、早く晴と愛し合いたかったのだ。


晴はもう最初の時ほど高揚はしていないようだが、美月は違う。


「ね、晴さん。もう一回……したいです」


 少し恥じらいをみせながら呟けば、晴はジーっと見つめてくる。


「……前からずっと思ってるけど、実はお前のほうが求める回数多いよな?」

「そ、そんなことありませんひょ?」

「嘘ついてる、って顔に書いてあるぞ?」

「どこにも書いてません!」


 顔を真っ赤にしながらぽこぽこと胸を叩けば――両手を掴まれる。


 ――ぁ、と声がこぼれた。


「別にお前がエッチだろうとサキュバスだろうとなんでもいい。俺も、一回で終わらせる気はないからな」

「……えっち」

「男は大抵エロいことが好きだ」

「肯定しないでくださいっ」

「肯定する。だって俺は、もっとお前と繋がってたいからな」

「――っ」


 その言葉はズルい。

 おかげで、また好きになって。感情が昂ってしまうではないか。

 そして、それはもう顔に出ていて。


「晴さん。キスして?」


 また、荒くなっていく吐息でそう懇願すれば、晴は「あぁ」と相槌を打つ。


「好きなだけしてやる」

「はい。してください――んんっ」


 間もなく重ねられた唇。押し付けられるような乱暴なキスなのに、それが酷く愛しい。


 お互いの吐息を送り合って、その熱が隙間からこぼれる。 


 もっと。


 もっとして?


 そんな想いを乗せながらキスを交わして、美月は耽る。


 ――あぁ。いつの間に、自分はこんな淫らな女になってしまったのだろう。


 その責任を取ってもらうべく、今夜も美月は晴に愛情を注いでもらうのだった。

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