13.聖女、兄を着る

『アァシャ!きんきゅーじたいじゃ!エンゴをよーせーするぞ!』

バニタロの頭に騎乗したモモタロがそう言った時、アーシャは再び馬鹿笑いしながら、べヨンベヨンと弾んでいる最中だった。



この国は大変刺激的だ。

食べ物は珍しい物ばかりで、その全てがとんでもなく美味しい。

常に冷たい氷室のような箱に、火が噴き出る台、風を巻き取る天井など、家の中だけでも珍しい物が溢れている。

紙で色々な物を作り出しているし、材質不明な便利なものも沢山だ。

家の外には、凹凸のない、広くて完璧な道が縦横無尽に張り巡らされ、その上を魔法生物の『くるま』たちが走り回っている。

お店は驚くほど巨大で、色彩鮮やかな物が溢れている。

誰かが作った『どが』をいつでも見ることができるし、遠くの人と『どが』で繋がる事もできる。


もう慣れた。

もう驚かない。

何度そう思っても、何度も覆される。


そんな中、訪れた今回の施設は最高に刺激的だった。

色とりどりの『ぼぉる』を敷き詰めた巨大な箱を作ろうなんて、一体、誰が考えついたのだろう。

最初は楽しいばかりで気が付かなかったのだが、この設備は凄い。

球体の中で思う方向に移動するためには、体幹と優れたバランス感覚が必要となり、楽しみながらしっかりと体が鍛えられるのだ。


それだけではない。

『ぼぉる』を投げる事で投擲とうてき能力が鍛えられる。

子供達が自発的に『ぼぉる』を投げたくなるように、壁に大きな丸を重ねたマトを描く、小憎い工夫までされている。

無論、アーシャもアキラと競い合うように投げた。

投げるたびに体勢を崩して転けるのが、これまた楽しくて堪らなかった。

このように愉快に遊びながら、子供を効率的に鍛える凄い施設だ。


更に『すりべだい』を滑りたいという、子供の欲求を利用し、様々な訓練を自然と行わせる所が凄い。

上級者は縄梯子、中級者は凹凸のある床、初級者は階段を自ら選んで登るように作られている。

登るのが困難な物ほど『すりべだい』の近くに設置されているから、子供たちは各々の実力で最も早く『すりべだい』に到達する道順を選ぶようになっているのだ。

しかも簡単な方から登った者は、段差を乗り越えたり、障害を避けたりと軽い負荷の訓練が追加されるような構造になっている。

(恐ろしく計算された施設!)

それに気がついた時、アーシャも舌を巻いた。


一緒に遊ぶアキラは、アーシャよりかなり体が出来上がっているのだが、全てのレベルをアーシャに合わせてくれるので、アーシャも無理なく楽しく体を鍛えることができた。

彼女とはたった一日、少しの時間だけ一緒に遊んだだけの仲なので、あまり性格など詳しくわかっていなかったが、流石コータの友達である。

気遣い満点、人懐こさ満点、快活さ満点、そして体力も満点。

およそ非のつけどころのない素敵な子だ。


アーシャが凸凹のある床を上手く登れない時は手を引いてくれて、『すりべだい』は手を繋いだり、前後で連結して滑ってくれたり、マトにまで『ぼぅる』が全く届かないアーシャに投擲とうてきの方法を身振り手振りで教えてくれる。

サッとペンを走らせて描いたような切れ長の目は、笑って細くなると、陽だまりを堪能する猫に似ていて、すごく可愛い。

言葉は通じないが、そんな笑顔と共に、明るい声で話しかけられると、それだけで嬉しくなってしまう。


そんなアキラが『ぼぅる』の箱で笑い疲れた頃、アーシャの手を引っ張った。

すっかり彼女を信頼したアーシャは、抵抗なく、導かれるままに『ぼぅる』の詰まった大きな箱から出た。

(あ、ゼン!)

ゼンはどこにいても良くわかる。

抑え切れない神気が漏れているから目立つと言うのもあるが、それがなくてもゼンほど大きな人が、この国では稀だからだ。

愛らしい色の四角い長椅子の端に、大きな体を少しすぼめて、ゼンはちょこんと座っていた。

その頭で、バニタロとモモタロがくつろいでいるのが、何とも微笑ましい。

(一人で寂しくないかな)

と思ったが、アーシャの視線に気がついたゼンは、いつもの笑顔で手を振ってくれた。

アーシャは安心して、大きく手を振り返した。


手を振りながら笑顔になるアーシャの隣で、アキラも日向ぼっこしている猫のような顔で笑った。

「ままがねんねできてよかた!」

彼女が弾むような声で何かを報告してくれるので、アーシャも何だか嬉しい気分になる。

言葉は通じないが、二人は笑い合いながら手を繋いで走り出した。

そして辿り着いたのが、冒頭でアーシャがベヨンベヨンと跳ねまくっていたブツである。



この不思議な物をどうやって表現したら良いだろうか。

なめした革よりツルツルとした、水すら弾きそうな不思議な布で作った、小さな城……とでも言えば良いのだろうか。

かなり複雑に縫製して形が作ってあり、アーシャの身長より分厚い、四角の床部分から、四方向に高い城壁が作られ、子供達が出入りする所だけアーチ型の門が設けられている。

門を入ったら、登ることのできる城や、城から伸びる大きな『すりべだい』、四本の尖塔などが作られている。

ツルツルとした布はかなり丈夫で、幌に使う布のように分厚く、縫うのが困難だと思われるのに、どこを見ても狂いのない縫い目で、複雑な形を仕上げている。

お針子さんか、職人かわからないが、凄い技術である。

布には煉瓦や窓、屋根の絵を描いてあって、それらしく見えるようにしてあるのだが、その色使いや表現も大胆で素晴らしい。


そして驚くべき事に、この小さな布製の城、中に入っているのは綿などではなく、空気なのだ。

縫い目に耳を当てて確認したから間違いない。

シューシューと微かに空気が染み出す音がした。


布には水すら貯めることが難しい。

水を持ち歩く用に作られた皮袋すら、時々水が染み出してしまう。

それなのに、水なんかより断然捉え難い、全く姿の見えない空気を詰め込んでしまっているのだ。

こんな事をアーシャの国で話したら、気がおかしくなってしまったのかと言われて、信じてはもらえないだろう。

それくらい凄い技術だ。

その突出した技術を、子供達の楽しみのために使ってしまっているのだから、驚きだ。


「ほぇぇぇぇ!?」

アキラに誘われ、最初に足を踏み入れた時の衝撃は凄かった。

布越しに空気を踏む。

初めての体験だったが、何とも不思議な感覚だった。

そこに確かに『何か』があるのだが、踏むとギュッと凹んでしまう。

凹んでも突き抜けてしまうわけではなく、ある程度の所で跳ね返ってくる。


「あーさ!だいじょぶ!!」

あまりに初めての感覚で、思わず及び腰の屁っ放り腰になったアーシャの手を取り、抱きしめるようにして、アキラはエスコートしてくれた。

雲の上を歩いたなら、きっとこんな感覚だろうという、何とも頼りない足元。

最初は怖くて堪らなかったが、そのうち感覚が掴めてきた。

どれくらいの強さで踏んだら、どれほど沈み込むのか。

そして沈み込んだ分が、どれぐらいの強さで跳ね返ってくるのか。


最初はおっかなびっくりだったが、わかってくると、愉快になってきた。

歩くだけでフワッフワっと体が浮く、浮遊感を楽しむ余裕まで出てきた。

「あーさ、じゃんぷじゃんぷ!」

踏み込んだら、踏み込んだ分、跳ね返ってくる。

それを利用して、アキラと両手を繋いで、タイミングを合わせて一緒に飛ぶと、驚く程体が舞い上がる。


アキラは小さいのに、とても面倒見が良くて、この国の知識は赤ちゃん並みにしか持っていないアーシャを巧みにリードしてくれる。

(こんなに小さいのに、なんて優しくて賢くて頼りになるの!!)

この状況は大人として情けないかもしれないが、アーシャはアキラがいてくれる事が嬉しい。

「あいがとぉ」と感謝を述べる度に、

「おねちゃんだから」

と、誇らしげに笑う顔が眩しい。

『おねちゃん』は女性の敬称なので『レディとしての嗜みです』のような事を言われているに違いない。


因みにコータと仲が良かったし、髪が短いし、ズボンだったので、最初、アーシャはアキラは男の子だと思っていたが、城のオブジェに登る時、上着の裾を広げて可愛らしいカーテシーを見せてくれたので、女の子である事がわかった。

言われてみたら、アキラは繊細な作業が上手だったし、笑顔がとても可愛らしいし、声も柔らかくて優しい。

(アキラは素晴らしい小さなレディだわ。こちらは髪の長さも、着る服も自由だから、注意して間違えないようにしないとね!)

身も心も弾みながらアーシャはそう心に刻んだ。



自分の実力以上に高く跳べると言うのは、想像以上に刺激的な体験だった。

目に見えぬ何かに、空中に引っ張り上げられるような、不思議な感覚が楽しい。

ただ弾むだけでも十分に楽しいのに、アキラと手を繋いで跳んだり、尖塔を模した空気の入った柱に跳び付いたり、お城を模したオブジェに各々が格好良いと思うポーズを取りながら飛び込んだり、柔らかい『すりべだい』に大きく弾みながら飛び込んだりと、いろんな遊び方があるのだ。


(これは物凄い全身運動!!)

息切れもするし、足はガクガクとしてきたし、体も熱い。

しかし愉快過ぎてやめられない。

こんな前向きに体を鍛えられるなんて、とんでもない発想と工夫が詰め込まれた施設だ。



そうやって体力的には限界なのに、面白くて止められない。

お腹が苦しいのに笑うのを止められない。

そんな時、バニタロに騎士の如く跨ったモモタロが現れたのだ。



バニタロは少しなら浮いて移動できるらしく、アーシャの顔の前で滞空している。

「援護って……どうしたの?」

そんな彼らに、ボヨンボヨンと弾みながら、アーシャは問いかける。

周りの子供達は奇声をあげまくっているので、声の音量に気を使う必要はない。


『ご婦人がぴんちで、このままだと主人ののぞみが叶わん!』

「ゼンの望み?」

とにかくモモタロは焦っている様子で、ゼンがいるであろう方向を一生懸命指差している。

アーシャは首を傾げつつだったが、中毒のようになって跳ねていた足を何とか止めて、一緒に弾んでいたアキラに向き直る。

「アキリャ、アーシャ、ゼン!」

親切にしてくれたアキラに色々と事情を説明したいが、アーシャの言語能力ではなかなか厳しい。

結局は名前の羅列しかできず、ゼンがいるであろう方向を指差してから、小さく手を振る。


「あーさ?」

アーシャは中座してしまう申し訳なさで、アキラにペコペコと頭を下げながら、布と空気で作られた小さな城を滑り降りる。

「おわっ!わっ!!」

そのままゼンの所に駆けつけようとしたのだが、突然重くなった足がもつれてしまった。

びっくりするほど体が重い。

いや、重く感じる。

空気の入った袋が体を舞い上がらせてくれることに、すっかり慣れてしまっていたようだ。


よろけて二、三歩歩いた挙句に前に倒れそうになったのだが、地面に倒れ込む寸前でグッと背中を引っ張られた。

「あーさ!」

勝手に途中退場してしまったアーシャを、アキラが追いかけてきてくれていたのだ。

アキラは自らもバランスを崩しながらも、しっかりとアーシャを引っ張り戻す。

「「わっ!!」」

否、引っ張り戻そうとしたのだが、やはり耐えきれず、二人揃って体勢を崩す。


「アーシャ!」

あわや二人で床に倒れる所で、今度は大きな手がアーシャたちを抱き止めた。

「ゼン!!」

「………っひ!」

アーシャは顔を輝かせるが、一緒に倒れかけたアキラは息を呑む。


「だいじょーぶか?」

彼女たちを受け止めたのは、恐るべき速さで駆けつけてきたゼンだ。

「ゼン、『あいがとぉ』!」

アーシャとアキラをひとまとめに抱っこしたゼンは、そっと二人を床に下ろしながら、真っ白な歯を見せて笑う。

「アキリャ、『あいがとぉ』!」

硬直してしまっているアキラにも、アーシャはお礼を言う。

感謝を込めて彼女の手を握ると、全身に入っていた力が緩む。


「………ママ」

微かに微笑んだアキラは、ふと、先ほどまでゼンが座っていた、四角い長椅子に目を向ける。

先程はちょこんと端っこに腰掛けていたゼンに目が行ってしまっていたが、長椅子には小柄な女性が横になっていた。

ゼンが背負っていた荷物に、アーシャが脱いだ服をかけた物を枕にして、ゼンの上着を毛布にしている。

その女性の頭の上でモモタロが跳ねている。

『アァシャ、このご婦人だ!はよう、はよう!!』

ノミのような見事な跳躍で、緊急事態を知らせている。


「回復が必要?」

アーシャはアキラと一緒に女性の元に駆けつける。

まだ少女のような白い顔は少し生気が足りないが、健康状態にそれ程緊急性はないように感じる。

『こっちじゃ!こっち!』

女性の首に触れて脈を看ようとしたアーシャの目の前を、モモタロとバニタロのコンビが走り抜け、彼女のお腹辺りで止まる。


「……えっ!」

タロタロコンビを視線で追いかけたアーシャは驚いて目を見開く。

何と彼女は妊娠していたのだ。

(まだ女の子かと思っていたら……実は大人なのかしら!?)

アーシャの目から見ると、とても若そうに、それこそ少女のように見えるのだが、実はそうではないのかもしれない。


『これじゃ、コレ!何度断ち切ってもしつこくつながってくる!』

———アシャ ノロイ トク

モモタロとバニタロは厳しい顔で、何もない空間を睨んでいる。

「ん〜〜〜?」

アーシャは眉を寄せて、彼らが見ている空間を見つめる。


(何かが迫ってきてる……?)

タロタロコンビが揃って警戒しているので、きっと何かあるのだろうと思って、アーシャは更にじっと目を凝らす。

「ん?」

すると光の加減で何とか見える蜘蛛の糸のような物が、微かに見えた気がした。

「んんん〜〜〜」

アーシャはさらに眉間に皺を寄せて、首を色んな角度に動かしつつ、『何か』がある所を見つめる。

蜘蛛の糸は光が当たるとキラリと輝くのだが、その『何か』は、当たった光を食っているように見えた。

ジワリジワリと光を食いながら、『何か』がこちらに向かって伸びているようだ。


(ここはゼンの神気に守られてて、よく見えない)

家でくつろいでいる時とは比べ物にならないほどゼンの神気は抑えられているが、それでもまがつ物は遮られてしまう。

アーシャは二、三歩前に出て、更に目を凝らす。

「っっっ!!」

そして息を呑んだ。


それは、光を吸い込む、闇で出来た糸のように見えた。

細い細い、まるで髪のように細い闇が、何本も寄り集まって、みずかられて組み合わさり、太い糸になっていく。

その様子を見ているだけで、全身の毛穴が逆立つような気持ち悪さが這い上がってくる。

(間違いない。『呪い』だ)

その悍ましさからアーシャは確信する。


(真っ直ぐに何かを目指している)

どこかに張られた、目に見えない糸をなぞる様に、漆黒の糸は真っ直ぐに伸びていく。

アーシャは糸が伸びていく方向を見る。

(……お腹……?)

糸は長椅子で横になっている女性を目指して伸びている気がする。

しかも方向的に、彼女の大きなお腹辺りだ。


アーシャは再び女性の近くに移動して目を凝らす。

呪いはピンからキリまであるが、目標に術者の魔力を縁付かせるという基本は変わらないはずだ。

(どこかに……あの呪いを呼び寄せる『土台』があるはず)

呪いの糸が繋がる前に、魔力が縁付いている所を浄化すれば、迫ってきている呪いは目標を失って返るはずだ。

そう思って目を凝らすが、ゼンが近くにいるとボヤけてしまう。


『アァシャ!ここ!ここ!わらわが切ったの、ここ!!』

女性を見つめるアーシャに、豆粒サイズのモモタロがぴょんぴょんと跳んで知らせる。

大きく出張ったお腹の頂点より少し下の方。

多分おへその少し下あたりだろうか。

そこにうっすらと黒い霧のような物が、辛うじて見える。


(呪いの根源にしてはちょっと薄すぎるような……)

そう思いながら、アーシャはその黒い霧に手をかざす。

嫌な感覚はするが、それだけである。

「ここじゃない」

そして顔を顰める。


———アァシャ ナカ

アーシャのかざした手の先を、バニタロが尻尾でチョンチョンと指し示す。

「中?」

———アレ ナカ イル コドモ ネラウ

聞き返すと、頷いたバニタロがチロチロと舌を出しながら答えた。

「……狙われているのは中の赤ちゃんなの……」

思わず嘆息が溢れてしまう。


アーシャの力は声にのせて届けるので、母体の中に入っている胎児には、声が遮られて力が届き難い。

大地の神気を取り込み、舞踏で補強して編み上げた万全の状態であれば、少しでも声が届けば浄化は可能だ。

しかしこの建物の中では大地の恩恵は受けられない。

(私だけの力だけでどこまでやれるか……)

アーシャは自分の顔が強張るのを感じる。


『アァシャ、何とかならんか!?わらわも頑張ったんじゃが……本体じゃないから……二回切って、力がもう限界で……』

次繋がったら、もう切れない。

そうモモタロが言外に告げる。

モモタロの本体はゼンの上着の中に入っているので、持ち主であるゼンが引き抜いて切れば何とかなるのだろうが、それをゼンに伝える手段がない。

(文字の紙を持ってくるんだった……)

今更後悔しても仕方ない。

それにゼンは呪いが見えないだろうから、切ってと伝えられても、実行は難しいだろう。


『主人はこのご婦人をヒゴしておる。主人の刀たるわらわは、そののぞみを叶えねば!』

モモタロは懸命に訴えてくる。

(かくなる上は………!!)

アーシャは不思議そうにこちらを見ているゼンの手を取った。

「ゼン!」

グイグイと引っ張ると、不思議そうな顔のままゼンは素直に移動してくる。

「アーシャ?」

お腹の前に連れて来たら、今度は彼の腰に飛びつく。

そして再びグイグイと、今度は下方向に引っ張る。


「えっと………すわるのか?」

かなり戸惑った顔をしながらも、ゼンはアーシャの意図を汲んで床の上に座ってくれる。

アーシャは何回も頷きながら、あぐらをかいたゼンの足の上に座る。

そして彼の膝の上に置かれた手を引っ張って、自分の体に巻きつける。

「ん?てか?」

再びアーシャがやりたいことが伝わったらしく、ゼンはアーシャの体の前で両手を交差させるようにして、抱きしめてくれる。


(よし!装備は完璧!!)

大地の神気と違って、ゼンの神気は上手く取り込めない。

釣瓶つるべでどんどん汲み上げられる水のような大地の神気に比べたら、地面に管を刺して吸い出すようにしてしか、体の中に入らないのだ。

ならば、全身くまなくゼンの神気を受け入れるように、ゼンを着る。

これしかない。


この完全装備でも少しづつしかゼンの恩恵には与れないが、自分だけの力であるより、ずっとマシだろう。

(よし!やったる!!)

アーシャは気合を入れて息を吸い込んだ。

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