第152話 『 美月の誕生日は9月20日ですよ 』
それは遡ること一週間と二日前。
「うーん」
エクレアがいるのでいつも通りリビングで執筆――ではなく、ネット記事と睨めっこをしていた。
「アイツの誕生日プレゼント、どうするか」
『にゃぁ』
困った風な吐息の理由は、美月へ送る誕生日プレゼントの内容だった。
彼女の誕生日は【9月20日】で、カレンダーを確認すればただの平日だった。
こういうのは大体休日だろ、と誰に向けたのか分からない文句を吐くと、晴は頬杖を突いた。
「女性に誕生日プレゼントなんて、今まで一度も贈ったことないんだけどな」
一応、中学生までは姉にプレゼントを送っていた記憶はある。流石に何を贈っていたかはもう覚えていないが。
端的にいえば、晴にとって初めて異性(家族以外の)に贈る誕生日プレゼントになる。
「無難に花を送るべきか。それともネックレスとか装飾系にするべきか」
【誕生日・女性】とワードを絞って検索すれば、【女性に贈る人気なものランキングトップ10】というサイトを見つけたのでとりあえずクリックしてみる。
そこから候補を探るも、どれもイマイチといった感触だった。
「装飾系と言っても、俺もう結婚指輪渡してるしな」
女性が送られて喜ぶ贈り物第一位を既に渡している気がするので、今更ネックレスや指輪を渡してもどうなのかと思う。
美月は学校に居る時は結婚指輪をネックレス型にして身に着けているから、さらに選択肢としては決定打に欠けた。
「……香水か」
オシャレアイテムとしてはかなり有力な候補だと思う。
最近ではよく一緒にお出掛けをするので、こういう外で活躍するアイテムはアリなのではないだろうか。それに自分が選んだ香水を使ってくれている、というのは中々に優悦感がある気がする。
「でもそれだとコイツは俺のものだと言ってる気がして嫌だな」
なんだか束縛の激しい男みたいで、自分に嫌気が差した。
実際美月は妻だから晴のものなのだが、晴としてしてはこのお互いを想いやっている距離感が好きだった。……晴が美月を想いやれているかは妻のみぞ知るが。
「エクレアはどれがいいと思う?」
『にゃにゃっ』
我が家のお嬢様(猫)に意見を求めれば、彼女は不機嫌そうに喉を鳴らした。他の女なんか知らないわ、と言った気がして、晴はなんとなく彼女に頭を下げる。
ちっとも仲良くなる気がしないエクレアと美月の関係に辟易しつつ、晴はプレゼント選びを再開する。
「誕生日まで、一応まだ時間はあるが、なるべく早く準備しないとだな」
来る美月の誕生日。
妻と送る最初の誕生日は、旦那なりに良い思い出を作ってあげたかった――。
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