13.聖女、恐怖の風習を知る
起き上がったアーシャは、傍に置かれていたバニタロ用の袋についている、錫杖入れに『かたな』も入れた。
(よし!準備完了!)
それをしっかりと肩から掛けて、アーシャは胸を張る。
「…………?」
そしてバニタロと『かたな』を連れて、いざ出陣と周りを見るのだが、扉がない。
「???」
全方向が壁だ。
(この部屋は窓から出入りするのかしら……?)
床からアーシャの身長くらいまでしかない小さな窓を見て、アーシャは首を傾げる。
かなり出入りに不便そうだ。
「あ………あの………そと?」
窓が開かないかなと押してみるアーシャに、イズミが遠慮がちに声をかけてくる。
何だろうと彼の方を振り向くと、彼はガラガラと壁を動かしている。
「ほあっ!!」
アーシャは驚いて声を上げる。
何と、ただの壁だと思っていたら、可動式の壁だったのだ。
よく見たら壁の下に、金属の溝が作ってある。
(隠し扉みたい!面白い!)
アーシャもイズミに駆け寄って、壁を動かしてみると、どのような構造になっているのか、小さな力で動くようになっている。
どんな仕掛けになっているのだろうと、少しの間、壁を動かして観察していたが、アーシャはハッとして、バニタロ入れた網の袋を見る。
「イジミ、イジミ、『これ』、『あいがとぉ』!」
アーシャはバニタロの入った袋をポンポンと叩いて、イズミにお礼を言う。
イズミに会ったら、一番にこの素敵な入れ物のお礼を言おうと思っていたのに、魅惑の肉祭りで吹っ飛んでしまっていた。
「あ、う、う、うん」
イズミはきょとんとした顔をした後に、青白い肌を少し上気させる。
「『これ』、『かわいーな』!『アーシャの』『あいがとぉ』!」
もらって、とても嬉しいことを伝えたいのだが、残念ながら知っている単語が少なくて、うまく伝えられない。
「………うん………」
イズミは更に赤くなって、何故か両手で顔を覆ってしまった。
急に具合でも悪くなったのかと、イズミを心配してアーシャが下から彼の顔を覗き込もうとした時だった。
「アーシャちゃん」
聞き覚えのある声がかけられた。
「みにぇこしぇんしぇい!」
声の方を見たアーシャは驚いて声を上げた。
動く壁の向こうには、『ほいくえん』のミネコセンセイがいたのだ。
(と、言うことは、ここは『ほいくえん』?)
アーシャは疑問に思いながら、彼女に駆け寄る。
すると、飛び込んでこい!とばかりに彼女が両手を広げるので、そのままその胸に飛び込む。
この前は瘴気のおかげで、彼女はかなり弱っていたが、回復したようで、飛び込んでもびくともしない。
「アーシャたん………!!」
そして力強く抱き締めてくれる。
「どーぞ」
細く見えるのに力強い彼女は、片手でアーシャを抱き上げ、もう片手で、紙のカップを渡してくれる。
その中には、なみなみと茶色の液体が入っている。
「わぁ!『あいがとぉ』!」
少し口の中がヌルヌルするなと思っていたので、有難い。
(『むぎちゃ』美味しい!)
香ばしいお茶を一気にアーシャは飲み干して、満足の息を吐く。
「アーシャちゃん、といれ、いく?」
「『といれ』!」
ミネコセンセイの言葉はとても聞き取りやすい。
朝にシノザキに教えてもらった単語を聞き取れたアーシャは、力強く頷く。
早速勉強の成果が出た。
(何か、すっごく上手く出来そうな気がする!!)
喉の渇きもなくなり、排泄も済ませ、アーシャは胸を張る。
言葉での意思疎通が、かなり上手に取れている気がする。
今は気持ちよさそうに寝ているシノザキのおかげだ。
———アシャ ガンバル
アーシャが肩から下げた網の中から、バニタロの声援と、『かたな』の光による応援が送られる。
「うん!」
それにアーシャは力強く頷く。
「みにぇこしぇんしぇい、イジミ!アーシャ、ゼン!」
ゼンの所に行ってきますと、自分を指さし、ゼンのいるであろう方角を指差す。
(ん?)
言葉による意思疎通に自信を持って発言したが、よく考えたら、人の名前しか言っていない。
しかししっかりと通じたようで、ミネコセンセイは手を繋いで導いてくれるし、イズミも斜め後ろから着いてきてくれる。
(伝えようと思ったら伝わるものね!)
ますます自信がついて、アーシャの足は軽く弾む。
(『ほいくえん』じゃないなぁ)
外の陽光を取り込んでいる大きな硝子の壁を見ながら、アーシャは思う。
硝子の外側にある、小さなテラスと、その先に広がる素敵な庭は、初めて見るものだ。
貴族の庭のように綺麗に刈り込まれた庭木や、芝生はない。
しかし植物たちが自然に伸び伸びとしていて、とても気持ちがいい。
華美さはないけれど、何とも癒される、のんびりとした庭だ。
「あ!」
庭を鑑賞していたアーシャは、気持ちよさそうに生い茂った草の合間に、小さな家を発見した。
「小人!?」
素敵な庭に、更に素敵なものを見つけて、アーシャは引きつけられる。
住宅があるという事はすなわち、住人がいるという事だ。
あの小さい家の窓辺には、愛らしい小人族が座っているかもしれない。
アーシャは心臓を高鳴らせながら、もっとよく見ようと硝子に張り付く。
———アシャ
そんなアーシャに、呆れたように蛇の尻尾が揺れる。
「あ………!ご、ごめん。こ、小人の家があって……」
アーシャは慌てて硝子から離れる。
今は大切な使命があるので、小人は後回しにしなくてはいけないのだった。
ついつい興味を惹かれる物があると、道を逸れてしまう。
———コビト ヤキモノ。ウゴク ナイ。カザル ダケ。オモシロイ ナイ
『見るだけ無駄』とばかりにバニタロは尻尾を振るが、ものすごく聞き捨てならない言葉が混ざっていた。
「小人……焼き……!?」
頭の中に、こんがりと焼かれた小人が浮かんで、アーシャは戦慄する。
どこぞの王が串刺しにした敵兵を街道に並べ、敵の戦意を喪失させ退けたなんて恐ろしい話を聞いたことがある。
もしかしたら、この国で小人は害虫的な立ち位置で、見せしめを飾り、近づかないようにするなどという習慣があるのだろうか。
(………やっぱり、小人は探さないでおこう)
下手に探して、焼けた小人を見つけてしまったら、心に大きなダメージを食らいそうだ。
アーシャは改めてゼンの元へ一直線に向かうことを心に決める。
「アーシャちゃん、くつおはきますよ」
トボトボと歩くアーシャにミネコセンセイが靴を履かせてくれる。
「?」
ゼンの神気はすぐそこにあるのに、靴を履かされて、アーシャは首を傾げる。
(ゼンはお庭にいるのかしら。………小人焼きを作ったりとか……そんな事はしてないよね……?)
アーシャは焼かれた小人を見つけてしまうかもと、恐る恐る扉の外を確認する。
「………ほっ」
取り敢えず見える範囲には何もいない。
アーシャは安堵の息を漏らして、ミネコセンセイに続いて庭に出る。
イズミもしっかりとついてきてくれているので、大人二人に挟まれて、心強い。
(いや、私も大人なんだけど)
アーシャは自分でツッコミを入れる。
ただ、体は子供なので、いざという時に早く走れないし、身長の関係上、普通に歩いていたら一番最初に足元に転がった焼き小人を見つけてしまいそうなので、大人たちを見上げながら歩けるのは、とても助かる。
そうして庭に出ると、先ほどから聞こえていたドシンドシンと何かを落としているような音が、よりはっきりとなる。
(この音は何かしら?)
よく聞くとダダダっと走るような音もする。
建物の中で走ったり飛んだりしているのだろうか。
「アーシャちゃん、どーじょー」
ミネコセンセイは音の方向を指さす。
それは今出てきた建物の端っこの方だ。
彼女が指差す先に、自分たちが出た扉より、数倍大きな扉が付いている。
(二つの建物がくっついているんだ)
王都の建物は、石造りの境界壁を挟んでつながり合っていたので、珍しくはない。
隙間なく建物を建てることで、建物が第二第三の壁の代わりになって、都市の防御力を上げられるし、繋がることで外気と触れ合う場所を減らし、厳しい冬を暖かく過ごせるのだ。
こちらは城壁がない国なので、連なる建物はないのかと思ったが、微妙に繋がる事はあるらしい。
そんな事を考えながらミネコセンセイに導かれて歩いていると、元気な声が響く。
「さだこせんせー!こんにちわーーー!」
「こんにちわーーー!」
「おーーーっす!」
五人くらいの子供たちが、ふざけ合うようにもつれ合いながら、外の門から入ってくる。
「ミネコセンセイです。こんにちわ」
ミネコセンセイは彼らを迎え入れる。
「…………?」
次々に駆け込んでくる元気な子供達を見ていたアーシャは目を擦る。
五人程度なら、数えるまでもなく、一目見ただけでわかるはずなのに、『五人くらい』としか言えなかったのは、妙に数が多いように感じたからだ。
影がダブるというか、足音が妙に多いというか、奇妙な感覚だ。
「………ひっ!」
アーシャが目を擦っていた右後ろで、息を呑む音がした。
振り向くと、イズミの顔が引き攣っている。
「………………さがて!!」
何だろうと思っていたら、鋭くミネコセンセイが叫ぶのが聞こえた。
その声に驚いて、もう一度振り向くと、大きな扉の方に走り去っていく子供たちの中から、黒い影が離れて、こちらに走ってくる。
ミネコセンセイは素早くアーシャをイズミの方に押すと、影に向かって躊躇なく走っていく。
「みにぇこしぇんしぇー!!」
思わず彼女を追おうとしたアーシャを、隣にしゃがんだイズミが、震える手で抱きしめる。
薄くミネコセンセイを包んでいる神気が、ギュッと足の方に圧縮される。
「ふっ!」
短い掛け声と共に彼女は、迷いなく黒い影を蹴り飛ばした。
綺麗に振り切られた足に、黒い影は蹴り飛ばされ、吹き飛びながら小さく千切れていく。
震えていたイズミは、それを見て、「はぁ〜」っと大きく息を吐き出す。
何かよくわからないが、イズミが怖がった不気味なものは撃退されたようだ。
「あっ、あ……ごめんね」
はっと気がついたイズミは、抱き込んでいたアーシャを慌てて解放する。
その手は未だ震えている。
「イジミ、『いーこ』『いーこ』」
アーシャは離れていく手を捕まえて、震えがおさまるように撫でる。
———アシャ ベチャベチャ サワラナイ。コレ キケン
肩から掛けたバニタロが嫌そうに、そんな事を言う。
こんな時にまで意地悪を言うバニタロに、アーシャは呆れて、彼の入れ物である『もちもち』をペチペチと叩く。
「ひどい事言わない
『とても良い人よ』と続けようとしたアーシャは、言いかけて止まった。
「……あ……」
アーシャの口からは自然と音が漏れた。
黒い影はミネコセンセイに蹴っ飛ばされて千切れた。
やっつけられたと思っていたのに、千切れて小さくなった黒い影が、ヨロヨロと起き上がり始めたのだ。
ゴクンとアーシャは唾を飲み込む。
一つ一つがインクを溢したように、規則性のない形だったのに、沸騰するように内部から泡だったかと思うと、少しずつ形が変化する。
黒い影の大きさは大人の手の平くらいだ。
これが湧き出る泡に揺らされ、痙攣するようにビクンビクンと動く。
そのうち足のようなものが生えて立ち上がり、苦悶するように身を捩りながら左右から腕を生やし、その腕が捏ねるようにして、頭部を作る。
「おあぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!」
———ピャーーーーーーーーー!!
「ひっ……ひゃぁーーーーーー!!」
そのあまりに気持ち悪い動きと、出来上がった小さな人間型の影の歪さに、口々に悲鳴を上げたアーシャ、バニタロ、イズミはお互いに飛び付いて、抱きしめ合う。
もっとも、バニタロは自分で動けないので、アーシャとイズミに挟まれただけなのだが。
驚きと恐怖で、蛇腹部分の鱗が立ち上がってしまっている。
小さな人型になった黒い影は、頭が大きすぎたり、腕を引きずっていたり、足が妙に長かったり短かかったりと、まともな人間の形から逸脱した物が散見される。
反面、小さな人間のように、指の形まで完璧になっている者もいて、それが返って悍ましい。
「いやーーーーー!初小人が!初小人が!!きぼぢわりゅいぃぃぃぃ!!」
それが動き出すと、あまりの気持ちの悪さに、アーシャは悲鳴を上げる。
その姿は『羽の生えていない妖精』くらいのイメージで、愛らしい小人の姿を夢見ていたアーシャの夢を打ち砕くに十分な威力だった。
頭を振り回しながら動くもの、上半身を引き摺りながら歩くもの、うまく歩けず地面を這いずるようににじりよってくるもの、全く普通に歩いているもの。
全て違って全て気持ち悪い。
「アーシャちゃん!」
慌ててミネコセンセイが小さな影を、容赦なく踏み潰し始めるが、黒い小人たちは更に歪な形になっても動き続けて、気持ち悪いさが倍増する。
一度踏み潰しても、ボコボコと泡立ち、足が三本になったり、蜘蛛のような姿になったりと変形して、影たちは行進をやめない。
どんどん気持ち悪い姿になっていく様子は、まさに悪夢だ。
「ぎぼぢわりゅい!ぎぼぢわりゅい!ぎぼぢわりゅいぃぃぃぃぃ!!」
「わっわっわっわぁぁぁぁぁ!!」
———ピャァァァァァァァ!!
この国の小人は、ほのかな憧れを踏み潰しながらにじり寄ってくる。
アーシャたちは三者三様の叫び声を上げながら、更に密集する。
「くっ!」
踏み潰す方向から、遠くに蹴り飛ばすようにミネコセンセイが方針転換した時だった。
ヒュッと空気を切る音が聞こえたかと思うと、ザシュザシュザシュと、次々に土に何かが刺さる音が響く。
「さがて!」
そんな声と共に、門から人が走り込んでくる。
物凄い速度で走り込んできた人物は、地面に手をついたかと思うと、「ハッ!」と短く息を吐く。
それと同時に光の壁が形成される。
「結界!!」
その恐ろしい展開の早さにアーシャは目を丸くする。
熟練の聖女ですら、一瞬で結界を張るなんて無理だ。
結界は五角形の壁から作られ、その頂点には紙が揺れており、槍の穂先のような形の金属が紙を地面に縫い付けている。
影たちはその壁に閉じ込められて、狂ったように地団駄を踏んでいる。
「あ…………!」
結界を張り、影たちの侵攻を食い止めた人物は以前、家で会ったことがあった。
穏やかな物腰の老紳士だと思っていた彼は、厳しい顔つきで、懐から地面に刺さっている物と同じ刃物を取り出し、猛然と影に切り掛かる。
「チャチェチ!!」
急に獰猛さを増して襲いかかる小人に慌ててしまって、アーシャの舌は滑らかに動かなかった。
「はい!」
しかし呼ばれたことがわかったらしく、タケチは少しだけ振り向いて返事をしてくれる。
厳しくなっていたその目つきが、アーシャの方を見て、一瞬和らぐ。
気味の悪い小人たちを結界で隔離してもらい、力強い返事をもらったことで、アーシャは頭の中の混乱の波が、スッと落ち着くのを感じた。
アーシャは素早く胸元から笛を引っ張り出して、咥える。
ピィィィィィと空気を切り裂く音を出しながら、錫杖を引き抜く。
タケチは優勢に戦いを進めているように見えるが、割いても割いても影たちはボコボコと気泡を立てて蘇ってくる。
彼と共闘するミネコセンセイの神気もどんどん弱まっていっている。
助太刀が必要だ。
(瘴気は見えない……という事は、これはこの国の生き物……?)
消えるまで殴り続けるしかないのかもしれない。
アーシャはヒュンヒュンと音を立てて錫杖を回し、遠心力をのせる。
(とにかくゼンが来てくれるまで、殴りまくる!!)
そう腹を決めて、アーシャは走り出す。
真っ黒で、動きも気持ち悪いが、長年見てみたいと思っていた小人だ。
殴るのには勇気が要る。
アーシャは歯を食いしばって、後ろからタケチに飛びつこうとしていた影に錫杖を振るう。
「おえぇぇぇぇぇぇ!!」
ブニャッともグチャッともつかない、感覚的には巨大芋虫を殴った時の感触に近い殴り心地に、アーシャは叫びながら錫杖を振り切る。
あまりに気持ち悪い感覚に、吐き気がせり上がってくる。
吐き気を堪えながら、第二撃を出すために錫杖を振って勢いをつけるアーシャの肩掛けから、雷が迸る。
「ふぁっっ!!」
私を忘れるなとばかりの『かたな』の雷撃だ。
アーシャが殴り飛ばした影は、ボヨンボヨンと地面で跳ねて転げただけなのに、『かたな』にやられた影は、太陽に焼かれたナメクジのように、苦しみ、泡立ちながら小さくなっていく。
「しゅごい……」
しかし強気の攻撃だったが、持ち主不在のため第二波を出すまでには時間がかかるようだ。
帯電しながらも、雷撃に足るだけの光が集まらない。
(私が時間稼ぎで、『かたな』がトドメね)
そう決めて、アーシャは再び錫杖を構える。
「アーシャ!!」
しかし次の瞬間には力強い腕の中に、アーシャは抱き込まれていた。
「ゼン!!??」
何処からかゼンが降って湧いてきたのだ。
圧倒的な神気に包まれると、あっという間に気が緩んでしまう。
「ゼ………ゼン………」
「イズミ!ぶじか」
アーシャを抱き上げたゼンは、尻餅をついているイズミを助け起こす。
———ヌシ!ヌシ!!
アーシャごと抱きしめられたバニタロは嬉しそうである。
先程まで仲良く風雨に怯える小鳥のように寄り集まっていた三人(?)は、無事にゼンという屋根に囲われる。
しかしホッとしたのも、束の間で、すぐにアーシャは助けなくてはいけない人を思い出す。
「ゼン!みにぇこしぇんせい!チャケチ!」
そして指さして示そうとして………アーシャは目を疑った。
「あ…………あ…………」
轟々と小人たちが燃えている。
身を捩り、もがきながら小人たちが燃えている。
(小人……焼き……)
それを見つめるアーシャの脳裏に、そんな言葉が浮かび上がる。
それは悪夢のような光景だった。
声にならない声を上げて焼かれる小人たちはどんどん縮む。
コレを今から庭に飾るんだろうとか考えてしまって、アーシャは現実から目を逸らすように、ゼンの胸にめり込む。
(こ……こうやって焼き小人を作っているの……!?)
あまりに恐ろしい風習だ。
「ぶじかい?」
震えるアーシャに頭上から声がかけられる。
見上げるとそこには、一緒に肉の楽園で過ごした老人がいる。
その後ろにはホッとした表情のミネコセンセイとタケチがいる。
全員無事であることは嬉しい。
しかし恐るべき風習を目の当たりにしたアーシャは、しばらくゼンから離れる事ができなかった。
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