18.長男、縁を結ぶ(前)

「『神霊は大地の気を自由に取り込み、人間に分け与えることができる。逆に人間の氣を吸い上げることもできる』あのお嬢ちゃんに当てはまるんじゃないかい?」

そう言われた瞬間、譲は否定することができなかった。


確かに譲の目に映ったアーシャは普通の人間ではなかったのだ。

しっかり視ようとすると輝いてぼやける輪郭。

そして迂闊に踏み込んだら、こちらが取り込まれてしまいそうになる、恐ろしいまでに情報量を秘めた内部。

藤護の禁域に落ちていたことも含め、ただの人間ではあり得なかった。


怪しげな子供の形をした『何か』。

そう扱わなかったのは禅一を救わんと、ガニ股で駆け出す姿が、あまりに間抜けで、必死だったからだ。

あの姿が人間ではないなんて、譲にはとても思えなかった。

たとえ出自が怪しくても、強大な力を使いこなしても、人外としか思えない力を持っていても。

チビはあくまでも頭も体もひ弱な子供だった。


初めて見るものには興味津々だし、綺麗な服を着せれば喜びまわるし、腹の虫をしょっちゅう鳴かせているし、寝汚いし、些細なことでニヤニヤしている単純さだし、保護者が離れたらみっともないくらい泣くし。

どんなに冷たくしても、全くへこたれずに真っ直ぐに向かってくるし。

一番奥に隠れていなくてはいけない、小さくてひ弱なチビのくせに、禅一や譲のピンチには何をおいても駆けつけようとするし、他人の感情にも寄り添おうとする。


それなのに乾老人にアーシャが神霊であり、破滅をもたらす可能性があると言われた時、否定できなかった。

人ではあり得ない能力、その能力を使いこなせる知能、全ての抗体を持った特殊な肉体。

そのどれもがアーシャが人間でないことを示していた。

(……クソ……)

覚悟を問われた時、迷わなかった禅一とは違い、譲は揺らいでしまった。

それが腹立たしい。


「禅はチビ助が人間じゃねぇかもって思わねぇの?」

借りた道着を脱いで、元の服に着替えながら、譲は何気なさを装って禅一に聞いてみた。

「別に。アーシャはアーシャだろ」

禅一はあっさりとした回答を出し、借りた道着を畳む。

(コイツにとってはチビが神霊であろうと、人間だろうと関係ねぇんだろうなぁ)

少しばかり違うところがあるが、人の形をとって、人と同じように泣いたり笑ったりするんだから人間扱いで良しと簡単に判断しているのだろう。

その大雑把さが羨ましい。


「禅は神霊が……おそろしいとかは思わない?悪霊とは違って人間には絶対にどうにもできない存在だよ?」

『その体質、治したほうがいいよ!』と、問答無用で練習に巻き込まれた和泉は顔に疲れを滲ませながら、禅一に問う。

和泉は払い屋稼業をしている姉のそばにいるだけあって、人間が踏み込んではいけない領域も熟知している。


「そう言われてもな………敬うべき存在だとは思ってはいるけど……普通に生活していたら一生出会うことなんてないだろう?藤護のは別として」

そんな禅一の返答に、和泉は何とも言えない顔をしている。

全く存在を認識していないが、禅一は既に神霊に出会っているし、何なら、思いっきり縁を結んでいる。

『唯一懐いてくれたバニ太郎』と美しい記憶になっているウサギの真実を、進んで伝える気にならなかったし、事情を説明したところで禅一には見えないし感じないから意味がないと思っていたが、今後を考えると伝えておいたほうがいいのかもしれない。


「俺は出会うか出会わないかわからない存在より、あのじーさんの方が怖いな。隙がないし、片足で俺のことを投げるし、さっきなんか外側から俺の『氣』を動かしたぞ」

乾老人は自分の氣を放出して、ぶつける事によって禅一の氣を動かしたのだ。

師範を勤めていたのは義理の息子の千隼なのだが、乾老人も隠居がフラフラと出てきたというていで、弟子たちにからみ、見込みがありそうな人間へは特別な指導を行なっていた。

和泉寄りの体質の子供には、指導するふりで魔除けのような物を施したりもしていた。


「あの、体の中の空気が無理やり動かされる感じ、鳥肌立ったぞ。アーシャはこう……こっちの流れに逆らわない感じで動かしてくれたのに」

ブツブツ文句を言っている禅一だが、他人の体に氣を打ち込んで流れを変えるなんて、滅多にできる事ではないとわかっていない。

ましてや、他人の氣の流れを自然に変えるなんて、前代未聞だ。

「まぁ、お陰で何となく、体の中で動かすコツが掴めたような気はしたけど……」

たったそれだけの指導で、コツを掴む禅一も、そこそこ只者ではない。


禅一は着替えが終わると、いそいそと道場に戻る。

「ゼンッ!」

「アーシャ!」

そして運動したおかげで、頬をいかにも健康な色に染めて、両手を広げて走ってくるアーシャを、何の躊躇いもなく受け止めて抱き上げる。

神霊かもと言われた直後も、禅一は迷わずにアーシャに駆け寄って抱きしめた。

何を言われてもブレない、羨ましい図太さの神経だ。


「あれ?外に出るのが怖いのか?大丈夫。大丈夫。俺がいるからな」

道場から出ようとすると、震えて怖がるアーシャを、禅一は宝物のように懐に仕舞い込んで歩く。

そうやって禅一が抱き上げると、畏れ多い存在かもしれない小さな背中は、ただの子供の物になる。

非日常のものが、あっさりと現実に引き戻される。

禅一が当たり前のように、引き戻してしまう。

そうすると内心怯んでしまった自分が馬鹿馬鹿しくなってしまうのだ。


「俺もアーシャちゃんは神霊じゃないと思うよ。……ただの人間ではないとも思うけど」

そんな譲の心うちを読んだように、和泉が声をかけてくる。

「根拠は?」

「あらゆる神社からお断りされる俺に、全く拒否感を持っていない」

和泉は自分を指さして、おかしそうに笑う。

失礼なことに、そう言われて、譲は物凄く納得してしまった。


「あの子、良い子だね。俺と一緒になってキャーキャー叫んでたのに、あの先生たちが消耗し始めたら迷いもせずに飛び出して。………俺、腰を抜かしてるだけしかで、ホント情けなくって……」

和泉は笑いながらも、肩を落とす。

「和泉は虚弱体質なんだから仕方ないだろ」

禅一が離れてからは、悪霊の住み心地満点の高級タワマンのようになってしまい、ずっと寝込み続けた和泉だ。

筋肉も贅肉もほとんど付けられず、体力も小学生の頃から増すどころか減っているくらいだ。

とても戦える体ではない。

道場でも最後はほぼ畳と仲良くなっていた。


「そんな貴方に、当道場を!健康な体づくりを、お手伝いいたします」

そう言って譲たちの会話に割り込んだのは、客間で待ち構えていた乾老人だ。

手には二つ折りのチラシを持っている。

「……個人経営の弱小道場のくせに、四面構成のフルカラーチラシかよ」

譲は和泉に向かって差し出されたチラシを横から奪いながら、正直な感想を述べる。

「資金は他所で稼いでるんでね」

乾老人は譲の嫌味など気にも留めない。


「篠崎、お前、赤ちゃんより昼寝してどうするんだ。夜に寝れなくなるぞ」

「…………あぁ?…………あれ?」

客間では、ぐっすりと寝ていた篠崎が、禅一に起こされていた。

容赦なく、布団がわりにしていた禅一の上着を、剥ぎ取られている。


驚いたことに、昼から全く起きることなく、篠崎は眠り続けていたらしい。

全くの他人の家でリラックスし過ぎだ。

「あ、そっか。肉パのあと眠くなって……ふぁぁぁ〜〜〜良く寝た。今日の睡眠ノルマこなしちゃったわ〜〜〜」

「睡眠をノルマにするな。ちゃんと今日の夜も寝ろよ」

「夜は創作の神が降りてきやすいからな〜〜〜。ふあぁぁぁ〜〜〜どこで寝てもヒゲの心配をしなくて良いから、永久脱毛はマジ有用〜〜〜。アーシャちゃんオハヨ〜〜〜」

どんな人の家でも篠崎は篠崎だ。

大欠伸をしながら、当たり前みたいな顔で、禅一からアーシャを取り上げて、頭に頬を擦り寄せている。


「よし、お嬢ちゃんはウチの物凄く優秀な孫に任せて、お兄ちゃんたちは、こっちでちょっと話をしようか」

乾老人にそう言われて、譲たちはテーブルにつく。

篠崎は『お兄ちゃん』の自覚がないのか、興味がない話に参加したくないのか、スルーしてアーシャと一緒に濡れ縁の前に陣取ってしまう。



「さて、こちらは通常の道場の案内だ。これは基本的に息子が取り仕切ってくれてる」

テーブルについた乾老人は、先ほど渡したチラシを指差す。

個人経営の道場のチラシとは思えない、素人仕事感がないデザインで、練習内容や月会費と道着の値段や注文方法などが、分かり易く書いてある。

「ふふふ、良い出来栄えだろ?このデザインは咲子ちゃんがやってくれたんだ。SNSも使い熟して色々発信してくれているんだよ」

さりげなく孫上げを入れてくる。

老人会とかで孫自慢をしまくるタイプだ。


「入会費とか無いんだな。月謝も大人三千円、子供二千円って安くないか?」

意外と禅一がきちんと見ている。

「儲けるための道場じゃ無いんでね。公式の練習日は週に一回、土曜日のみ。練習内容は今日見た通りだよ。これ、和泉くんに強くお勧めしたいね。その体質を改善するためにも体力は必須だよ」

静かにチラシを覗き込んでいた和泉は、突然の指名にびっくりして目を見開く。


「え………あ、あの……お、俺の、た、体質、体質を……し、知って、知ってる……」

和泉なりに頑張って喋ろうとしているが、いかんせん、初対面相手は難しい。

「うん。まぁ、酷い物を背負わせられてるね」

まるで全ての事情を知っているかのように、乾老人は和泉を見ている。

「よっぽど運が良かったのか、周りが君を守ろうと動いてくれたのか。……今、五体満足で生きているのが不思議なくらいの状態だよ」

視力を失ったという乾老人の左目が、和泉を捉えている。

確かに老人の左目の中には、見てはならぬ者の気配が微かにある。


「あ、お、俺の、体質が、な、なお、治せる、か、可能性が……?」

「ん〜〜〜、俺の力じゃ無理だね。ネズミがネコに挑み掛かるようなもんだ」

長年の悩みである体質が改善するのでは無いかと、小さな黒目を輝かせた和泉だったが、乾老人はあっさりと体の前で手を振る。

「ただ治せる可能性がある人間は知ってるよ」

ガックリと項垂れた和泉は、その一言で、再び目を輝かせる。

その和泉に微笑みかけながら、乾老人は手で銃の形を作って、その人差し指を禅一と譲に向ける。


「「……………は?」」

指差された譲と禅一はお互いに顔を見合わせてから、乾老人を見る。

「俺はネズミだからネコには勝てない。しかしネコに勝つ方法は知ってる。だからそれをヤマネコと狼に教えれば良いわけだ」

三人の視線を受けた乾老人は何とも清々しい顔で笑ってみせる。


もう一度禅一と譲は顔を見合わせる。

「ヤマネコ……ぷぷっ」

そして禅一が吹き出してしまう。

乾老人は『同等の力だが似て非なる性質』の例として、イエネコに対するヤマネコを出しているのに、禅一にとっては『譲=確かにヤマネコっぽい』となったらしい。

「黙れ、脳筋シベリアンハスキー」

譲は禅一の椅子を蹴り飛ばす。


「浄化を施される側も、精神の器たる肉体に、そこそこの強度が必要になるんだよね。月水金も夕方から自主練用に道場を開放してるから、君は可能な限りいらっしゃい」

「えっ……あ、あっ、あのっ………」

既に入会が決定しているような乾老人の口ぶりに、和泉は焦っている。

和泉が一人で新しいコミュニティに入っていけるのは、オンラインの世界で、且つコミュニケーション手段が文字に限るという、狭き門なのだ。


「待ってください。和泉に突然の道場デビューは無理です」

そう言って水を差したのは禅一だ。

「今日の様子を見ていたでしょう。ほぼ畳に打ち上がっていました。和泉はまずは毎朝の散歩とラジオ体操から始めるべきです」

禅一がはっきりと言い切る。


「………そんな高齢者向けのトレーニングみたいな内容から始めるのかい?」

「正確に言うなら後期高齢者並みに注意深く見守りながら、負荷をかけていくべきです。和泉の虚弱さは、常に想定の斜め下をいきます。多分、明日は全身筋肉痛で起き上がれないはずです」

あまりに負荷のないトレーニングを提案された乾老人が、信じられないという反応すると、禅一は更にはっきりと言い切る。

「禅……庇ってくれるのは嬉しいけど、方向性がおかしいよ……」

強制入会を断ってくれるのは有り難いのだが、散々な言われように、和泉が肩を落としている。


禅一は真っ直ぐに背筋を伸ばして乾老人を見る。

「代わりというわけではありませんが、俺は直ぐにでもハードな修行ができるので、よろしくお願いします」

そして深々と頭を下げる。

先程、怒りをぶつけてきた禅一が、あっさりと頭を下げたことが、意外だったらしく、乾老人は俄かに目を見開く。

「………君からそう言われるとは思わなかったよ」

乾老人の言葉に、譲も内心頷いた。

アーシャの事を『とんでもない破滅をもたらす』かもしれない存在などと言った相手を、禅一があっさりと許し、あまつさえ教えを乞うとは思えなかったのだ。


「先ほどは苛立ってしまって、すみません。アーシャは何であろうとアーシャです。神でも仏でも天使でも俺の妹です。そう決めています。『とんでもない破滅』とやらは回避するように全力を尽くしますし、万が一食い止められなかった時は、俺の責任と受け入れられます」

禅一の言葉に、乾老人の目はますます見開かれる。


キッパリと言い放った禅一は、乾老人の反応を待っていたが、返答がないので数秒してから首を傾げた。

「求められていた回答と違いましたか?貴方はアーシャに何かを視たから、土壇場で俺がアーシャを拒絶したりしないように、前もって腹を括らせようと、あんな事を言ったのかと思ったんで、こちらの考えを伝えてみたんですが」

その言葉を聞いた乾老人は息を大きく吐き出しながら、椅子の背もたれに体を預ける。

「……参ったね。機微に疎い子かと思いきや……」

そして空気を吐き出すついでのように、小さく呟く。


「嫌な役回りは老い先短い奴がやるべきだと思ったんだが……あそこまで怒っていたのに、どうしてそんな風に思い直したのか、知りたいところだね」

飄々としている仮面が少しばかり剥がれた乾老人は、テーブルに肘をつきながら尋ねる。


「冷静になって見てみたら、貴方自身はアーシャを全く遠ざけていないことに気がつきました。道場でも普通に話しかけて指導も行ってましたし。何より大切にしているお孫さんたちがアーシャに接触するのを、全く止めない。本気で破滅を警戒しているならあり得ない事です」

禅一はそう答えながら後を振り向く。

どうやらアーシャからの視線を感じたらしい。

目があって嬉しそうに手を振るアーシャに、禅一は嬉しそうに手を振りかえす。


「まぁ……ウチの孫ちゃんたちはジジが何言っても我が道を邁進するから、言わないだけなんだけどね……」

無表情ながら、生き生きしている峰子を見ながら、乾老人は小声で訂正する。

確かに峰子は誰かの言葉で考えを曲げると思えない。


「じゃあ二人は道場に通うということで良いかな?」

乾老人は禅一と譲を見ながら確認する。

「あ、俺はパス!」

それに譲は速攻で断りを入れる。

「これからのことを考えると、色々と知っておいた方がいいと思うよ?」

譲は当然来るだろうと思っていたらしい乾老人は、少し戸惑っている。

「二人揃って同じ事を学ぶなんて非効率的だろ。古臭い道場とか肌に合わねぇし。俺は俺のやり方でやる」

そんなフワッとした主張に、乾老人は何か言おうと口を開く。


「譲は神事に関する修練を行わないっていうのが、俺が当主代理をやる条件なんです」

それより早く禅一が口を挟む。

当主代理を引き受けるのは双子のうち一人だけ。

それが禅一が出した唯一の条件だった。

禅一が死ねば、譲には引き継がず、元々の予定であった分家の末子を養子に取らせる。

人の気も知らないで、勝手にまとめてしまった話だ。


『そんな口約束、お前が死んだら、いくらでも破られる』

そう譲は言いつづけているが、その約束に則り、譲には何の訓練もされていない。

訓練されない現状に譲が何も文句を言わなかったのは、神事に関する知識は自力で調べられるし、修行も覗き見はできるからだ。

知らないそぶりでいくらでも学ぶ手段はある。

そして何より、守られるか不透明な口約束と、禅一が死ねば無力な譲が残ってしまうという状況は、禅一をこの現世に繋ぎ止める良い鎖となった。


「そういう事。ここで教える内容も、結局は藤護の流れをくんでるんだろ?俺、余計な知識を入れて藤護に縛られたくねぇし」

譲は軽薄な口ぶりで、手をひらひらとさせながらそう言う。

藤護には関わらない。

そうはっきりと言動に表すことが重要だ。


乾老人が少し眉を顰めた時だった。

「あわっ………!!ユッキー!ユッキー!!えいにゅみぃ!にゅいなぁ!にゅいなぁ!!」

先程まで上機嫌で大人しかったアーシャが大声を上げた。

「アーシャちゃん!」

そして何故か篠崎に飛びかかろうとして、峰子に止められている。


「何だぁ?餓鬼らしく食い物の取り合いか?」

譲はそう言ってみたが、どうも『取り合っている』という感じではない。

アワアワとアーシャは阿波踊りのように手をわちゃわちゃと上げながら騒いでいるが、篠崎に対する悪意は見えない。

「ユッキ〜〜〜!」

むしろ何かをボリボリと食べている篠崎を心配している感がある。


「可愛いウサちゃんを食べちゃダメってことか……?」

「その図体で『ウサちゃん』はやめろ」

首を傾げる禅一に、譲は間髪入れずにツッコミを入れる。


「ねぇ……あの子、思いっきり、アレと話してるよね?」

じっと見ていた和泉が、アーシャが肩からかけている網バッグを指差す。

「……話してるな」

確かにアーシャはフグのぬいぐるみから突き出した蛇に、何かを聞いて、何か言葉を返している。

譲たちには全く聞こえない声を、あのチビ助はしっかりと聞いている。


「譲は神様の声って聞いたことある?」

「夢枕でならあるけど、現実ではねぇな」

「……………話してるよね」

「……………話してるな」

和泉と譲は顔を見合わせる。


「………ごめん、もしかしたら俺を嫌わない、珍しいタイプの神霊かも」

和泉が途端に自信なさげに、そう前言撤回をし始める。

「まぁ………ただの人間ではないことは確実だけど………あんな間抜けな神霊はいねぇだろ」

そう言う譲の目の前で、アーシャは何故か急に篠崎を拝み始めて、散々戸惑わせ、トドメとばかりに大きな音を立てて床に衝突し、不恰好な土下座を披露して篠崎に悲鳴を上げさせている。


「アーシャちゃん!アーシャちゃん!よくわかんないけど、顔を上げて〜〜〜!幼児に土下座させてる俺が超絶悪人に見えちゃう絵面だよ〜〜〜!!」

篠崎の半泣きの声に、禅一が立ち上がり、会談は一旦中止となった。


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