第9話 追求と自白


 リョウは、スドウに向けていた銃口をおろし、静かに語り始めた。


「スドウ。お前にたどり着いた理由。まずは、お前が送っていた『毎日100万円当選者』メールの送信元。海外のサーバーを踏み台にして、送信元を入り組ませて分かりづらくさせていたが、サイバー課の刑事が1人で歩いている時の夜道を狙って拉致して、死ぬ気で特定させた。機械音痴の俺には出来ない手法だが、死ぬ気でやらせれば特定は意外に簡単だった」


「ほう。特定元は私だと分かったか。じゃあ、私が、その被害者全員に毎日100万円を2か月送るほどの財力があるように見えるか?」


「最近、ネット社会ってやつのおかげでお金集めるのも簡単になってるらしいな。お前がやったのは、クラウドファンディングってやつで全世界の物好きな金持ちから資金を集めていたんだろ?それも、特定済みさ。事件が起こる3ヶ月前に、ダークウェブってやつのあるクラウドファンディングサイトで、今回起きた事件の概要ともし、失敗した場合は、援助金を倍額にして返金する事を書いて集めたらしいな。まあ、これは、特定に至るまで時間が少しかかったらしいがな。後、SNSで身元が割れないように偽装のアカウントってやつを作って、『通帳口座を作って売って貰えば10万円の高額裏バイト』みたいな求人出してたろ?」


リョウは、スウェットのポケットからスマホを取り出し、画面をスドウに見せる。

そこには、スドウが書き込んだであろうクラウドファンディングの文章が書いてあった。

スマホの画面をスライドさせると、スドウの通帳口座売買に使った際のSNSのアカウントやそのやり取りの履歴の画像が出てきた。


「…」


「黙り込んでんな?図星か?」


黙り込むスドウにニヤリと笑い追撃をするリョウに対して、少し間を置いた後に、スドウはため息をついてぼそっと呟いた。


「ちっ!ゲームオーバーか」


「やっぱりてめえが犯人じゃねえか!!?」


リョウは鬼のような形相で再び、銃口をスドウに向ける。拳銃の引き金を引き、すぐにでも打ちそうである。

その姿を見て慌てながらスドウは両手を挙げて語りかけてくる。


「ま…待て!!君はまだ、知らない真実がある!どうやって100人もの人間を同時期に殺せたのか?なぜ、この事件の捜査を警察はしなかったのか?私を殺したらこの事件の真実には永久に辿り着けない。どうせなら全ての真実を知ってから、私を殺しても遅くはないと思うぞ」


「ちっ!早く答えろ」


リョウは、拳銃を打つ手を止め、上唇を強く噛む。

真顔の表情になり、スドウは、話を始める。


「まず。この事件を起こした動機についてだ。私はね。元々、ある研究所で最先端技術の研究をしてた。その時は、毎日が楽しかった。国の予算で研究を続けていた。だが、そんな楽しかった日々も突然、終わりを迎えた。私の最先端技術の研究が中々、頭でっかちの他の研究者達に妬みの対象にされてね。中々、認められなくて、国からの研究予算が打ち切られて私は、研究所をクビになった。私みたいな天才を潰した事を後悔させてやるってね。だから私は、国に対しての復讐をする為に今回の計画を思いついて実行した。」


スドウは、話しながらキーボードが置いてある机に設置されている引き出しを開けて、中から大量のカードを見せた。


そのカードは運転免許証だった。


スドウが見せてきた運転免許証の一番手前側を見て、リョウは驚きを隠さないでいた。


『運転免許証 氏名:カタオカ マイ』


と記載されていたが、貼られている顔写真はマイとは別人の女性であった。

スドウはニヤリと笑う。


「な?天才にとってはこんな偽装運転免許証作るのなんて朝飯前なんだよ」


スドウは、大量の偽装運転免許証を引き出しにしまい、再び両手を上げて、リョウの方を向いてニヤリとした笑みを浮かべ語り始める。


「さあて。ここで、本題に入ろうか。どうやって、大量殺人を行ったのか?」


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