第3話

「その前に、聞きたいことがある。」

調査が始まる前に、和田君が利根川君に尋ねた。

「なんでしょう?」 利根川君が応えると、和田君は続けた。

「なんで事故じゃなく事件だと言い切れる。 あとなんでソイツが犯人じゃないと言い切れる!?」


「簡単ですよ。 まず事故じゃない理由は、このバットが凶器じゃないからです。」

「? 他に何かあるってのか?」

「ええ、恐らく。正確には分かりませんが、多分石とかボールとかその辺りの物でしょう。」

「だから、なんでそう言い切れる!?」

「いいですか、まずガラスが外側にでなく、教室側にあります。

つまりこのガラスは外側からの力により割れたんです。もし内側から力を加えたら外にガラスは行きますからね。」

「それでなんで事件だって言える!?」

「ざっと探してみたところ、その凶器と思われるものはここには無かった。そして見た人を騙す為にわざわざバットまで置いてある。 これは明らかに人為的なものだ。もうこれは事件といって差し支えないでしょう。」


そうか…。成程…。と皆が感心していると和田君はまたも利根川君に嚙みついた。

「な、ならコイツじゃない証拠は!? あんのかそんなもん!?」



「そうですね…。証拠という証拠はまぁ、無いんですが…。」


すると、和田君は鬼の首を取ったように騒ぎ出した。

「ほら見ろ! 証拠なんかないんじゃないか!」


しかし利根川君は全然慌てなかった。

「しかしですね、もし彼が犯人だとですね、変な事があるんですよ。

わざわざ凶器を隠して、偽の凶器を置いた。そこまでしておいて犯人と疑われるのは、意味が無いじゃないですか?」


「それはまぁ、そうだが…。」遂に和田君が押し黙ってしまった。

それはそうと…と利根川君が続けた。

「何故君はそこまで彼が犯人であることに拘るので…?なにかそうしないと貴方に不都合でも…??」

「そ、それは…。」

今度は和田君が疑われる番だった。


そうかと思ったら、利根川君は和田君への尋問を止めた。

「やはりそれもこれからの捜査で明らかにしますか。」


利根川君はそう言い、担任が座るあのフカフカとした椅子に座ると手を顔の前で組むと、「それでは…。」と言い、今回の事件の捜査を始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る