邪竜物語に首を突っ込む編

081-家族団欒

 私はマルレリンド・ドレストレイル!


 私には魂が3人分入っていた。


 体の持ち主であるマルレリンド、異世界からやってきたトモカ、そしてトモカが引きちぎって持ってきた神の使いの3人分である。3人の魂は一つの体を共有するようにくっついて一つの魂として生きてきたが、潜心術の刺激で一度バラバラに別れてしまった。その後で各自が望んで一つになったため今では魂は完全に一体化している。


 雨降って地固まる。


 流魔血によって自我が食われる心配はなくなり清潔の祝福は魂全体を守りもう潜心術にかかることはないです。


 黒鎧を清潔の祝福で完全消滅させて心の世界から抜け出した私は自室のベッドで目を覚ました。


 ハッと思い髪の毛を触ってみると、残念ながら髪型はストレートではなく縦ロールに戻っていました。


 ちょっとがっかりしていると周囲がなんだか騒がしくなり始めました。

 

「マルレちゃんおはよう」

「マルレ目が覚めて本当に良かった!目の前に居たのに不覚を取ったすまない!」

「無事なようで安心した……あまり無茶をするな……」

「お嬢おはよう」


 大勢が私の顔を覗き込んでいてぎょっとした。お母様にお父様それにお兄様とファーダまで……。


「ご心配をおかけしましたがより強固になって戻ってまいりました」


 私がしっかりと挨拶するとみな安心したようで、覗き込むのをやめてソファーや椅子に腰を下ろした。私は上半身だけ起こし周りを見た。一段落して気が抜けている家族を見ると、いままで感じたことのない安心感を得た。混ざる前より家族という意識が強くなっているみたいね……。


「う~ん、お姉ちゃん~」


 私のとなりから眠そうな声が聞こえた!先程の出来事が夢ではないなら隣に寝ているアリッサは私の妹のハルカが転生した姿なのです。


「えっと……アリッサ?」

「あっ!おね……マルレ!目が覚めたのねよかった~」

「え~アリッサ?のおかげで無事に目覚めることが出来たわありがとう」


 私はハルカと呼べばいいのかアリッサと呼べばいいのかわからなく疑問形になってしまった。


 そうだ……アシハラ姉妹の事や神の使いのことを説明しないといけない……。一体何から話したらよいのか……。


「マルレちゃん私はずっと見ていましたので、みんなには私から話します」


 どうやらお母様がアリッサ?を私の心に橋渡しをしてくれたようですべて見えていたそうです。黒い壁のトンネル部分やトモカのアホっぷりを伏せて説明してくれました。


「魂が3人分あって一人は異世界人、一人は神の使い……私が力負けするわけだ……」

「ほう……魂の合成か……あそこで拾った魂になにか混ぜるのも面白そうだな……」

「ははは!お嬢面白すぎでしょ!」


 お父様はデュオ・イ・クロスで腕が折れた理由に納得し、お兄様は何やらマッドな考えが漏れでて、ファーダはただ面白がっている。


 人格が混じったことに関してはなんとも思っていないのかしら?家族と認めてくれるのかな?そんな心配をしていた私の心労を返してほしい!


「あら!もう一つ忘れていましたアリッサちゃんは、なんと!マルレの妹なのです!」


 お母様がアリッサが妹であることを伝えた……転生者ということを添えないで……。


「父上……外に子供を作ったのですか?」

「いや!そんなわけないだろう!ということは……まさか……」


 ファーダは完璧に気配を消し壁に同化し、アリッサは脳の処理が追いつかず目を見開き固まっている……。お母様は伏し目がちになり勘違いを加速させようとしている。


「くっ!わっ私はレナータの子供なら誰の子供でも愛してみせる!」


 そう宣言しながらお父様がソファーから勢いよく立ち上がった。あーあ……間違った男気を発揮してしまいましたわ……。


「ちょ……ちょっと持ってください!転生者です!私も転生者でトモカの妹なんです!」


 耐えられなくなったアリッサが大声で訂正した。気が抜けたお父様は「なんだ~」と半笑いでドサッとソファーに腰を下ろした。


「ふふふっザロットをからかうのは楽しいわね~」

「レナータよ勘弁してくれ……」


 お母様は相変わらずひどい……。まぁ……黙って楽しんだ私も話を誘導したお兄様も同罪ですけどね!


「久しぶりの家族団欒は楽しかったですわ」

「これが団欒!?」


 驚いているアリッサは無視してこれからのことを話さなければいけません!


 私はいろいろあったがアリッサとの関係も冒険者として生活することもこれから変わりなく続けていくことを宣言した。


「うん、私も今まで通り冒険者としてマルレとの関係を続行しますよ!」


 アリッサも今まで通りだと言ってくれた。


「アリッサ嬢は魔術師団ではなかったのか?」

「そうでしたが、辞めました。あそこはダメです……私には合いませんでした。というよりあの団体がこの国にあってません」


 アリッサの言葉を聞いてお父様は、「ふむ、こちらには都合がいいな」小さくこぼしたあと私達にある提案をしてきた。


「冒険者を続けるのは構わない……だが暫くこの国から避難してほしい……」

「避難とはどういうことですか?」


 どうやら敵は私を執拗に狙っているらしく敵の手の届かない国外に置いておきたいらしいです。そして私が避難している間に決着をつけるつもりらしいです。


「父上それならちょどよかったマルレたちはクロービに行きたいらしいぞ」

「クロービ……そうかあそこは入国も厳しいし最適かもしれん……しかしクロービ側の許可が降りるか……」


 あら?ちょうど良いじゃありませんか!旅の予定までそのままで行けそうですわ!


「お父様!許可ならガオゴウレンさんにいただいております!」

「なんと!それは良かった!むっ…………私達に報告もなく国外へ出る気だったのか?」

 

 私はお父様とお母様から軽くお説教を受けたが、無事クロービヘと渡る許可をもらった。


 あ~クロービ!楽しみですね!日本人らしき人がずいぶん前に渡ったことと島国であること!もう期待してもいいでしょ!ファンタジー世界にありがちな日本っぽい国を!

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