079-アシハラ・トモカ
うーん……なんだか家の前が騒がしなぁー久しぶりに家でゆっくり寝ていたのに一体なんの騒ぎ?
ああ?ハルカが帰ってきたのかな?良かった良かった一安心だ……。でもうるさいな~静かにしてほしいわほんと。
居ないと心配だけど居るとちょっとうっとおしい……姉妹ってのは不思議だね~。
「お姉ちゃん!」
うわ部屋まで乗り込んできたし!
だるい体をなんとか起こしてベットに腰掛けるような体制になった。
「うーん……寝てるんだから静かにして……よ?」
私の目の前にいたのは妹ではなかった……
「うわ……ゲームのやりすぎで幻覚が見えてる」
独り言を言ってしまうのも無理ないわ……キラキラした乙女ゲーの主人公と赤い髪の白ワンピ幼女と黒ポニテで白ローブのお姉さん……。
「おやすみなさい……」
スカリー、俺、疲れているんだ……。 うん!このような超常現象は見なかったことにするに限る!
「ちょっと!何また寝ようとしてるの!ちゃんと起きて!」
ハッキリ聞こえる……いやだな~怖いな~。
私ね……見た瞬間思ったんですよ……この世のものじゃないっ!!!ってね~、え~怖かったですよ~。
「バカなことブツブツ言ってないで現実を見てよお姉ちゃん!」
仕方がない諦めて幻覚と話しをしよう……んん?お姉ちゃん?
私は、私の事をお姉ちゃんと呼んだキラキラ乙女ゲー主人公をじっくりと見た。
「うーん……妹に全然似てない!私の妹はもっとへちゃっとした感じだもん」
「ちょっと!へちゃっとなんかしてないよ!話したこともない陰キャ3人に告られたんだから顔はそこそこだったはずよ!」
ぐぬぬ……こいつどうでもいい相手とはいえ3人に告られた事があるだと!?
「いい加減にして?話が進まないんですけど?」
ワオ!赤髪幼女がお怒りでらっしゃる!
「「ごめんなさい」」
わぁ~息ピッタリだねまるで姉妹みたい!って本当にこれってどういう状況なのでしょうね?
「かなり侵食されてるみたいね……記憶を叩き起こします」
「え?ちょっと……」
黒ポニテで白ローブのお姉さん……その手に持った綺麗な装飾のついた木槌で一体何をなさる気ですか?
あっ!振りかぶりましたね……。
「へぶぅう!」
いたい!痛い!イッターイ!
「痛い!いきなり何するのよ!」
「お姉ちゃん……プッフフフ……へぶぅうって」
「なんだか一人に戻るのが少し嫌になってきましたわ……」
アリッサには笑われるしマルレには呆れられるし頭は痛いしもう最悪だよ!
「記憶もどったかな?アシハラ・トモカさん」
名前を呼ばれた瞬間……頭の中を記憶が駆け巡る……。
「アリッサの中の転生者ってハルカなの?」
「そうだよお姉ちゃん!」
「やった~やっと見つけた!無理やり世界を超えてこっちに来たかいがあったよ~」
「無理やり?お姉ちゃんそれってどういう事?」
私はハッとして他の2人を確認して記憶と照らし合わせる。
マルレに神の使い……。
私は素早く土下座の体制をとった。
「誠に申し訳ございませんでした!」
最高傑作といっても良い綺麗な土下座を披露した。
「すべて思い出しているようね……ちゃんと話してあげて?」
私はコクリとうなずくと転生したあの日のことを語り始める。
寝坊してハルカにおいていかれた私は一本遅れた列車で移動していた。寝不足だった私は電車の揺れに耐えられるはずもなくぐっすり眠ってしまった。
そして夢とも現実とも思えないよくわからない空間で、ハルカが死んだから他の世界で生まれ変わると聞かされたのだ。私はハルカに縋り付くもハルカは完全にあきらめモードで空中にあいた穴を通ってあちらの世界にいってしまった……逃がすものか!私は思いついたら即行動が心情だ!
この人がいれば閉じないかなと思ったから神の使いと名乗った人の腕を掴んで思い切って空中の穴に飛び込んでハルカを追ったの!
体をグニグニとこねられるような感覚がしばらく続いた後に放り出されたのはビル一つ無い世界だった。それからハルカを探そうと思ったのだけど謎の力で引っ張られて気がついたらマルレの中に居たってわけよ!
私が説明を終えると神の使いが足りない情報を補足した。
「驚いたことにトモカはゲートの中で肉体の力を魂の力に変換して、更に私の魂を半分引きちぎって持っていったのよ……マルレの魔力容量がぶっ壊れてる理由は全部トモカのせいなのよ」
うわー私ってば予想以上にヤッちゃってるね☆
「お姉ちゃん……そんなテヘって顔してもダメだよ……確かに神の使いさんは被害者だわ……」
「ごめんね~でもマルレが助かってよかったねってことでここは一つ!」
どうか許して!
「神の使いさんはこれからどうするんですか?」
「長く混ざりすぎたからね……もう元には戻れない。それに私も好き勝手にやっていてだいぶ楽しんでるからね」
好き勝手やっている?それは一体?
「困ってる人を見ると助けたくて仕方がなくなるだろ?」
あー 身に覚えがあるね……。
「あのマルレの猪突猛進ぶりは神の使いさんのせいだったの?」
「いや私のせいだけではないすぐ行動に移すのはトモカの性質だ」
うん?よくわからないね~
「簡単に説明すると 人付き合いが苦手で礼儀正しいマルレ、なんでも即行動でアホっぽいトモカ、人助けが好きな完璧主義者の私が混ざって一人のマルレリンド・ドレストレイルになっているのよ」
ん?アホぽいって!アホってーーーーー!あんまりだー!
「そうか……私がお姉ちゃんと気が付かなかったのはかなり性格が変わってたからなのね……。それにやたらと人助けする割に友好関係を広げない変な性格なのも納得したわ……」
うーん 思い返してみるとたしかにちぐはぐな行動してたね私……。
「うーん?それで私達は出ていったほうがいいの?」
これだけは本来の体の持ち主である赤髪幼女姿のマルレに確認する必要があった。
「いやだ!出ていっちゃダメ!意識があるのも友だちがいるのも!みんな二人のおかげなの!」
赤髪幼女のマルレがそう叫んだ瞬間……私達は引かれ合い再び融合した。
「戻ったね……マルレ……」
アリッサがなんとも言えない表情で私を見ている。
私は机の上に置いてあった手鏡を取り自分の顔をじっくりと眺める。
端正な顔立ちに釣り上がったキツイ目つきにルビーのような赤い瞳、赤く艶のある髪は綺麗な縦ロールだ。
3人合わさったというより……引き裂かれてたのが戻ったという感じがするわね……。
「おかえり!ええと?マルレトモカの使いさん?」
「いや!いや!名前混ぜなくていいですからね?いままで通りマルレって呼んでください!」
ふ~なんとか一件落着したみたいね~。アリッサが妹だったし乙女ゲーの世界も終わってるし一件落着って感じですわね!
「おのれ!おのれ!またしても!」
辺りにドスのきいた低い声が響き渡った。あたりの景色にヒビが入ると崩れ去り真っ黒な空間に変化した。
「忌々しい聖域など作りおって!やっと壊せたと思ったら一人に戻りやがって!あのまま眠っていれば苦しまずに済んだものを!」
「完全に忘れてましたわ」
「わたしも……」
さっさと片付けてしまいましょう!
私は清潔の祝福に魔力を送る……あれ?髪型固定の祝福の割合が縮むのを感じる……。
縦ロールがストレートに戻っていく……。
清潔の祝福の力がどんどん強くなる!
きらめく光が膨らんでいき周囲の闇を分解していく……。
「ぐわぁあああ!こっこれはロズヴァの力か!?またしてもあの女の力に滅ぼされるというのか!」
辺りは静かになった……。
心の中は晴れ晴れとしている。
さぁ戻りましょう外の世界へ……。
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