5.聖女、『どが』を理解する

1.聖女、苦悶する魚をいただく

体が痛い。

内部からミシミシと音を立てて、破裂しそうな痛みに、アーシャは呻いた。

否、アーシャは呻いたつもりだったが、体は思ったように動かない。

寝具を噛み、呻きを無理やり飲み込んで、喉を鳴らし耐えている。

———心配させたく、ない

アーシャではない、『誰か』の思いが伝わってくる。


自分が声を上げると、血相を変えてやってくる人たちがいる。

まるで自分たちの事のように、悲しみ、辛い顔をする人たちを思って、『誰か』は必死に声を堪える。

(あぁ、夢だ)

アーシャは納得した。

時々見る、『誰か』の体に入る夢だ。


『誰か』は意識が掠れるほど、痛みを我慢して、汗か涙かわからない体液で、顔をぐちゃぐちゃにしながら、空を仰ぎ見る。

綺麗な透明の硝子が嵌め込まれた窓からは、迫ってくるような緑が見えている。

陽に透けた木の葉は、キラキラと生命を象徴するように輝いている。

「……………」

『誰か』はズルズルと寝床から這い出し、窓を開け、外に飛び出す。


何故かはわからない。

しかし『あちら』に行けば、この痛みを和らげてくれると、不思議な確信がある。

何も履いていない足は、地面を蹴るたびに焼け付くような痛みを感じるが、全身が弾けそうな痛みの前では小さな事だ。

時々痛みによろめきながら、体はどんどん緑の方へ走る。


最初はよく見る、神の国の真っ黒な石に覆われた道だったのだが、やがてわだちのついた畦道あぜみちに入る。

草の位置がどんどん高くなり、やがて轍のあとがなくなっても、体は道無き道を進み続ける。

足に感じた灼熱は、やがて土と大小の石に傷つけられる痛みに変わり、遂には脛や膝、太腿を背の高い草が切りつける痛みも加わる。

(水音がする)

しかし不思議なことに、川と思われる音が聞こえ始めると、体の中で膨らみ、遂には体を引き裂くのではないかと感じていた痛みは急激に弱まり始める。


———あっちだ

『誰か』はそう感じて草が体を傷つけるのにも構わず、どんどん水音の方へ走り出す。

水音が近くなるに従い、更に体内の痛みは減っていく。

それと同時に段々と体の輪郭が解けていくような、奇妙な感覚がする。

(………綺麗………)

やがて道なき道を掻き分けて辿り着いた川を見て、アーシャは内心でため息を吐く。


折り重なるように生える木々は、見渡す限り一面に広がり、まるで光り輝く緑のほろのようだ。

その木々に遮られる事なく、零れ落ちた光が川面を宝石のように輝かせている。

川の水は恐ろしい程澄んでおり、そのまま飲めるのではないかと思ってしまうほどだ。

清らかな流れは大小様々な石に砕け、地上に舞い降りた巻雲けんうんのように美しい白い飛沫を上げている。

岩に砕けた水が周辺に飛んでいるのか、川周辺の空気はしっとりと冷たく、頬の熱を冷ます。


アーシャの入った体は、大きく息を吸い込み、清浄な空気で体を満たす。

———ここじゃない

そしてふらふらと川の上流に向けて歩き始める。

空気はどんどん澄んで、気持ち良くなっていく。

進むにつれ、ほのかに周囲に満ちていた神気が、どんどん濃さを増している。


(これ以上進んだら………この人は戻れなくなる)

ひたすら安らぎを求めて歩く『誰か』の苦痛が抜けるのと同時に、人間として捨ててはならない『何か』が抜け落ちている。

どんどん人としての輪郭が消えていく気配に、アーシャは焦る。

(ねぇ、足を止めて)

しかし体の中に間借りしているだけのアーシャが語りかけても、その足を止める事ができない。

(戻れなくなるよ!危ないよ!)

何が危ないのかわからないが、戻れなくなってしまうという事だけはわかる。

アーシャは焦るが、体は止まらない。


「ゼンっっっっ!!」

しかし唐突に声が響き、びくりと体が止まる。

「ゼンっっ!それ以上行かんと!!戻ってこんね!!」

激しい息遣いと共に、誰かが走ってくる。

「…………ばーちゃん………?」

そう呟くと同時に、消えかけていた人としての輪郭が戻ってくる。

半分起きて、半分寝ていたような状態だった『誰か』は、初めて目が覚めたように驚いて振り向く。

それと同時に、温かい、草と土の匂いのする、汗ばんだ胸に抱きすくめられる。


「うっ………ぐぅっっ………!!」

四肢の感覚が戻ると同時に体内の痛みも戻ってきて、苦痛に思わず身を捩る。

そして温かな胸から離れようとする。

「ゼンっ、行っちゃいけん!!」

その体を温かな腕がしっかりと掴む。

「くっ、あぐっ、ぅううっ」

押し殺そうとしても痛みで喉からは苦痛の声が漏れる。

「ごめん……ごめんな!辛いな、痛いな!でも、もうちょっと、もうちょっと堪えてくれ!ばあちゃんの我儘でごめんな!でも、堪えて、ばあちゃんたちの元におってくれ!………上がらんで………!!」

頬に温かい雨が降る。


「シュウコさん!坊は無事ね!?」

「良かった!まだあがっとらん!!」

「早く戻らんと!山はいかん!川はもっといかん!」

そんな大勢の声が聞こえてくる。

———あぁ……戻らんと……

体の痛みと共に、絶望したように、そんな思いが広がる。


「ぜんちゃん!!」

その中に、一際幼い声が響く。

いつか夢で見た少女だ。

「ごめん……ごめん……ごめんね!」

涙でぐしょぐしょになって、顔を皺だらけにして泣いているが、多分間違いない。

大人たちに抱えられながら、『誰か』は少女の頭に手をのせる。

「っっ……へーき……」

ともすれば悲鳴をあげそうな口から、必死の思いで、その一言を押し出す。

少女の頭に触った手から、更に感覚が戻ってきて、痛みが増す。



———痛い………苦しい……



「……………っっっ!!」

ビクンと体が痙攣すると同時にアーシャは目を開けた。

ハァハァと激しく動く胸。

ジットリと濡れる背中。

痛いほど握りしめていたせいで痺れている手。

噛み締めた奥歯。

全ての感覚がクリアだ。

その感覚の中に痛みは存在しない。


それを確認したアーシャは安心して大きく息を吐いた。

(痛い夢って………そんな事あり!?)

次いで頭を抱えた。

夢じゃないことを確認するために頬をつねる、等という行為をするはずなのに、夢の中で激痛を感じて、起きたら何にもないなんて事はあるのだろうか。


「ん〜〜〜〜」

考えてみても良くわからない。

(夢の中で私は『ゼン』って呼ばれてたわ。………ゼンになった夢を見ていたのかしら)

そんな事を思いながら、窓を見て、アーシャは驚いてしまう。

「にぇぼう!!」

すっかり太陽が高くなっているのだ。

あわあわと言いながら、アーシャは腹這いでベッドから滑り降りる。

(もう社交場に行ってる時間だわ!!)

アーシャはドテンと床に着地して、パタパタと部屋を走り、少し開けられている扉を開ける。

「アーシャ、おはよー!」

すると階下から既にゼンがお迎えに来てくれていた。

朝から生気に満ち溢れた笑顔は、夢の中の『ゼン』には重ならない。


「ゼン!おはよー!!」

両腕をあげると当然のように抱き上げて、ギュッと抱きしめてもらえる。

アーシャも嬉しくて太いゼンの首っ玉に力一杯抱きつく。

笑いながら、アーシャの背中をポンポンと叩くゼンに、夢の面影はない。

(変な夢見ちゃった)

アーシャは安心して、いつものように顔を洗い、食卓に向かう。


卓からは既にいい匂いがしていて、アーシャは元気に鳴く腹の虫と共に、駆け寄って椅子によじ登る。

「ふあぁぁぁぁ……あああ?」

皿の上には、白い木の子を薄い肉で巻いた、何とも美味しそうな料理に、生食しても美味しいと理解した葉物野菜たち。

そして………

(どう見ても水を求めながら苦悶して死んだ感じがする)

こんがりと、頭から丸ごと焼かれた小魚が三体。


高級品であった魚に馴染みがないアーシャの目に、それは不気味に映った。

三匹とも救いを求めるように口を大きく開けて、虚空を睨むように目を見開いている。

(すっごい睨まれてる)

彼女は魚には瞼がない事を知らないため、カッと見開いた目に、生きながらに焼かれた恨みがこもっているように感じてしまう。

(いや、普段から色々と殺して食べているわけなんだけど!元・生き物感が凄い!)

こんがりと焼けているとわかる食欲を誘う香りと、死を悼む倫理観の狭間で、アーシャは揺れ動く。

皿の上では恨みがましそうに小魚が、食欲に忠実なアーシャを睨んでいる。

(神の国……意外と野生味溢れる側面……)

よく考えたら頭がついた状態の生物を食べた事が無かったなと、それでも溢れてくる涎を飲み込みながらアーシャは考える。


「はい。どーぞ」

そんなアーシャの葛藤など知らないゼンは、ホカホカと湯気を上げる『コメ』といつものスープを目の前に置いてくれる。

(朝から豪華………!!)

神の国に来て、すっかり慣れつつあるが、やはりお皿が三つもある光景は凄い。

ゼンはアーシャ用の小さなカップに、いつもの香ばしい匂いのお茶を入れてくれて、それをテーブルに置きながら、隣に座る。

どうやら今日は、アーシャが起きるのが遅かったので、ゼンはご飯を済ませてしまっているらしい。


「めしあがれ」

ゆっくりとそう言って、ゼンはアーシャを促すように頭を撫でてくれる。

「いたぁきましゅ!」

ゼンと己の腹の虫に促され、アーシャは勢い良く手を鳴らす。

皿の上で圧倒的存在感を放つ三体の存在には、ひとまず目を瞑ろう。

そう決めて、アーシャはテラテラと油に輝く薄い肉にフォークを突き立てる。

フォークからシャクッという小気味の良い感触が手に伝わる。


木の子を巻いた肉は丁度アーシャの口に入り切る大きさになっている。

「んふっ!」

期待と共に口の中に放り込むと、程良く塩っ辛い肉の味と共に、歯にジャクッと何とも面白い感触がする。

(木の子の歯ごたえ〜〜〜!)

噛む度にジャクッジャクッと心地よい感触がして、それと一緒に肉の旨みが口の中いっぱいに広がっていく。

白い木の子は、全く主張のない、淡白な味なのだが、歯応えが素晴らしく、肉の旨みに染まって口中に広がる。

歯応えはあるのに、一本一本が細いせいか、噛み切る事は難しくない。

まるでこんなシャクシャク歯応えの肉を食べているような気すらする。

「おいふぃー!」

あんまり美味しいので飲み込む前に、隣に座るゼンに報告してしまった。

淑女としてはあるまじき事だ。

ゼンはそんなアーシャを咎める事なく、嬉しそうに笑って頷いてくれる。


ザクザクがなくなるまで、しっかりと肉の旨みと感触を楽しんで、アーシャは飲み込む。

「んふっ」

肉の旨みのある油が喉にまで広がって後味まで最高だ。

アーシャは満足のため息を吐く。

そして張り切って二個目の木の子巻き肉にフォークを突き刺す。

「んひひひ」

あんまり美味しくて変な笑いまで出てしまう。


「アーシャ、ごはん」

再びジャクジャク食感を楽しんでいると、横から『コメ』をのせたスプーンが口元に寄せられる。

「はふっ」

差し出されると条件反射のように、アーシャはそれを食べてしまう。

「〜〜〜〜〜!!」

そして口の中で混ざった味に、両頬を押さえて震える。

ホカホカの『コメ』に冷たくなっていた肉の油が熱されて、ジュワジュワと口に広がる。

冷えていても美味しかったけど、温かくなるとその威力が段違いに上がる。

あまりの美味しさに、唾液が滲み出てくる。


パンはスープに浸さないと、とても食べられる硬さではなかったので、浸すのが習慣になっていたが、『コメ』はついついお留守になってしまう。

他の食材と混ぜると途端に美味しさの攻撃力を上げてくれる存在を、すぐに忘れてしまうなんて由々しき事だ。

「んふぅ〜〜〜」

特に辛い料理に合わせると、ほのかな甘みが辛味を際立たせ、より美味しくしてくれる。

幸せすぎて踊り出したい味だ。

一口サイズの木の子の肉巻きは六個。

沢山あるように見えていたのに、あっという間に胃袋に収めてしまう。


木の子の肉巻きの下に敷いている葉物野菜には、手元に置いてあった『まよ』をたっぷりつけて食べる。

「ん〜〜〜!」

最早野菜を食べているというより、『まよ』を食べている気がするが、やっぱり美味しい。

濃厚な味わいと野菜の繊維質が織りなす食の芸術を味わってから、アーシャはスープを手に取る。

いつもながら謎の旨みと塩っ気のあるスープで、後口がすっきりとする。

そしてスープの味が残る口に『コメ』を詰め込んで、ほんのりとした甘味を楽しむ。


「アーシャ?」

スープと『コメ』を交互に食べるアーシャに、ゼンが皿を指差す。

「………………」

そこには苦悶の顔で焼かれた三匹の小魚がいる。

「………………」

アーシャはフォークを握りしめて、小魚を見つめ、そしてゼンを見つめる。


ゼンは何で食べないのかと不思議そうな顔でアーシャを見つめ返してくる。

その視線を受けてアーシャは再び魚たちを見つめる。

(この苦しむ顔から齧りついていけば良いのか……それとも尻尾から行って、見ないようにしつつ最後に頭を噛み砕くのが良いのか……)

フォークを刺す位置に迷う。


困ったアーシャはゼンを見上げる。

「あぁ!」

すると『わかった!』とばかりにゼンは頷いて、魚ののった皿を調理台の方へ持っていく。

「きったぞ!」

そして程なくして彼は戻ってきた。

「あっ」

すると先ほどまでは『苦悶する魚』だったものが『香ばしい匂いのする肉』になって皿に並んでいた。

頭と尻尾部分が取り除かれ、ぶつ切りされて、一口で食べられる大きさにされていたのだ。

「ゼン、あいがとぉ!」

これなら無慈悲にイケる。

アーシャがお礼を言うと、ゼンは白い歯を見せてニカッと笑う。


魚を口に入れると、豚や鳥などの陸の肉にはない、独特な匂いが口の中に広がる。

噛むと、意外とその身は柔らかい。

(何だろ……ツブツブしてる)

身は柔らかいのだが、中から小さなツブツブが出てくる。

(魚の内臓ってツブツブしてるのかな)

丸ごと食べているので、少し硬い、骨と思われる感触もするし、少し変わった食感だ。

「…………。…………!…………!!」

最初は目新しい食感と共に、軽い塩っけを楽しんでいたのだが、噛めば噛むほどに何だか美味しさが溢れてくる。

(味が薄くなるんじゃなくて変化している!?)

アーシャは夢中で噛んで、ゴクンと飲み込む。


「おいしーな!?」

陸の生物の肉とは違う、最初は淡白でありながら、噛むと染み出してくる味に驚きながらゼンに報告すると、彼は一瞬目を大きくしていたが、すぐに笑顔になる。

「よかったな」

そしてヨシヨシと褒めるようにアーシャを撫でてくれるのだ。

ご飯が美味しいと伝えただけで褒められてしまうので、アーシャはついニヤニヤと笑ってしまう。


(うん!美味しい!!生きながらに焼かれた魚には申し訳ないけど、すっごく美味しい!!)

ツブツブした内臓も丁度良い具合に噛むとプチンと潰れて、歯触りが愉快だ。

「アーシャ、あ〜ん」

そんなアーシャの口元に再び『コメ』が運ばれてくる。

「ん!」

これまた条件反射で口の中に迎え入れてしまう。


「んんんんん!!」

そのまま一緒に咀嚼し始めると、ここでまた『コメ』の活躍が光り輝く。

その甘味のせいか、温かさのせいか、ぐっと魚の味が際立つ。

(合う!これは合う!!)

思わず左右に揺れながら、ピョンピョンと椅子の上で飛び跳ねてしまう。

どんな食材の味も引き出してしまう、恐るべき主食である。


「あっ!!!」

アーシャは夢中になって、何度もその組み合わせを味わっていたせいで、気がついたら皿の上にはもう何も残っていない。

お腹ははち切れそうなほど、丸々となっている。

(取り置きしておく分が無い!!)

満足のため息を吐きながら、お腹を撫でていたら、その事に思い当たって、アーシャは声を上げてしまった。


もう絶対に迎えに来てくれるとは思っている。

思ってはいるのだが、最後の命綱として、帰ってから食べる分を残しておきたかったのだ。

「よく醇挽踊玖!えらい!」

ゼンは何だか誉めてくれているが、アーシャはしょんぼりとしてしまう。


そのまま悄然として、歯を磨いてもらい、服を着替え、背負い袋を背負わされるのを待つ。

「?」

しかしいつもは準備の最後に背負っていた袋は、いつまでたっても、壁に掛かったままだ。

不思議に思ってアーシャはゼンを見上げる。

するとゼンも不思議そうな顔でアーシャを見ている。

「えっと……こえ……」

アーシャが背負い袋を指差すと、不思議な顔をしていたゼンは、急に破顔する。


「や・す・み!」

そう言ってゼンはアーシャを抱き上げる。

「『やしゅみ』?」

良くわからなくて首を傾げていたら、う〜んと言って、ゼンは考え込んでしまう。


しばらく考え込んだゼンはアーシャを抱っこして、移動する。

そして壁にかかった時計を示す。

「ず・っと」

彼は文字盤をぐるっと一周指差して見せる。

「いっ・しょ」

それからアーシャをキュッと抱きしめる。


「????」

アーシャが理解できなくて時計とゼンを交互に見ていたら、ゼンはもう一度、時計の文字盤をぐるっと指差す。

「ず・っと、いっ・しょ」

そして先程と同じようにアーシャを抱きしめる。

「あっっ!!」

二度目にして、アーシャの脳裏に稲妻が走る。


「じゅっちょ」

アーシャはゼンと同じように、時計の全ての時間を指差す。

「いっちょ?」

そしてゼンに抱きつく。

「ずっと、いっしょ!」

するとゼンは頷きながら抱きしめ返してくれる。


「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

アーシャは自分が発光するのでは無いかと思うほど、力がみなぎり、気分が明るくなってしまう。

つまり、今日は社交場に行かなくて良いと言うことなのだ。

「じゅっと、いっちょ!」

嬉しくて、めりこめとばかりにゼンの体に頭をグリグリと押し付けてしまう。

社交場にだって慣れてきた。

楽しいと思った。

でもゼンと一緒にいられる方がずっと嬉しい。


「へへへへ〜〜〜〜」

アーシャの頬はだらしなく緩む。

グリグリと顔を押し付けられて、くすぐったかったのか、ゼンは笑い声をあげる。

アーシャは嬉しくて、嬉しくて、顔が元に戻らない。

「じゅっと、いっちょ!」

幸せな一日の始まりだった。


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