9.聖女、垂直移動する

「……………ほぁ?」

体に振動を感じて目を開けたアーシャは、自分の現状がわからなかった。

「あ、おこしたか」

目をこすりながら顔を上げると、ゼンが少し申し訳なさそうな顔で覗き込んでいる。


少しの間、アーシャはゼンの顔をぼんやり見つめていたが、ハッと寝る前の記憶が蘇る。

「…………あ、ば、『ばしゅ』……!!」

慌てて周りを見るが、既に『ばす』を降りてしまったらしい。

『よう寝ておったぞ!』

———ヨク ネル コドモ オオキイ ナル

横抱きにされたアーシャのお腹の上には『もちもち』がのっていて、そこからバニタロが顔を出し、その頭にもたれるようにして、モモタロが座っている。

二人ともアーシャよりずっと小さいのに、親のような顔で、微笑ましそうに見守っている。


少しだけと目を閉じたのに、しっかり熟睡してしまっていたようだ。

(『ばす』から下りた事にも気がつかないなんて)

あっという間に終わってしまった『ばす』体験に俯くアーシャの顔に、影が差す。

「?」

周りに障害物もないのに、なぜ急に陽光が遮られたのかと、アーシャは顔を上げる。

「………!!!」

そしてアーシャは息を呑んだ。

少し先に建つ、巨大な建造物に、その時気がついたのだ。


『それ』は、まだそれ程近いわけでもないのに、もうすぐ南中を迎える、高い位置にある太陽を遮るほどの大きさがある。

「お…王宮……!?」

あまりの巨大さにアーシャは目を見開いた。

ちょっとした山くらいの大きさがある。


その高さは要塞を囲む防壁よりも高く、緩やかな曲線を描く建物の果ては見えない。

面積も高さも、今まで見たことがないほど巨大な建物だ。

贅の限りを尽くした、権力の象徴である王宮ですら、こんなに大きくはなかったはずだ。

(この国はすごく豊かだから、王宮もそれに応じて巨大さなのね……!?)

アーシャはそんな解釈をして、一人納得する。


ゼンはアーシャを抱っこしたまま、ズンズンとその巨大な建物に近づいていく。

(……でも、綺麗だけど、ちょっと飾り気がなさすぎるような……?)

建物の細部がしっかりと見えるようになってきてから、アーシャは首を傾げる。

入口と思われる場所には立派なひさしと柱が立っているし、巨大な壁は白と薄紅の色が塗られ、華やかに彩られている。

しかしそのどれも、形がシンプルすぎる。

彫刻が入っているとか、複雑な紋様が描かれているとか、飾りがついているとかは全くない。


(ちょっと……王宮は嫌だなぁ)

近づくにつれ、アーシャの心臓は嫌な音を立てるようになる。

ゼンが一緒でも、王宮には嫌な思い出しかないので、ついつい腰が引けてしまう。

「アーシャ、えと……しょ・ぴ・ん・ぐ・も・る……?」

そんなアーシャに、ゼンが指差して教えてくれる。

「『しょびぐもりゅ』?」

この国の王宮の名称は長いようだ。


『アァシャ、ここはな、店のしゅーごーたいじゃ。食べ物、おもちゃ、服やそーしょくひん、たくさんの店がつまっておるぞ!』

えへんえへんと胸を張りながらモモタロが教えてくれる。

「………お店なの?こんなに大きいのが?」

驚いてそう聞くと、モモタロは更に胸を張る。

『たっくさん店が詰まってるから、おっきいのじゃ。その数、十や二十を越えるぞ!』

アーシャは目を丸くして目の前の巨大な建物を見る。


「『しょびんもりゅ』………」

呟いた後に、思わず、大きなため息が出てしまう。

アーシャの知っている『店』とスケールが違い過ぎる。

(『すーぱー』もマーケットをまとめた感じだったよね。何が違うんだろ?……確実に大きさは違うけど……)

『すーぱー』も凄い規模だと思っていたが、目の前の建物はスケールが違い過ぎる。

見上げる首が痛くなってしまいそうだ。


「もぉ・る」

そんな事を考えていると、ゼンが建物を指さして、もう一度言う。

「『もぉりゅ』?」

アーシャが復唱すると、ゼンはウンウンと大きく頷く。

どうやら『しょびんもる』の愛称は『もぉる』らしい。

まるで人間のような扱いだ。


アーシャはちょっと笑ってしまいながら、周りを見る。

(確かに王宮とは全然違うわ)

よく見かける、硝子張りの二重扉の前には、衛士などいない。

買ったものを鉄の荷車に乗せて笑い合う夫婦や、走る子供を捕まえようとしている親などがいて、扉の前は公園のような穏やかな雰囲気だ。

(大きい建物なのに、全然圧迫感がない)

はっきり言うと、アーシャは巨大な建物は好きじゃない。

王宮、貴族の屋敷、教会そして要塞。

どれも冷たくアーシャを見下ろしてくる場所だった

それに対し、ここは柔らかで、明るく憩いの場所のような空気なのだ。


「………………ほぁ…………」

すれ違う人々の楽しそうな空気に頬を緩ませるアーシャだったが、二重の硝子扉を超えて室内に入ったら、またため息が出てしまった。

室内に入ったとは思えないほどの明るさに、本当に天井がついているのかと、見上げたのだが、その天井が驚くほど高かったのだ。

天井が高いことには、何となく想像がついていたのだが、思った以上に高かった。

アーシャの国の大聖堂にも負けない高さだ。

しかし高さ以外は全く大聖堂と空気が違う。


数多くの石工、人足、芸術家、魔法使いなどが作った大聖堂は、それはそれは凄い物だった。

屋根に登れば天に届くのではないかと思うほど高い天井には、細やかな彫刻と神話が描かれ、建物に入るだけで圧倒された。

神をどれだけ崇めているのか、どれだけ信仰が尊い物なのかを、その姿だけで語りかけてくるような、荘厳で、上から迫ってくるような空気があった。


しかしここはどうだろう。

同じくらい高い天井なのに、何かを訴えかけてくるような圧力は全くない。

それどころか、まだ外にいるのではないか錯覚してしまうほどの開放感がある。

風雨を凌ぐための屋根や壁はあるのだが、天井には太陽の代わりのような明かりが煌々と輝いており、天井まで吹き抜ける空間は広々としていて、その開放感から室内であることを忘れてしまいそうだ。


「………マーケットだわ……」

上を見て目を丸くしていたアーシャは、周囲に視線を戻して、呆然として呟く。

事前にモモタロが教えてくれていなかったら、理解できなかっただろう。

大人が五人寝そべっても余るほど広い通路の左右に、沢山の店が並んでいる。

通常はテントや建物などに入って、それぞれ独立しているはずの店が、すべて同じ建物の中に、空間を区切って存在しているのだ。


愛らしい女性用と思われる服を並べた店、活動的なズボンなどを吊り下げた店、沢山の棚や椅子を並べた店、瓶に入った液体を沢山置いているのは薬屋だろうか。

奥の方には『スーパー』に似た店もあるし、いつぞやの食べる宝石デザートを並べた店もある。

(変な生き物の像がある!)

色とりどりの箱を置いた店の前には、顔の真ん中から長い管が生えて、頭の両側に団扇のような物を付けた、四つ足の像がある。

姿も奇妙だが、色もオレンジ色と生物ではあり得ない色をしている。

もしかしたら、この国に住んでいるモンスターなのかもしれない。


歩いても歩いても店は途切れず、果てが見えない。

(すっごい!!みんなで相談して一つの建物にしたのかしら!?一度に沢山の店を回れるし、雨の日も濡れずに歩き回れるなんて素敵!!ぐるっと歩くだけで欲しいものが絶対見つかるわ!!ううん。欲しいものが見つからなくても歩くだけで絶対楽しい!!)

立ち並ぶ店を見るだけで、アーシャは心が弾む。

「わぁ……わぁぁぁ……」

ゼンの歩みに従って、一軒一軒店を覗いては、歓声を上げてしまう。

きちんと店の壁と入り口を作っている店もあれば、左右の壁だけで、前には何も遮るものがない店もある。

硝子の箱に色々な物を入れて飾り、それを壁のようにしている、お洒落な店もある。


(売り物をあんなに無防備に店先に並べて大丈夫なのかしら!?店が建物の中に入っているから盗人が物をとっていく心配がないのかしら!?)

通路近くに卓を出して、その上に色とりどりの服を畳んで並べていたり、キラキラと輝く愛らしい小物を、簡単に手に取れる所にぶら下げていたり。

見ている分には開放的で気持ち良いが、ついつい心配になってしまう。

泥棒なんかが来たら根こそぎ持っていってしまいそうだ。

(まさか……この国には泥棒がいないのかしら……?)

そんな疑いまで持ってしまう。


アーシャが夢中で周りを見ていたら、ある壁の前で、ゼンが立ち止まる。

「?」

何かと思ったら、彼は壁にかかった、色とりどりの板を見ている。

その板には大きな枠が二つ書いてあって、枠の形にしたがって、可愛らしい色で描かれた四角が並んでいる。

これは何だろうと、アーシャも首を傾げつつ、板をしっかりと見つめようとした。

「ふわっ!?」

しかし、突然、その隣の壁だと思っていた所が動き始めて、飛び上がった。


ゴトンと壁の中から音が聞こえたかと思ったら、真ん中にあった切れ目から、壁が左右に割れる。

(か、隠し扉!?隠し部屋だ!!)

左右に割れて開いた壁の先には、四角い空間が広がっていた。

家具らしき物は何も無く、突き当たりの壁が一面鏡になっている。

そこに小さな子供を連れた家族が入っていき、壁が閉まる。


(大きな鏡があると言うことは、身だしなみを整えるための部屋なのかしら……?)

音もなく閉まった壁を見て、アーシャは首を傾げる。

もうこの際、どうやって壁が開いたのか、閉じたのかなどは考えない。

この国の扉は、前に立つと勝手に開くし、勝手に閉まる特性があるのだ。

そう納得するしかない。


程なく、明るい笑い声を上げながら、三人組の男の子たちがやってきて、ふざけ合いながら、壁にある三角が描かれたボタンを、競い合うように押す。

位置から言って、このボタンが壁を開くスイッチかもしれない。

「あ……」

しかし、その部屋には、今、家族連れが入っている。

身だしなみを整えている最中に部屋を開かれたら、困るのではないだろうか。

止めるべきかとアーシャは迷う。


「……………?」

しかしボタンを押しても壁は開かない。

(あれは壁を開けるボタンじゃなかったのかしら?そうよね。中で身だしなみを整えている最中に開けられたら困るもんね。じゃあ何のためのボタンなのかしら)

アーシャは首を傾げる。


「アーシャ、おまたせ」

じっくりと板を見ていたゼンが、そう言って、ポンポンとアーシャの背中を叩いて、歩き出す。

「???」

そのままどこかに行くのかと思っていたら、ゼンは三人組の男の子達の後ろに立った。

「?????」

アーシャは訳がわからなくて、ゼンの頭の上から爪先のまで見つめる。


黒い髪はそれぞれの毛先が好きな方向に流れているが、彼の柔軟な性格を表しているようで、とても似合っている。

意志の強そうな眉も、優しい黒い目も、穏やかに微笑んでいる唇も、いつも通りだ。

黒い上着に汚れはないし、ズボンも然りだ。

靴は少々くたびれているが、見苦しくはない。

全く身だしなみを整える必要のない、いつも通りのゼンだ。


(じゃあ私がおかしいの?)

頭を触ったり、顔を触ったりするが、よくわからない。

そんな風にアーシャが悩んでいると、壁が再び開いた。

「ほへっっ!?」

その瞬間、アーシャの口からは驚いた声が出てしまった。


何と開いた先の小部屋には、誰も居なかったのだ。

先程の家族連れの姿は、影も形もない。

何もない四角い空間が、『家族連れなんて初めからいませんでした』とでも言いうように、白々しく広がっている。


人が消える呪われた空間。

ミミック。

強制転送トラップ。

そんな恐ろしい単語たちがアーシャの脳裏をよぎる。

「ゼン!ゼン!」

アーシャは声を上げるが、ゼンは不思議そうな顔をしながらも、足を止めない。

ゼンは人が消えた所を見ていない。

この空間が危ないことを知っているのはアーシャだけだ。


(私がゼンを守らなくっちゃ!!)

アーシャは必死の思いで、扉の入り口に手を伸ばす。

「ふんぬっ!!」

そして両手で部屋への入り口に掴まる。

アーシャはゼンに抱っこされていて、彼の足を止めることはできないが、扉が閉まるのを妨害することはできるはずだ。

身だしなみを整えるにしても、服を脱ぐわけではないだろうから、扉を閉める必要はない。

こうやってアーシャが押さえておけば良いのだ。


「こーら、アーシャ、あぶない」

しかしそんなアーシャの渾身の妨害は、守るべきゼン自身の手によってあっさり回収される。

決死の思いで伸ばした手は、ゼンの人差し指で、ツルンと剥がされ、そのまま手を握られて、小部屋の奥まで進んでしまう。

「……………!!!」

もう一度手を伸ばそうと体を捻った時には、扉が閉まってしまっていた

愕然としたアーシャは、咄嗟に声が出せない。


「ぜ…………」

ここは危険だとアーシャがゼンに訴えようと口を開けた瞬間。

グッと体に圧力がかかるのを感じた。

(上から押さえられて……いや、下から引っ張られている!?)

体にかかっている力自体は小さいが、これまで感じたことのない感覚にアーシャの不安は迫り上がってくる。

敵の姿は見えない。

何処からか、この空間全体に干渉されているのだろうか。

(何をされるのかも、反撃の方法が全くわからない……!)

何が起きても、こんな小さな体ではゼンを守れない。


アーシャは『もちもち』が入っている肩掛けから、錫杖を引き抜く。

地中に大きな空洞があるのか、この建物の中では大地からの力がまるで受けられそうにない。

しかし神具をもって勧請すれば何とか引っ張り出せるかもしれない。

『アァシャ?『えすかれたー』の中で騒いだらめーわくだぞ?』

そんな緊迫したアーシャとは裏腹に、『もちもち』の上で、のんびりとゴロゴロしながらモモタロが首を傾げる。

———コレ 『えれべーた』。『えすかれーた』 カイダン

同じく首だけ出してリラックスしているバニタロが、モモタロに口を挟む。


『う……うるさいな!どっちも似たような物じゃ!!』

———ハコ 『えれべーた』。カイダン 『えすかれーた』。ゼンゼン チガウ

『うるさい!うるさい!!うるさーーーい!!』

「???」

そのまま二人は喧嘩を始めてしまったが、アーシャには意味がわからない。

何となくわかるのは、タロタロ二人組の反応から、ここは危険な場所ではないと言うことだけだ。


アーシャの謎が解明される前に、小部屋の扉は開かれた。

(良かった。何事も起きなくて)

外の光が見えると共に、アーシャはホッと息を吐いて、緊張を解く。

……そしてそのまま息を吸うのを忘れて、固まってしまった。


「え?え?えええ?」

明らかに小部屋に入る前と、入った後で景色が違う。

そこには広い通路があったはずなのに、通路の真ん中の空間がパックリと無くなって、大穴ができて、その穴の周りに高い硝子の柵が張り巡らされている。

通路の左右にあった店も、先程まであった店とは異なっている。


(ここは………?)

とりあえず硝子の柵に仕切られた、大穴が気になる。

大穴を見に行きたいと思った心を察したように、ゼンが床の上に下ろしてくれたので、アーシャはガラスの柵に走り寄る。

「ふあぁぁぁぁ〜〜〜!」

硝子の下を覗き込むと、下を歩く人々が、小さく見える。

自分がかなり高い所にいることがわかって、アーシャは目を見張る。

「あ!」

そして眼下の景色を見てアーシャは気がつく。


(あのお店も、あのお店もさっき見た!!…………ここはさっきの場所の真上!?)

アーシャは硝子に張り付いて、下の様子を確認する。

(そう言えば……今になって考えると、上に引っ張られるような感覚だったような気もするわ)

先程体に体に感じた力を思い出しながら、ウンウンとアーシャは考える。


(となると……あの小部屋が丸ごと上下に移動している……ってこと……?)

そんな馬鹿な、と、アーシャは自分で弾き出した可能性を首を振って否定する。

上の階に行きたいなら階段を登れば良い。

小部屋を上下に動かすなんて、どれだけの力が必要になるか。

働き者の巨人族を、複数人雇っても動かせるか怪しい。

(部屋が動くなんて馬鹿馬鹿しい。………多分、馬鹿馬鹿しい……?馬鹿馬鹿しい……よね?)

しかし考えれば考えるほど、それが正解である気がするのだ。


「アーシャ」

思い悩むアーシャに向かって、ゼンが大きな手を差し出す。

ゼンはいつものように朗らかに笑っている。

彼にとっては、あの小部屋で別の場所に移動するのは、極々当然のことのようだ。

(…………………。ま、いっか。きっとあの小部屋は不思議な力で動いているのよ)

ゼンの笑顔を見ていたら、どうやって小部屋が動いたかなんて、どうでも良くなってしまう。


(そう!ここは不思議なことが当たり前の国なんだもん!危険さえなければ、何でも受け入れちゃわないと!ここでは生きていけないわ)

あの壁の中の小部屋は、扉が閉まると上の階に移動する。

それがここでは常識で、騒ぐ方が非常識な事なのだ。


次からは、あの壁の小部屋にも『当たり前ですよ』って顔で乗ってみせる。

あんまり驚きまくっていては、思慮が浅いとか、田舎者と思われてしまうかもしれない。

(いや、私は学がないし、田舎者以下なんだけど)

アーシャが大騒ぎばかりしていたら、ゼンまで田舎者と周りに勘違いされかねない。

(せめて外ではレディでいなくちゃね)

アーシャは歩く毎に揺れる、愛らしい自分のスカートを見ながら、そんな事を思う。

そして出来るだけ、しゃなりしゃなりと、おしゃれに歩いてみる。


「アーシャ、ついたぞ」

そんなアーシャの頭を撫でて、ゼンがある店を指差す。

「ふ?」

アーシャは揺れるスカートから顔を上げ……

「ふぉぉぉぉおおおお!?」

驚きの雄叫びを上げてしまった。


指差された空間は、強烈な原色が溢れていた。

赤、青と黄色の、鮮やかすぎる色の巨大な骨組み。

『水です』とでも言いたげな顔で、その骨組みの中に溢れる、色とりどりの玉、玉、玉。

子供達が跳ねるたびにブニャブニャと揺れる、奇妙な物体。

真ん中に開いた穴に子供達が入り、ものすごい笑い声を上げながら回転させる、巨大な円柱形。


それらは全く理解できないし、初めて見るものばかりだ。

しかしこれだけはわかる。

『ここは楽しい場所に違いない』という事だ。

甲高い歓声や、笑い声が響き、どの子供も弾けるように笑っている様子から、間違いない。


外では物知り顔の落ち着きのあるレディであろうとする決心は一瞬で蒸発した。

「ゼン!ゼン!!」

繋いでいた手をブンブンと振って、目の前のすごい光景を指差す。

ゼンはそんなアーシャに大きく頷いて笑う。

そしてアーシャの手を引いて、ワンダーランドへの門をくぐった。

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