18.不思議ちゃん、歌う

保育園の朝は早い。

麗美の務める保育園の預かり時間は七時半から十八時までとなっている。

この為、園児の受け入れを担当する早番組の出勤時間は七時だ。

園児が登園する前に安全点検や備品の補充、職員同士の打ち合わせを行う。

「昨日の藤護さんの様子はどうでした?」

昨日から通い始めた藤護アーシャは、年齢がわからない、国籍がわからない、言葉も通じないというナイナイ尽くしの、ある意味要注意人物だ。

「お兄ちゃんと離れるのがショックだったみたいで、大泣きでしたよ。お兄さんたちに引き取られるまで随分酷い生活を送っていたみたいだから、引き離されると思ってパニックを起こしたんでしょうねぇ。でも一旦落ち着くと、周りの様子を静かに観察したり、幸太君とお話ししたりと、しっかりした子でしたよ」

麗美と同じ乳幼児預かりの『ねんね組』担当である赤松がそう言って、ねぇ?と、麗美に話を振る。


「はい。トイレトレも完璧で一人で全部できてました。それにすごく賢くって。私の名前も一発で覚えてしまいましたし、他の赤ちゃんのオムツが汚れていたら教えてくれたり、泣いている赤ちゃんをあやしてたりしてたんです」

「え〜名前覚えてもらったの?羨ましぃ〜〜〜!」

「アタシも早く喋りたい〜〜〜」

「やっぱあれだよね、外国の子って肌は白いし、既に彫りが深いしで可愛いよね!お目々もグリーンでクリッとしてて!髪もフワフワの巻毛でメチャクチャ撫で回したい!」

麗美の言葉に事務作業をこなしながら聞いていた若い職員たちが声をあげる。

「子供はどの子も可愛いです。特別扱いは駄目ですよ」

そんな職員たちに釘を刺すように、そう言ったのは峰子だ。

「因みに私が一番に覚えてもらいました。峰子先生、アーシャちゃんと呼び合う仲です」

不満そうな顔をする職員たちに、ドヤ顔でそんな事を宣言するものだから、『メチャクチャ特別扱いしてません!?』と口々にツッコミを入れられている。


「やっぱりねんねさんじゃなくて、年少々さんに入れた方が良かったかしら?」

キャッキャと騒ぐ職員たちに園長は目を細めながら尋ねる。

ここの保育園では三歳になった時点から、次の年の四月から年少さんに上がるまでを、年少々クラスとして振り分けている。

三歳から幼稚園に通う子供も出始めるので、少しずつ赤ちゃん扱いを卒業させていくのだ。

「ん〜〜〜、私は昨日散歩の間しか見てないんですけど、ねんねさんって感じじゃないですね」

そう言った赤松に、視線で『貴女は?』と問われて、麗美は頷く。

「体格の問題があるので、大きいクラスには入れられないとは思いますけど、年少々さん、年少さんのどちらかには入れていいと思います」

赤松と麗美の意見に園長は大きく頷く。

いぬい先生は?どう思う?」

問われた峰子は首を傾げる。

「そうですね。自分で考えて行動しているように見えたので、能力的には上のクラスだと思います。ただ、まずはここに慣れる事が先決かと。急いでコロコロとクラスを変えて不安定にするより、まずは環境を大きく動かさずに見守って、皆でどこのクラスに編入させるのが適当か、慎重に吟味すべきかと思います」

鶴の一言とばかりに、皆が納得するように頷く。


「じゃあ皆さんも時間がある時に見守ってあげてください。言葉は通じないし、習慣も違うかもしれないのでフォローお願いします」

園長はアーシャの話をそう言って締めくった。




公共交通機関の整っていない田舎は、殆どの人が車・自転車通勤なので、園の駐車場は広い。

通勤時間は三十分圏内が多いようで、登園のピークは八時十分から四十分頃だ。

そんな登園ピークを迎えた、八時半頃に問題の児童は登園してきた。

嬉しそうな峰子に手を引かれて教室に連れてこられたアーシャは、目を潤ませているものの、今日は元気そうだ。

「アーシャちゃん!おはよう!」

麗美はアーシャの気分を盛り上げるためにも、明るく声をかける。

「りぇみ、おはよー」

(んふ~~~!)

一日経っても名前を覚えてくれていて、しかもすごく嬉しそうに笑ってくれるから、思わず声をあげそうになって、寸前で麗美は堪える。


この『可愛い』は人種の違いによるものではなく、愛嬌の違いだろう。

こちらを見もしない、挨拶も返してくれない子供も少なくない中、こんなに嬉しそうに笑われたら、蕩けない方が難しい。

子供たちからの塩対応を受けることの多い峰子は、しっかりと手を繋いでもらって、表面上は辛うじていつものクールビューティーヅラを維持しているが、目の輝きが違う。


「お預かりしますね」

「………よろしくお願いします」

『仕事に私情を挟まない』『子供たちには平等に、必要に応じた対応を』がモットーの峰子は、表面には出さないが、一瞬だけ惜しむように手を離すのが遅れる。

(峰子さん、ガンバ!)

あっさりと麗美に移ってしまうアーシャを、心なし寂しそうに見つめる峰子に、心の中でエールを送りながら、麗美は荷物の置き場所にアーシャを連れて行く。


「ふふ」

ループ付きタオル、コップ、連絡帳、そしてリュックを置く場所を教えながら順に案内すると、最後のリュックのところでアーシャはサクランボの絵をツンツンと指差して、嬉しそうに笑う。

どうやらサクランボがアーシャに割り当てられたマークだと理解したらしい。

(特別扱いは出来ない……けど、可愛い〜〜〜!!)

麗美は笑いかけてくるアーシャに蕩けた笑みを返す。

特別扱いはしないが、人懐っこい子を可愛いと思うのは仕方ない。

保育士だって人間なのだ。

麗美は一人、心の中で開き直る。


子供達一人一人を見てはいるが、朝はとにかく忙しい。

どんどん登園してくる子達の健康状態を確認したり、各自の持ち物を所定の場所に置いたり、外遊びに備えてお着替えさせたりと目がまわるような忙しさだ。

ただでさえ忙しいのに、このクラスは魔の二歳児とも言われる、『イヤイヤ期』真っ盛りな子供もいる。

理不尽なイヤイヤに何度も仕事を中断されながらも、何とかご機嫌を取って片付けていく。

忙しい中でも赤ちゃんが泣き出したら駆けつけて様子を見たりもしなくてはいけない。


必然的に大人しくて手のかからない子は放ったらかしになりがちになる。

子供の集団行動では自己主張の強い子の方が有利なのだ。

特に大人しい上に聞き分けの良いアーシャなどは、手をかけてあげたくても、手を回せない。

何をしたら良いのかわからない様子で、彼女はキョロキョロと周りを見て歩き回っている。

オモチャに興味がないのか、遊び方がわからないのか、至る所にあるおもちゃには手を出さない。


身の置き場が無いのか、室内をうろついていた彼女は、ソフトブロックで遊ぶ子に声をかけようとして、突き飛ばされてしまう。

オモチャを独占したがる子なので、アーシャがオモチャを取りに来たと判断してしまったようだ。

「アーシャちゃん!」

麗美は慌てて駆けつけようとしたが、突き飛ばされたアーシャは、まるで受け身でもとるように、コロンと一回転して、何事もなかったような顔で起き上がる。

(意外と運動神経良いね!?)

カリカリと頭を掻いてから無言で引き下がっていく姿を、麗美は呆然と見守る。

普段はヨチヨチとゆっくり動くので、柔道家のような見事な身のこなしに驚いてしまう。


中々メンタルが強いようで、突き飛ばされても、アーシャは他の子供に話しかけに行く。

しかしオモチャに夢中になっていたり、人見知りが強い子だったり、一人遊びの好きな子だったりと誰にも受け入れてもらえない。

(これはフォローに入ってあげた方がいいかも)

とは思ったが、そのタイミングで二人の子供が泣き始めてしまった。


一人は恐らくオムツ替え要求、もう一人は移動中にコケて泣いている。

床は柔らかいので、コケた方は恐らく驚いて泣いているだけだ。

怪我がないことを確認して、オムツ替えに移ろう。

麗美がそう思って、目の前の子供のお着替えを中断しようとしていたら、ポテポテと目の前を黒い巻き毛が走っていく。

「にゅいみーな?」

そして床に転がって泣いている子を助け起こして、なぐさめるように抱きしめている。

(ちっちゃい子がちっちゃい子をなぐさめてる………!!)

その光景の尊さに麗美は仰け反る。


因みにアーシャの方が助け起こした子より小さい。

助け起こされた子は、自分より小さい子になぐさめられた事にびっくりして泣き止んでしまった。

そしてこの生物は何だろうとばかりに、フワフワの髪を掴んで、口の中に入れようとした所で、アーシャは尻尾を巻いて逃げていく。


酷い目にあったとばかりに、掴まれた髪の毛を撫でながら、カサカサと音のでる赤ちゃん用のボールをアーシャは拾う。

そして先程泣き出した赤ちゃんの元へ、そのボールを運んでいく。

赤ちゃんはそのボールを受け取ると、上機嫌になってそれを振り回し、存分にカサカサと音を立てる。

「あ〜〜〜」

そして途中で手からボールがすっぽ抜けたのを見て、アーシャはまたボールを追いかける。

(わ……ワンちゃんみたい……!)

赤ちゃんは握力の弱い手で振り回すものだから、いろんな方向にボールが飛んでいく。

アーシャはその度に真っ黒な髪を揺らしてそれを拾って渡しに行く。

その様子は羊を右へ左へと誘導するボーダーコリーのようだ。


やがて赤ちゃんはボールに飽きて、アーシャが拾って来ても受け取らなくなった。

受け取り手のなくなったボールを、アーシャは寂しそうに赤ちゃんの隣にお供えして、トボトボと去っていく。


そして今度は、機嫌が悪くて先程から頑なにイヤイヤを繰り返して、ひっくり返ってしまっている子供を見つけて、近寄っていく。

(あ、あの子は危ない!)

両親の愛情をたっぷりと皮下に溜め込んだ、見事なドスコイ体型から繰り出される張り手は危険なのだ。

大人の麗美ですら、不意を突かれると、よろけてしまうパワーなので、紙のように薄いアーシャなどひとたまりもない。

慌てて麗美は止めようとしたが、散々突き飛ばされたり、髪を食べられそうになったアーシャは学習したらしく、その子の手がギリギリ届かない辺りにちょこんと座る。

そして昨日も歌っていた、優しい子守唄を口ずさみ始める。


「い……癒される……!!」

お迎え最後の子を連れて教室に戻って来た赤松が呟く。

麗美も全く同意だ。

下手なヒーリングミュージックより、可愛らしい子守唄は効く。

「この歌……心に余裕が出来るというか、何というか……」

「わかる。朝の戦場がエーデルワイスが咲き誇る爽やかなアルプスになったわ」

赤松の言うアルプスはよくわからないが、笑顔を貼り付けて、内心は必死で子供たちの対応に追われていたのが嘘のようだ。

まるで自分が聖母にでもなったかのような心の余裕と、慈しみが溢れてくる。

親と離れたばかりで不機嫌な子供達も、歌声にゆっくりとくつろぎ始めてる。

そのせいか無用の抵抗がなく、恐ろしく仕事が進む。

オムツ一つ変えるのも、抵抗があるのとないのでは大違いだ。

「将来の歌姫に今のうちに手形でももらっとこうかな」

真顔で呟く赤松に麗美は吹き出してしまう。

今の段階でこれだけの歌唱力を持っているので、そんな未来があり得てしまいそうな気がしてしまう。



「は〜い!お外遊びの時間ですよ〜〜〜」

いつもは困難なトイレトレーニング組のトイレ行きもあっさりと終了し、赤松は上機嫌で皆に宣言する。

「今日はたっぷり遊んで、満足してお昼にできそうね」

嬉しそうな赤松に麗美も頷く。

「赤ちゃんたちもあっさり眠ってくれそうです」

ご機嫌でアブアブと言っている赤ちゃんを赤松に渡して、外遊び組の見守り役として、麗美も外に向かう。


我先にと外に向かう子供組と、室内で過ごす赤ちゃん組を、交互に見て、アーシャはオロオロしている。

言葉がわからないので、どうしたら良いのかわからないらしい。

「アーシャちゃん」

麗美が呼ぶと、パッと明るい顔になって駆け寄ってくる。

「りぇみ」

残念ながら麗美の手は他の子達で塞がっている。

普通の子供なら、手の取り合い合戦が起きても不思議ではないのだが、アーシャは麗美の顔を見ただけで、この上なく嬉しそうに笑ってついてくる。

まるで『信頼しています』とでも言うような満面の笑みに、麗美の胸はキュンと高鳴ってしまう。


少々物わかりが良すぎる所が心配だが、物珍しそうに砂場を観察している様子はとても子供らしい。

アーシャは砂場に慣れていないのか、おっかなびっくりラバー素材の砂場の枠を押して確認して、変な顔をしている。

こう言う時は、無理に遊びに誘うより、気が済むまで安全点検させてあげるのが良い。

麗美は他の子供たちが砂を食べたりしないように見張りつつ、一緒に遊ぶ。


アーシャは点検が終わったらやってくるかと思ったら、いつの間にか桜の大木の根元に座り込み、熱心に木の柵の中を覗き込んでいる。

どうやら木の根元にある祠が気になって仕方ない様子だ。

(確かに。気になるよね、あの祠)

子供たちと土を捏ねながら麗美は心の中で頷く。

元々この地はお堂があったらしい。

近くの寺がまとめて面倒を見ていたらしいのだが、明治ごろの神仏分離政策や戦後のゴタゴタでお堂は無くなり、今は祀られていた巨木と祠だけが残ったと聞いている。


桜の木は園庭の端っこの方にあるのだが、かなり大きく、園庭を圧迫している。

しかし代々の園長はその木を伐採することもなく、大切にしている。

木の根元には、千木ちぎ鰹木かつおぎなど、細部までしっかりと作り込まれた立派なお社を置いて、毎朝お供え物している。


その周辺をチョロチョロとしていたアーシャは祠に向かって、何やら話しかけている。

「……………?」

まるで誰かが本当にいるように話しているアーシャに麗美は首を傾げる。

言葉が通じないことを知っているかのように、殆ど口を開かない子が、物凄く長く喋っている。

子供がイマジナリーフレンドを作るのは珍しくないことだが、本当に誰かがいるように話す姿に違和感があって、麗美は話しかけようと立ち上がる。


「麗美先生」

そんな麗美の肩を叩く者がいる。

「峰子先生、どうかしました?」

峰子はにこりと笑う。

本人はにこやかにしているつもりらしいが、口元だけのアルカイクスマイルなので、妙な迫力がある。

「アーシャちゃん、桜さんに興味津々ですね」

『桜さん』とは峰子が勝手巨木につけている名前だ。

大変安直だが、分かり易い。

この保育園の卒園生でもある峰子には思い入れのある木らしい。


「嬉しそうですね」

麗美が苦笑混じりにそういうと、峰子は満足そうに頷いている。

「ええ。アーシャちゃんも桜さんと仲良くしてくれると嬉しいです」

峰子はこの桜の巨木が好きだから、ここで働きたかったと言うほど、思い入れがあるのだ。

最近は桜の木に元気がないと、自費で植物活性剤を買って来て、根元に差しまくって、黒魔術のような光景を作っていた。

子供が誤飲したら大変だからとすぐに撤去されていたが。

「ふふふ、そうですね。ここの子はみんな『桜さん』が好きで、柵の間からプレゼントを入れたりしてますもんね。昔は柵とかなかったから、園児がお花とか気楽にお供えできてたんですよね?」

「…………ええ。でもある園児が、お供物用の食器をラインストーンでデコったり、ジュースをお供えして虫の大量発生をさせてしまったりしたから、柵がつけられてしまったんです」

「あらら〜〜〜困ったさんもいたんですね〜〜〜」

麗美は想像して笑ってしまう。

「………きっと本人は良かれと思ってやったんじゃないかしら」

何故か峰子は遠くの空を見つめている。


そんな会話を交わしていた時だった。

園庭に澄み渡った声が響いた。

「えっ…………」

凛としながらも、柔らかい慈愛を感じる歌声だ。

見ればアーシャが木の根元で楽しそうに踊りながら歌っている。

(凄い………歌声………)

子守唄を歌っている時も上手だと思っていたが、今はその比ではない。

美しいとしか言いようのない歌声だ。

先程の赤松の『将来の歌姫』という言葉が脳裏に蘇る。

あの時は笑ってしまったが、今はとても笑えない。

聞いただけで魅了される、『歌姫』と呼ぶにふさわしい声だ。

本業の歌手のように空気を揺らす迫力はないが、細く高く広がる歌声に、皆が聞き入って、園庭には不思議な沈黙が生まれている。


彼女がクルクルと周りながら踊っていた足を止め、歌い終わると、その場に静寂が広がる。

その静寂を引き裂くように、パチパチパチパチと、峰子が力強い拍手を送る。

「アーシャちゃん、凄い!」

麗美も夢中で手を叩く。

それを皮切りのようにして、皆が歓声を上げ、拍手する。

興奮した園児たちは、小さな歌姫に駆け寄っていく。

「すげーな!」

「リバースのうた、うたえる!?」

「もういちどうたって!!」

「いっしょにうたお!」

皆が口々に称賛して、もう一度歌ってと詰め寄るが、アーシャは驚いた顔で止まっている。


色々な方向から同時に話しかけられ、アーシャは見るからに戸惑っている。

『言葉が通じない』なんて思いもしない園児たちは、自分達の要求にアーシャが応えないので、肩を乱暴に揺らしたり、小突いたりする子まで出てくる。

「良くないわね」

そう言って進み出ようとした峰子だったが、

「あーさ!」

アーシャの前に、防波堤が立ったのを見て、足を止める。

「あーさはしゃべれないんだよ!ことばがわからないの!」

体はそれほど大きくないが、声は人一倍大きい幸太だ。

「あーさは『がいこく』からきたんだ!ことばがわからないから、たすけてやんないとだめなんだぞ!」

年中さんながら、年長さんたちにも一歩も引かない。

多分お母さんか誰かの受け売りなのだろうが、しっかりと実行する所が彼らしい。

兄の幸太が人波を押しとどめている間に、弟の隆太りゅうたがアーシャの手を引いて人の波から逃す。

中々の連携プレイだ。


人波から出ても、アーシャの周りには、また子供たちが集まる。

先程まで身の置き所がなさそうだったアーシャは、最初は戸惑っていたものの、子供たちに導かれて、一緒に遊び始める。

「あらあら。一躍人気者ね」

そういう峰子に麗美は頷く。

寂しそうだった顔が、一転して笑顔になっている。

「ちょっと不器用みたいだけど……コミュケーション能力はかなり高いですね。年少々さんより、年少……いや、年中さんくらいが適正かもしれません」

「凄い頭が良いですよね?私も昨日からびっくりし通しなんですけど、今日の朝なんてアーシャちゃんが保育を手伝ってくれたんですよ」

遊び慣れていないのか、砂を形にする手つきはかなり怪しいが、周りの子たちに合わせて歌ったり、入りたそうな子に場所を譲ったりと、とても子供らしからぬ適応力を見せている。

しかし子供っぽくないかと言われたら、心の奥底から楽しそうで、遊ぶ姿は子供そのものだ。

相変わらず少し不思議な子だ。


麗美もアーシャが楽しそうに遊ぶ姿が嬉しくて、お砂場遊びに混ざる。

「………ちょっと個人的にお話がしたいわね……」

そんな峰子の呟きは麗美の耳に入ることはなかった。


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