12.聖女、感情に振り回される
「しょーがねーからいっしょにいく!しょーがねーからな!」
『いっしょ』と『いく』。
そんなユズルの言葉を聞いた瞬間、アーシャの中では祝福の鐘が高速で鳴らされまくった。
———ヨカッタ……ヨカッタ……
一番アーシャの約束を気にしてくれていたアカートーシャは、ようやく安堵できたらしく、そう繰り返した。
彼女は本当に一生懸命に、現代語に食らいついていってくれた。
「ふふふ……へへへ………」
アーシャも嬉しくてたまらない。
もちろん、連れて行ってもらえるということも嬉しいが、それ以上にしっかりと意思疎通が取れたことが嬉しい。
(アカートーシャに負担をかけちゃうけど、こうすれば大切なことを伝えられる!)
アーシャは会話に使った紙を撫でる。
———ナニカツタエルトキハ、マカセテ!
アカートーシャも今回の会話で、かなり手応えを感じたようだ。
手紙を書いたのがアカートーシャかと聞かれた時は、彼女は訳しただけで、手紙はアーシャのものなのだとは、下手な身振りでは全く伝わらなくて物凄く困った。
しかしアカートーシャの『文字で伝えよう!』と言う提案に救われたのだ。
思わず『天才!』と言ってしまったくらいだ。
文字を押さえて会話するのは、手紙を書くよりずっと楽だった。
アカートーシャもアーシャ以外と会話ができて、高揚している。
———イマノヒトニ、ツウジテル!
と、大喜びで、次々と返答する彼女のスピードについていくのは、結構大変だった。
途中の会話にはついていけず、後からアカートーシャに内容を説明されたくらいだ。
(もっと沢山喋るためにも、もっと勉強頑張ろう!)
成功体験を得たおかげで、アーシャは張り切る。
———ワタシモ、イマノコトバヲ、チャントオボエル!
アカートーシャも久々の外部との接触で、興奮冷めやらぬ様子だ。
———フタリデガンバロウ
(うん!)
アカートーシャは体の中にいるので、手と手を取って約束する事はできないので、アーシャは自分の胸に手を当てて、約束する。
アーシャは周りが楽しそうに話していても、その会話についていけない。
こちらに話しかけてくれる時は、皆、聞き取り易いように話してくれるのだが、今のように大人同士で楽しそうに喋っていると、早過ぎて、その内容は殆ど聞き取れない。
それは仕方ないことだと思っていたが、一つうまく行ったことで、アーシャの中に欲が出てくる。
(いつか私もこうやって話せるようになりたいなぁ)
ゼンやユズル、シノザキ、イズミ、ケイ、ミネコ、『ほいくえん』の友達。
こちらに来て出来た大切な人たちの顔がアーシャの脳裏に浮かぶ。
どんな食べ物が好きだとか、どんな時間が好きだとか、沢山知りたいし、アーシャの事も知って欲しい。
一緒にあれが楽しいとか、これが良かったなんて話し合えたら、きっともっと楽しくなるだろう。
ユズルたちが話す様子を見ながら、アーシャがそんな事を楽しく妄想していた時だった。
「ごっはんっだよーーー!」
勢い良く部屋の扉が開けられ、シノザキが入ってきた。
弾むような足取りで、エプロン……と言うには山のようにレースがついた、前身だけの豪華なドレスと表現した方が正しい服を揺らしている。
「しゅごー!」
アーシャが素直に感動すると、
「かわいっしょ〜〜〜!」
と、シノザキは豪快に一回転ジャンプをして見せてくれる。
ちょっと回転が豪快過ぎて、中身が見えてしまったような気がするが、レディに恥をかかせるのも何なので、アーシャは拍手で応える。
「さ!ごはんごはん!」
そう言って、見事な回転を見せたシノザキはアーシャを抱き上げる。
「ごはん!」
そう言うと同時に、お腹が待っていましたとばかりに鳴る。
ユズルが突然襲われたり、良くわからない集団に囲まれたり、意思疎通を図っていたりしていたら、忘れていたが、食事だと言われると急にお腹が減ってくる。
(約束の儀式に間に合うようにしないといけないんだけど)
早くゼンの所に行きたいと思うが、栄養補給もとても大切だ。
朝、ゼンが見せてくれた図には、いつ儀式が執り行われるとか書いていなかったので、そわそわする。
(でもユズルは一緒に行こうって言ってくれたもんね。大丈夫、大丈夫)
そう思いつつ、シノザキの肩越しに、ユズルを確認すると、彼はまだ卓に座って、お爺さんと話をしている。
「ユズゥ」
声を掛けると、ユズルはこちらを見る。
シッシと手を振るのかと思ったら、手を上げた所で思い直したように手を下ろす。
「すぐいく」
『すぐ』は短い時間のことだ。
「……ん」
同じ建物内にいて、離れる時間も短い。
しかもシノザキとミネコは一緒に来ている。
それなのに妙に頼りない気分になってしまうのは、何故だろう。
我知らず、シノザキの肩に回した手に力がこもる。
「だいじょーぶ!ユッキーがいるからね!」
するとその倍ぐらいの強さでシノザキが抱きしめて、ブンブンと体を振ってくれる。
「アーシャちゃん、わたしもいますよ」
ミネコもそう言って背中を撫でてくれる。
「………へへへ」
少々甘やかされ過ぎな気もするが、二人の気遣いは素直に嬉しい。
以前と同じように、奥へ進んでいくと、とても芳しい香りが漂ってくる。
「アーシャちゃん!」
鼻をひくつかせていたら、バンッと勢い良く扉が開き、元気の良いミネコ……ではなく、サクコが現れた。
シノザキのように、サクコも真っ白なエプロンと思われるものを身につけているのだが、こちらは形状がかなり変わっている。
丈はエプロンと一緒くらいなのだが、袖がついていて、サイドもしっかりと布に覆われている。
(エプロンと言うより……背中が開いているだけの服?でも生地は薄いし……エプロンの気がする)
シノザキごと抱きしめられたアーシャは、抱き返すついでに、不思議なエプロンをじっくりと見る。
「んふふ、もっちもち〜!」
変わったエプロンを摘んだりして調べているアーシャの頬を、サクコは自分の頬で撫でる。
(あったかい神気……気持ち良い)
触れたところから自然に染み込んでくるサクコの神気は気持ち良い。
ゼンのような強烈さはないが、温かいお風呂に入ったような気持ちがする。
「あぁ……」
それで何故か急に理解した。
先程から感じる頼りない気分の原因は、いつものあったかい神気が、そばにいないからだ。
今までどんなに長くても、夕食の前にはゼンがいた。
いつもなら、この時間には『ただいま!』や『おかえり!』というゼンの声を聞いて、アーシャは自分を守るように広がる神気に包まれていた。
アーシャは我知らず、そのおかげで安心して、くつろいでいたのだ。
「……ゼン……」
呟いてみると、あっという間に頼りない気分に呑まれてしまう。
そしてみるみるうちに目に涙が張ってしまう。
涙腺というものは、使えば使うほど緩んでしまうものらしく、最近は直ぐに水を供給してくるので困ってしまう。
「アーシャちゃん!」
「アーシャたん!!」
シノザキとサクコが慌てたような声をあげて、変わるがわる抱き上げたり、二人で挟み込んだりして、大騒ぎで慰めようとしてくれる。
「おにいちゃんがきましたよ」
そんな中、冷静な声と共に、ミネコがアーシャを持ち上げる。
「あぁ?」
そして後を向けられると、そこには驚いた顔のユズルがいる。
本当に『すぐ』に来たのだ。
「どーしたチビ」
戸惑うユズルにアーシャは預けられる。
「……ぅうぅぅ……」
量は全く違うが、ゼンと良く似た神気にアーシャはしがみつく。
この神気こそが、もうアーシャにとっては『家族』の象徴になっていたのだ。
安心できる気配に顔を埋める。
「おい。チビ?」
最初は戸惑ったような声を上げたユズルだったが、すぐに諦めたようにため息を吐いて、ポンポンとアーシャの背中を叩く。
(寂しい……いや、これは……不安……怖い……?)
そうやってアーシャが、自分でも持て余す感情に向き合えるようになるまで、少し時間がかかった。
(少し離れただけなのに……何でこんな風に感じちゃったんだろう……)
感情が落ち着いてくると、突然不安定になってしまった自分が恥ずかしくなってしまう。
周りでは食器の音や、何かを運ぶ気配、楽しそうな声が聞こえる。
ユズルの肩から顔を離すと、大きな卓の上には湯気を上げるご飯たちが並んでいる。
「………ゴクンっ」
魅力的な光景に思わず唾を飲み込むと、グルルルルと大きな音が鳴った。
大きな腹の虫に目を丸くしたユズルは、少しの沈黙と後に、小さく吹き出した。
「うぅっ」
アーシャは自己主張の強い自分の腹を、何とか黙らせようと両手で押し込む。
突然泣き出して、止まったかと思ったら、次は腹を鳴らす。
本当の子供のように情緒が落ち着いていないし、本能に忠実すぎる。
「めし、くーか?」
「…………ん」
死ぬほど恥ずかしかったが、アーシャは小さく頷く。
寂しさを感じていた頭や心と違って、アーシャの胃は非常に現実的である。
人間の生きるための活力をさっさと摂取せよと大声で主張を続けている。
これはきっと食欲を満たすまで鳴き続けるだろう。
「……………」
「…………おい、チビ」
これはもうご飯を食べるしかないと思ったのだが、椅子に下されたアーシャの手は、しっかりとユズルを捕まえて離さない。
「……………?」
自分で自分の謎行動に戸惑ってしまう。
しかし何となく離したくない。
そんなアーシャに対して、ユズルは特大のため息を吐いてから、自分に割り当てられた椅子をアーシャの椅子にくっつけた。
「これでいーか?」
真隣に座ったユズルに、呆れたように言われて、ようやくアーシャの手は離れる。
「へへへ」
子供っぽい我儘を通してしまったアーシャは、恥ずかしくなって、笑って誤魔化してしまう。
「アーシャたん、アーシャたん!め・ん・ち・か・つ!おれがつくったんだよ〜」
そんなアーシャにシノザキが話しかけてくる。
彼女が指差しているのは、皿の上の茶色い塊だ。
(あ、これ、前も見たことがある。藁を丸めたようなやつ)
以前もここの食卓に並んでいたのだが、あまり見た目が美味しそうに見えなかったし、燦然と輝く玉子があったので、そちらを優先させてしまった。
「めんちかちゅ」
料理名を教えてもらったアーシャは復唱しつつ、頷く。
「かぼちゃころけわ、わたしでーす!か・ぼ・ちゃ!か・ぼ・ちゃ!ほっくほくよーーー!」
シノザキに対抗するように、サクコも皿を指差す。
「かぼちゃ」
アーシャは大きく頷くが、『めんちかつ』と『かぼちゃ』の差がよくわからない。
どちらも短く切った藁を固めたような外見だ。
違うところと言えば、『メンチカツ』はかなり大きく、『かぼちゃ』は分厚くて小さいくらいだ。
「ふふふ」
形に個性が出ているそれらは、二人がそれぞれ作ってくれたことがわかる。
アーシャは皿に顔を近づけクンクンと鼻を鳴らす。
以前は見た目のせいで敬遠してしまったが、誇らしそうな二人の顔を見ていたら、食べるのが楽しみになってしまうから、不思議なものだ。
———アブラノ、カオリガスル
(香ばしいパンのような匂いもするし……肉の気配が微かにするような……!?)
———オニク!
最初の頃は肉を食べることに拒否感を持っていたアカートーシャだが、今ではすっかり肉の虜だ。
「いただきます」
隣でユズルが手を合わせたので、お腹から肉食獣の唸り声のような音が出っぱなしだったアーシャも急いでそれに倣う。
「いたーきましゅ!!」
勢い良く手を打ち鳴らして、フォークを構える。
そして明らかにメインとして供された、藁の塊のような物にフォークを突き立てる……
「チビ、しょーゆにするか?そーすにするか?」
と思ったのだが、その前に、隣からユズルに聞かれる。
「……………?」
恐らく、このメインにかけるものを聞かれているのだと思うが、『どちらにするか?』とばかりに、ユズルが両手に持った液体は、どちらも黒くて、見た目が一緒だ。
「しょーゆ!」
「そーす!」
迷っていたら、シノザキとサクコが、おすすめしてくれるのだが、それが別々なので、ますますどちらにすれば良いかわからない。
「はい」
悩んでいたら、ミネコが小さな皿を二つ持ってきてくれて、それぞれの黒い液体を注いでくれる。
「あいがとー!!」
どちらも使うという選択肢をもらって、アーシャは感謝を伝える。
「どーいたしまして」
ミネコはそう言いながらアーシャの頭を丁寧に撫でてくれた後に、自分の席に戻る。
この国ではフォークとスプーンはよく出てくるのだが、ナイフはほぼ出されない。
よって最近はそのまま齧り付くという、蛮行に走っていたのだが、ソースが別皿ならば、流石に切り分けないと見栄えが悪すぎる。
アーシャはナイフがわりにスプーンを構える。
『めんちかつ』の一番端にフォークを刺すと、思った以上に硬く、グッと力を入れると、サクッと小気味の良い音と感触と共に、中に飲み込まれる。
「わぁ!」
よく焼いたパンに噛みついたような爽快な感触に、アーシャは思わず歓声をあげてしまう。
続いてスプーンを入れると、これまた気持ちの良い感触と音がして、中が見える。
「ん〜〜〜!!」
緑、オレンジ、白の中に燦然と存在感を放つ、焼けた肉の黒茶色。
茶色の皮の中には、とんでもなく魅力的な光景が広がっていた。
切った瞬間、中から肉と野菜の香りが漂ってくる。
———ショーユ、ショーユ……!
まずはどちらを楽しむか、一瞬迷ったが、アカートーシャの希望で、『しょーゆ』から楽しむことにした。
揚げたと思われる外側は『しょーゆ』を弾き、流れた黒い液体は断面に吸い込まれていく。
「はふっはふっ!」
口の中に放り込み、噛み付くと、薄く硬いパンを噛んだときのような、カリッという気持ちの良い感触がする。
そしてジャクッと野菜の繊維を断ち切る感触が続き、肉汁が溢れてくる。
「んふ〜!はふっはふっ!!」
食感はパンと野菜なのに、味はしっかり肉だ。
肉汁がしょっぱい『しょーゆ』と混ざり合うと、とんでもない美味しさだ。
口の奥が痺れるように反応して、唾液が口の中に吹き出してくる。
———オイシイ!オイシイ!ヤサイナノニ、オニクダネ!!
アカートーシャも大興奮の美味しさだ。
「おいふぃーなぁぁぁ」
無論、アーシャだって大興奮だ。
思わず両方の拳を突き上げてしまう。
この美味しさを、もっとしっかり噛み締めたいのに、喉が我慢できずに飲み込んでしまった。
食べ物が食道を流れていき、不平不満を垂れていた胃が、喜ぶのを感じつつ、アーシャは次なる一口を切り分け、今度はしっかりと『しょーゆ』をつけて頬張る。
「んふ〜〜〜!!」
先程の素材を活かした味も、濃くなった『しょーゆ』味も、どちらも美味しい。
「チビ」
頬を押さえて、左右に揺れていたアーシャに、ユズルがコンコンと『こめ』の入った皿を、指で弾いて見せる。
「あ!」
あまりの『めんちかつ』の美味しさに、『美味しいの法則』が吹っ飛んでいた。
肉と『こめ』は最高の相棒、だ。
喉が『めんちかつ』を飲み込もうとする衝動を抑えつつ、アーシャは湯気を上げる『こめ』を口に運ぶ。
「はふっはふっ!ん!……んんん〜〜!」
『こめ』を冷ましつつ、噛むと、しっかりつけた『しょーゆ』の味が、ほのかな甘味と混ざり、まろやかになる。
肉と野菜と『こめ』がよく混ざり合い、ほのかな甘さと塩辛さが、お互いを引き立て合う。
「ほひひ〜な、ほひひ〜な!」
喜びが体の中を満たし、口から溢れ出す。
「アーシャちゃん、アーシャちゃん、そーすもおいしーよ!そーす!」
『しょーゆ』のあまりの美味しさに、二口、三口と食べ進めていたアーシャに、サクコがアピールする。
「あ!」
その存在を忘れてしまっていたアーシャは、『しょーゆ』に沈めようとしていた『めんちかつ』を、急遽『そーす』の皿に浸す。
「おぉ……」
『しょーゆ』と同じようにさらっとした液体に見えていたのだが、『そーす』は外側の茶色い皮にもしっかりと絡む。
「!!!」
同じ黒い液体なのに、味は全く違う。
———ノウコウ!
アーシャが思ったことを、アカートーシャも同時に言う。
ストレートにしょっぱさを感じる『しょーゆ』と違い、『そーす』は上手く言えないが、濃厚なのだ。
(なんかちょっと果物感があるというか………!?)
味を上手く表現できないが、しょっぱさを感じるまでに、軽い酸味や旨味など、何重もの味の壁があり、重厚なのだ。
「おひひーな!!」
『しょーゆ』のストレートな旨さも良いが、これも凄く良い。
「でしょでしょ〜〜〜!」
夢中で咀嚼しながら報告すると、サクコは凄く嬉しそうに笑う。
「くいながら、くちをあけるな、くちを」
「しょーゆ、しょーす、おいしーな!」
ユズルからも話しかけられたので、報告したら、大きなため息を吐かれてしまった。
———クチハ、カラニシテカラ、ハナシナサイッテ
どうやら話しかけられたのではなく、注意されていたらしい。
「えへへ」
淑女らしからぬ行いは、笑って誤魔化してしまうに限る。
お腹に余裕が出てくると、一緒に添えてある葉っぱを食べて爽やかさを足したり、『とまと』で口の中を一度リセットして食べたりと、色々楽しめてしまう。
———トマト、オイシイ!ホオズキミタイナノニ、オイシイ!
『とまと』にそっくりの毒を持つ植物があるらしくて、最初はかなり警戒していたアカートーシャだったが、その酸味の強い甘さに大喜びだ。
「あ、そっちはそのままくってみろ」
サクコが作ってくれた『かぼちゃ』も食べようと、『しょーゆ』につけようとしたら、ユズルにとめられた。
「?」
———コッチハ、ソノママタベルミタイ
言われてみると、断面が暗い緑とオレンジで、『めんちかつ』とは全く中身が違う。
(香りも確かにちょっと甘い……?)
口に入れると、ほのかな甘い香りが鼻に抜ける。
そして『めんちかつ』と同じく、サクッとした外側の皮を噛むと、しっとりとした感触に歯が受け止められる。
———オイモミタイ!
噛むと、口の中にもったりとした甘味が広がる。
(うん!『やきいも』みたい!!)
ゼンと一緒に食べた味に似ている。
「ん〜〜〜〜!!」
見た目は『めんちかつ』そっくりなのに、こちらはまるで上品な甘さのお菓子だ。
同じ皿に入っていて、同じ見た目なのに、一方が最高のメインで、一方が美味しいデザートなんて意表を突かれてしまう。
「アーシャちゃん、アーシャちゃん、どう?」
目を輝かせてサクコが聞いてくる。
「おいしーな!やきいも!おいしーな!」
アーシャはその甘さに対する感激を伝える。
(藁の塊みたいなものが、まさかこんなに美味しいなんて……!!この前はなんて惜しい事をしてしまっていたの……!!)
もちろん玉子は至高である。
しかしこんなに美味しいものを食べ逃していた事実が悔やまれる。
(あ〜、『こめ』、もっと積極的に食べていたら良かった!)
———オカズ、ナイネェ
あまりの美味しさに夢中になって『かぼちゃ』を食べたのだが、それと合わせようと食べ控えていた『こめ』が余ってしまった。
(禁断の『みそしる』投入やっちゃう?)
———ヤッチャウ!
しかしアーシャたちには、メインに夢中で、すっかり食べ忘れていたスープが残されている。
「アーシャちゃん、おかわり、ありますよ」
『こめ』の量に見合うように水分を減らそうと、美味しいスープを飲んでいたら、ミネコたちのお父さんが大きな皿を示す。
そこには茶色い塊が溢れている。
———オカワリシテイイッテ!
「わ〜〜〜〜〜!!」
ほんの少し前までスープに『こめ』を入れようと合意していた二人は、一も二もなく、『ください!』とばかりに自分の皿を差し出す。
「うっ……」
———ダイジョウブ?オナカ、ハレツスル!?
その後、欲張ったアーシャたちは、ミネコのストップがかかるまで食べ続けてしまったのは言うまでもない。
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