第6話
指の方向を見てみると、そこには和田、剛田、巻島さんたちが居た。
「おいおいおいおい? なんで俺らが犯人なんだよ? さっきのにも該当してねえだろ?」
「ええ、そうですね。しかしさっきのテスト。あれ実はただの質問だったんです。別にあの中のどれかに該当したらとかはありません。」
「なんだよ、じゃあさっきまでのは全部無意味ってことか?」
「いいえ、そんなことはありません。あれで知りたかったのは、皆さんの昼休みの行動です。」
「行動…?」
「ええ、普通に生活してればあの中のどれかに該当するはずなんです。 しかしその中で該当してない人が4名…。高橋君は分かったので。 なら自動的にあなた方。ということになるんじゃないでしょうか?」
「なるんじゃないでしょうかって…、そんな証拠もないのに俺達を犯人扱いしたのか!? ふざけんじゃねえぞてめえ…!?」
和田君が利根川君の胸倉を掴んだ。しかし臆せず利根川君は続ける。
「なら、どこに居ましたか?」「え?」
「昼休みですよ。どこで何をしていましたか?」
「そ、そりゃ…トイレだよ! ずっと腹下してたんだ。」
「成程トイレ…。それもありかもしれません。しかしそれなら変な事がありますよね?」
「なんだよ?」
「どこのトイレですか?」
「どこって、そりゃ3階のだよ。この階にはねえからな。」
「3階ですか。しかしそこは今日点検中で使えなかったはずですが…。」
「なっ…!」
「冗談ですよ。しかし、何故私のこんな下らない嘘に惑わされるんですかね…? 本当に居たならこんなのすぐ気が付く筈ですが…。」
鮮やかな騙しのテクニックに俺は痺れていた。きっと彼はこの先生きていく事には困らないだろう。そんな事を俺は考えていた。
目の前で嘘を一瞬で暴かれてしまった仲間の姿を見て観念したのか、残り二人の頭は項垂れていた。
結局犯人はあの三人組だった。
事件のあらましはこうだった。まず巻島さんが木に持ってきてはいけないネックレスをひっかけてしまい、取ろうとしたが取れなかった。
そこに剛田君と和田君が来た。引っかかったものを取ろうと石を投げたところ、物は取れたが勢い余りガラスに石がぶつかってしまった。
焦ったが、この前読んだ推理小説に出てきた手順を使って誤魔化そうと言い出したのは和田君だったそうだ。 なんでも巻島さんにいい所を見せたかったらしい。
推理小説に出てきたtrickなら暴かれるまでがワンセットだろうに…。
遅れてやってきた担任に怒られている彼らを見てそんな事を思っていると、飯田君と染岡さんがやって来た。
「「疑ってごめんなさい。」」だそうだ。 まああんな状況だと疑いたくなる気持ちもわかるので特に怒っては無いので、許すことにした。
俺は利根川君の元に走っていった。冤罪を暴いてもらったお礼を言う為だった。
「さっきはありがとう。お陰で助かったよ。」
俺が感謝の意を伝えると、一瞬ビックリしたような表情を見せたが、すぐにいつもと同じ表情に戻り「良いんですよ、お礼なんて。」と言った。
「僕は只謎を解きたいだけなんです。まあ今回は全然謎解けませんでしたけど?」
僕らは笑いあった。
「しかしそれでも頭の回転とか凄いよ…。 とても同い年には見えない…。一体何者なんだい?」
そう俺が聞くと、待ってましたと言わんばかりの表情で喋りだした。
「利根川競歩。た…、おっといけない。 ただの小学生さ…5年生のね。」
そういうと彼は扉を開け廊下に出て行った。
そして階段を降りて、自分のクラスへ帰っていった。
ホントなんで、うちのクラスに居たんだろう…。呆れながらも、今回助けてもらった事には変わりないので。俺は、感謝の念を飛ばすことにした。
ありがとう。そして彼の助けを借りる事が無いことを祈り、授業の準備を進めた。
利根川競歩の事件簿 理系メガネザル @Saru-Yama
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