第10話 真相と神


 「私が同時期大量殺人を行ったやり方…それは、これさ」


スドウは、3つ並んだモニターの内、真っ黒な画面のモニターを指差す。


「は?」


キョトンとするリョウを構わずにスドウは続ける。


「ここからは普通の常識で考えたら理解出来ないだろうけどね。先入観を抜きにして聞いてくれ。じゃないと理解が出来ないからさ。このブラックアウトした画面を1回数十秒眺めると1歳、年を取るのさ」


「何を言ってんだ?そんな事出来るわけないだろ」


「だから言ったろ?先入観を抜きにして聞いてくれって。まあ、信じられないとは思うがな。このシステムの仕組みとして、1回数十秒間ブラックアウトした画面を眺める事で、1歳年を取る事を利用し、不特定多数の人間1000人に『毎日100万円の貰える懸賞に当選しました』という詐欺メールを送る。引っ掛かったのがたまたま、100人だった。まあ、こんな詐欺メールに100人でも引っ掛ってくれたのは幸運だったがな。詐欺メールに引っ掛った100人には、100万円受け取るか拒否をするかの2択の選択肢を与えた。どちらを押してもブラックアウトの画面がスマホに数十秒流れるがな。その後、受け取るを選択したものの口座に100万円を急いでネットバンクを利用して振り込んだ。この時が一番忙しかったかな。だって、100人全員が受け取るを押すんだもん。100万円を送る口座名を同じ名前にしたのにもちゃんと理由があってね。なんか、知らない内に自分の年齢1年を100万円で買ってるんだって事になって興奮したよ。残りの人生を100万円と引き換えに徐々に売ってるんだこいつらはって笑いが止まらなかった。面白い事にね。バカなこいつらは、100万円が本当に振り込まれるんだって事実を知ると感覚が麻痺するのか、毎日受け取るボタンを押したよ。自分の命を削ってるのも知らないでね」


高笑いをしながら話し続けるスドウの狂気に、リョウは寒気を感じた。


「お前…クソだな…」


蔑んだ目でスドウを見つめるリョウに対してスドウは笑みを浮かべ声高らかに話しを続ける。


「このブラックアウト映像システムのすごい所はね!脳内に直接作用して刺激、錯覚させる薬物的なものだから、死ぬまで肉体には大きな変化は出ないんだよ!2ヶ月近く映像を見ていて、実は、60歳も年を取っていた事に死ぬまで気づかない!被害者の年齢は20代だから実は、80歳ぐらいに気づいたらなってたなんてね。死んだ後に脳機能の停止と共に数時間で一気に80歳ぐらいの肉体になっていたのはそのせいさ。ん?あ!死ぬまで気づかないってゆうか、死んだら気づかないや!ハハハ」


スドウは、大笑いをし始める。狂気に歪んだ顔を浮かべて。

リョウは怒りの感情で強く拳銃を握る。拳銃がフルフルと小刻みに震えている。


「殺す!!」


「待て待て。まだ、最後に聞いてない事があるだろ?何で警察がこの事件の捜査をやめたのか?この事件の事実を使って、国を脅したのさ。もしも、民間のテレビ、スマホの電波にさりげなくこのシステムを混ぜるとどうなる?大量殺人を容易に可能とする最強の兵器となる。それを作れるのも、動かせるのも私だけ。全人類の命は私が握っているという事実にね。最高に興奮したよ!私が全人類の神になったようだったよ!」


室内に醜く響き渡るスドウの笑い声。彼は本当に神なのか?

いや、歪みに歪んだ狂気に満ち溢れた顔は、悪魔にしか見えなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る