番外編 『 貴方のおっぱい星人 』

前書き

3話更新かと思いきやもう1話更新されたのは、単純に作者が書きたい欲求を抑えられず書いてしまったからです。16日ラストのお話はお嫁さんとの夫婦の営み回です。『俺こんな嫁をくれ』と思う回になってます。

――――――――――――――――――



 むにむに、と晴の手に離れがたい感触を与えるのは柔らかい双丘だった。


「お前の胸は本当に触り心地……というか揉み心地がいいな。いつまでもこうしてられる」

「んっ……その言い方だと、まるで他の人の胸を揉んだことがあるみたいな言い方ですよ」

「んな訳あるか。こうして胸を揉むのも、セックスするのもお前が初めてだ」


 もみもみと揉みながら言えば、美月は嬌声をもらしたまま不服げな顔をする。


「あまり胸ばかり揉まないでください」

「もっと他の場所を触って欲しいと?」

「恥ずかしいからです!」


 感じつつも抗議する美月に、晴は構わず胸の感触を堪能する。美月も恥ずかしいと言いながら感じているので、気持ち良いなら問題ないだろうと続行した。


「てかまた一段と大きくなったなお前の胸」

「……そうでしょうか」

「視線逸らすな」


 ぎこちない反応をみせたので事実なのだろう。


「女性は異性に胸を揉まれると大きくなるという話は本当だったのか」

「私で証明しないでくれます⁉」

「でも大きくなったのは事実だ」

「うっ……晴さんから揉まれたくらいで、そんなすぐ大きくはなりませんよ」

「それじゃあお前の発育が良いってことだな」

「晴さんのおっぱい星人」

「男は皆胸が好きだ」

「素直に肯定しないでください」


 むぅ、と頬を膨らませる美月。そんな美月に晴はぐいっと顔を近づけると、


「お前だって、俺に揉まれて満更でもない顔してるだろ。お互い様だ」

「――っ!」


 挑発的に囁けば、たちまち美月は顔を真っ赤にして、


「知りません! バカ! 大バカ! 執筆バカ!」


 涙目になってしまった。

 揶揄い過ぎたかな、と反省しつつ晴は「悪かったよ」と謝り、


「――んっ」

「――んっ。んぅぅ……ぷはっ」


 拗ねた美月の機嫌を取り戻す為に長いキスを捧げれば、その愛らしい顔が蕩ける。


「キスしたら、私の機嫌が直ると勘違いしてませんか?」

「してる。でも、お前が望むならなんでもしてやるぞ」

「言いましたね?」

「この時間だけな」


 言質取った、という顔になる晴は美月が調子にならないように釘をさしておく。

 それでも、美月は晴の言葉を鵜呑みに早速指示を出してきた。


「じゃあ胸を揉むのをやめて手を繋いでください」

「ん」

「あ普通に握るのはダメですよ。ちゃんと恋人繋ぎで」

「はいはい」


 美月の指示通りに胸から手を離せば、晴は小さな手と自分の手を絡めた。


「ふふ。晴さんの手、大きい」

「いつも握ってるだろ」

「その度にそう思いますよ。大きな手だなって。あと綺麗です」

「ケアとか何もしてないけどな」

「羨ましい。でも、指のマッサージはしてますよね」


 にぎにぎと、晴の手の感触を堪能する美月。

 執筆する為に指はマッサージして柔らかくしているが、それは意外なところにも発揮されていた。


「お前をほぐすにも役に立ってるからな、この指は」

「いまそんなこと聞いてませんよね⁉」

「物欲しそうな顔してただろ」

「してませんよ! それじゃあまるで、私がエッチな女の子みたいじゃないですか⁉」

「実際そうだろ」


 清楚な見た目に反して、美月は晴との手を繋ぐことやキス、そしてそれ以上のスキンシップが好きな子だった。

 そんな事実を認めたくない美月はというと、全力で否定してきて、


「絶対違いますっ。た、たしかに晴さんとキスするのとか手を繋ぐのとか、こうしてエッチするのは好きですけど……でも! 断じてエロくはありません」

「ふーん。否定するのか」

「な、なんですかその疑いの眼差しは」

「べつに。ただ、本人が素直に認めないなら教えてやろうと思って」


 ふっ、と意地悪な笑みを浮かべれば、美月の顔から余裕がなくなっていく。


「は、晴さん。いったい何をする気ですか」

「どーもしないぞ。ただ今日は少しだけ、いつもより多めに愛情を注いでやろうと思ってるだけ」

「それ絶対に骨抜きになるじゃないですかっ」

「いつもされてんだろ」

「うっ……それは晴さんがエッチだからで……」

「男は皆エロいしそういうのが好きだ」


 全世界の男を巻き込んで肯定すれば、美月が嘆息した。


「はぁ。本当に貴方という人は……」

「呆れたか?」

「はい」

「頷かれると複雑な気分だな」


 思わず苦笑がこぼれれば、そんな晴を見て美月が苦笑をこぼした。


「本当に、どうして貴方みたいな人を好きになってしまったんでしょうか」

「知るか。それは俺を好きなった自分自身に聞いてくれ」

「私自身も呆れてますよ」


 たしかに晴も自分は真っ当な大人ではないと自覚しているが、そこまで否定されると少しだけ悲しくなった。

 しょんぼりとする晴の耳に、くすっと笑い声が聞こえた。

 そして、ゆったりと伸びた腕が晴の顔を覆うと、


「でも、そんな貴方が好き」

「変わり者め」


 好き、と囁かれれてつい笑みが零れる。そして、美月も。


「そうですね。変わり者です、私も」

「その言い方だと俺も変わり者なんだが」

「貴方は十分変わり者ですよ」

「まぁ、小説家は変わりものが多いからね。偏見だけど」


 自分の妄想を他人に曝け出してしまうのだから、小説家は皆変わり者で間違いないだろう。

 そんな夫の暴論に、妻はふふ、と可笑しそうに笑みをこぼすと、


「ね、そんな変わり者同士なら、この先も一緒に生きて行けますよね」

「どうだろうな。お前が俺に呆れたら一緒には生きていけないかもしれない」

「それなら大丈夫。もう呆れてます」

「そっか」


 呆れてる、と言われているのに、晴は笑った。

 だってそれは、晴のことを理解した上で一緒に生きてくれるという、何よりの証明だから。


「美月」

「なんですか」

「これからもよろしくな」

「ふふ。こちらこそ、よろしくお願いします」


 見つめ合い、顔をゆっくりと近づけて、深い愛情を交わし合う。

 互いの熱と、互いの匂い。そして互いの想いを伝え合って――二人は今夜も愛を確かめたのだった――。


 ―― Fin ――

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