16.幼児、隠し子の疑い
「よーし!」
禅一は朝の沐浴で、遂にピカピカになったアーシャを満足気に眺める。
細かい部分は洗い残しがあるかも知れないが、目立つ垢は完全に駆逐され、餓死しそうな外見ではあるものの、髪もふわふわになり、衛生的だ。
薄汚れていないだけで、この年に似つかわしい、可愛らしさが出てきたのではないだろうか。
お譲りで頂いた服は、一昔前のヒーロー戦隊モノで、ズボンも膝補強されているが、それはそれで子供らしくて微笑ましい。
(あとは前髪が邪魔そうだから切ってやりたいんだが……)
人の前髪を切るなんてやった事がない上に、それ程器用ではない自覚がある為、
取り敢えず輪ゴムで括ってみようかとも思ったが、髪の毛を巻き込んでしまったら、アーシャが痛い思いをするのでやめた。
何とか前髪を両端に流して、目にかからないようにするだけで精一杯である。
アーシャを綺麗にした所で、禅一はフムと頷く。
ここで過ごすのは限界かもしれない。
アーシャの身の危険はほぼ無くなったが、次は心の危機が訪れようとしている。
昨日の最上の様子から、この子を生き神として祭り上げようとするのは間違いない。
今まで慇懃無礼だった最上の息子が、手の平をかえしたのは、アーシャが要因なのではないかと、禅一は予想していた。
アーシャを敬うようにとのお達しが最上から出たから、彼女を保護する禅一への態度が
『すまん。昨日の今日だが、迎えに来てもらえないか?』
弟には食後すぐに連絡を送った。
まだ返答は来ないが、禅一は撤収する準備を始める。
弟が来てくれない場合は、歩きで村を出て、タクシーでも呼べば良い。
とにかく、この閉鎖された村を抜けなくては話にならない。
幸い、ガリガリのアーシャは衰弱死しそうで、とても動かせないと思っていたが、エビ相手に大立ち回りができるくらい元気である事がわかった。
禅一は忙しく動き回る。
自分の着替えや、タブレット、パソコン、充電ケーブル、譲ってもらったアーシャ用の服や用品、沐浴前に脱いだ服は持って帰って洗うためにゴミ袋に詰めて、バッグに入れる。
アーシャは禅一の忙しい様子に驚いた顔をしながらも、大人しく荷物を覗き込んだりして過ごしている。
やたらと神妙そうに、荷物をチェックしているのが可笑しい。
同時並行で昼ご飯も作っていく。
とは言っても残っている素材がカオス過ぎるので、野菜とエビを小さく切って、鶏がらスープの素をぶち込んだだけの、何ちゃって中華風の煮込みスープだ。
見ていた所、固形物を食べても平気そうなので、朝ご飯の時に多めに炊いたご飯は、アーシャの口でも一口で食べられるサイズの、まんまるオニギリにしていく。
「ん?」
何の変哲もない塩むすびを、いつの間にか隣にやって来たアーシャが、キラキラとした顔で見ている。
「………あ〜ん」
ちょっとした出来心で、一番小さなオニギリを摘んでそう言ってみると、アーシャは目をキラキラと輝かせて、喉の奥まで見えそうな程大きな口を開く。
(イルカショーの餌やりみたいだ)
ひょいと口の中に放り込むと、はふっはふっと言いながら、アーシャは出来立てのオニギリを頬張る。
「ん〜〜〜!!!」
そして満足そうな顔で、頬を押さえながら、もぐもぐと咀嚼する。
こんなに適当な物でも、アーシャは幸せそうだ。
あんまり嬉しそうに笑うものだから、ついつい二個、三個と与えてしまい、四個目を与えようとして、自粛する。
野菜やタンパク質を摂る前に、お腹が一杯になっては、栄養的によろしくない。
「後はスープと一緒にな」
そう言って、頭をポンポンと叩くが、アーシャのラップに包まれたオニギリへの熱視線は止まらない。
(しまったな……野菜は先に電子レンジにかければよかった)
早く食べさせてやりたいのに、中々柔らかくならない野菜に焦れてしまう。
そんな時、玄関を叩く者が現れた。
禅一は顔を顰め、鍋の火を止めて玄関に向かう。
「どちらさんだ」
普段は全く訪れる者などいないのに、忙しい時に限って来訪者は訪れる。
不機嫌に問いかけると、扉の向こうの影が揺れる。
「あ、あの、禅一さん、すみません、私です」
聞こえてきた、義母の声に禅一は肩を落とす。
悪い人ではないが、進んで関わりたいとは思えない。
しかしアーシャを害される危険性がないなら、立場上の母に無礼も出来ない。
禅一は渋々と玄関を開ける。
「何です?」
顔を見せた禅一に、義母はホッとした顔をする。
「あの、お父様………宗主がお話をしたいと」
予想通りの用事で、禅一は深々とため息を吐く。
宗主にだけは『用があるなら自分で来い』が使えない。
しかも村全体の人間を動かせるから、無視できない厄介な相手だ。
(しかし……)
禅一はチラリと後ろを見る。
そこには好奇心が溢れ出てきそうな顔のアーシャがいる。
『何?何?面白いこと?』
とばかりに彼女の表情は語りかけてくる。
禅一が宗主のいる本家に行くのは別に良い。
しかしこんなに小さなアーシャを、一人、この家に閉じ込めてなんて行けない。
基本的に物静かで悪さはしない子だが、エビの時のように荒ぶる事もある。
家を汚すだけなら良いが、それによって彼女が怪我したりしたら、悔やんでも悔やみきれない。
トイレにも突然行きたくなるかもしれない。
この家は子供が住む仕様になっていないのだ。
しかし陰鬱な空気漂う、陰湿な奴らだらけの、因縁渦巻く本家に、こんなに無邪気な彼女を連れて行くのは、気がすすまない。
「……そちらの赤ちゃんもご一緒にとの事で……」
迷っていた禅一にそんな言葉がかけられる。
(まぁ、そうなるよな……)
親子の情など全くない禅一個人に、宗主が会いたがるはずもない。
呼ばれているのはアーシャで、禅一はオマケなのだろう。
「………アーシャ」
痛む頭を堪えながら、禅一はアーシャに向かって手を広げる。
禅一の内心など知る由もないアーシャは嬉しそうに笑って、彼の胸に飛び込んでくる。
「……離れたらダメだぞ」
言葉が通じない事は百も承知だが、半分祈るような気持ちで禅一はそう言いながら、抱き上げたアーシャの手を強く握る。
「?」
アーシャは不思議そうな顔をしたが、やがて握られた小さな手で禅一を握り返し、満面の笑みで頷いた。
それを見ていた義母は、小さく首を傾げる。
「あの……もしかして、それはお帰りの支度ですか?」
彼女が指差した先には、帰るために禅一がまとめた荷物が積まれている。
「ええ。本来なら昨日のうちに帰る予定でしたから。幸い、この子も移動出来るくらい元気があるみたいなので」
言外にこの子を置いていく気はないぞと宣言すると、少し義母の顔が曇る。
「それも含めて宗主にはご挨拶しに行きます」
多分、直ぐに最上あたりに告げ口されてしまうだろうが、禅一は譲る気はない。
この子を保護したのは禅一だ。
後付けですごい能力があったからと、掌を返す輩に渡す気はない。
アーシャは保護すべき一人の幼児であり、力の有る無しなど関係ないのだ。
「ふぁぁぁぁああ!!!」
抱っこして外に出ると、アーシャの口からは歓喜の声が漏れる。
昨日は一日中家の中だったから、外が嬉しいようだ。
目を輝かせながら周りを見るアーシャに、禅一は笑みが溢れる。
彼女の無邪気さは、空気が重たい本家に行く、嫌な気分をいとも容易く払拭してくれる。
やたらとウニャウニャと喋りかけてきて、落ち着きなく周りを見回す、慣れた子猫のようなアーシャに、禅一の頬は緩みっぱなしだ。
「こらこら。靴を履いてないから下ろせないぞ」
その内、地面に下りたがり、傾くアーシャを禅一は慌てて抱き止める。
(しまったな。お散歩したかったのか。靴を履かせてくるべきだったな)
せっかく譲ってもらった靴があったのに、と、禅一は後悔する。
(いや、でも、ここには村のためって大義名分で、幼児を攫うくらい平気でやる奴らがいるからな。散歩はあっちの家に帰ってからだ)
禅一は歩かせてやれない事を謝るように、アーシャの頭をポンポンと撫でる。
キョトンとした顔で撫でられたアーシャだったが、またすぐに花が咲くように笑う。
禅一たちが使用している『離れ』は本家の隣にある。
但し、隣とは言っても、本家の玄関から離れまでは、優に百メートルは離れている。
敷地的には隣接しているのだが、延々と続く、瓦が乗った高さ二メートル程の白壁に、本家は囲まれているのだ。
この壁の横を五分程歩いて回り込むと、ようやく本家の、古式ゆかしい、立派な屋根瓦を戴いた
城といっても差し支えない程、本家は巨大なのだ。
村の最深部にある巨大な本家は、鬱蒼と茂った山を背景にしている為、息苦しいまでの圧迫感がある。
「へぇぁ〜」
全開にすれば五人は並んで通れる門を見ながら、アーシャが間抜けな声を出すから、思わず気が抜けて禅一は笑ってしまう。
口を開けたまま、周りをキョロキョロと見る様が、あまりに緊張感と無縁で微笑ましい。
門から入っても、すぐに建物にはつかない。
本家は門を囲むように、コの字の建物になっており、入って左右と正面に建物があり、中央は庭になっている。
庭と言っても、植木や築山、花壇などががあるわけではなく、門からまっすぐに伸びる道とその左右に玉砂利が敷き詰められた、広場のようなものだ。
真っ直ぐの道はそのまま建物の正面の階段に繋がる。
石灯籠の一つもない、がらんとした庭だが、アーシャは何が気になるのか、首を伸ばして興味津々で観察している。
唯一目を引く、巨大な手水鉢が気になるのかもしれない。
建物の正面に向かって真っ直ぐに伸びる道ではなく、入って左手の建物に続く、飛石で作られた道を、禅一たちは進む。
『屋敷』としての玄関は左手奥なのだ。
こちら側は松や楓などが植えられ、風流に仕上がっているので、アーシャは目を輝かせて見ている。
時々体を伸ばしすぎて落っこちそうなので、しっかり抱きしめていなくてはいけない。
「禅一さんが来られました」
恐ろしく広い玄関を開けると、義母が中の者に声を掛ける。
「「「お帰りなさいませ」」」
土間だけでも三畳はありそうな広い玄関に、濃い藍の着物を着た女性たちが集まり、跪く。
「………どうも」
何回やられても慣れるものではない。
ここは自分の『家』ではないし、自分もまた傅かれるような人間ではない。
渋い顔になりかけた禅一は、頭を下げていた女性のうち二人がチラッとアーシャを確認して、うふふと笑い合った事に気がつく。
禅一は「あっ」と声が出そうになったが、何とか堪える。
『若奥の会』のメンバーだ。
実際に見るとアイコンとかなりイメージが違うが、アーシャの無事を喜び合っている様子から間違いないだろう。
見られているアーシャと言えば、玄関に飾ってある巨大な木の衝立と、その前に飾られている花瓶を見て、惚れ惚れとため息を溢している。
「ふぁぁ〜あうみぃに〜」
厳粛な、上から押し付けてくるようなこの家の空気にも、全く臆してはいないようだ。
「宗主様がお待ちです」
年配の女性が道を示すように歩き出す。
義母は一緒に来ないようで、玄関に上がらず、そのまま踵を返した。
最上に報告でもしに行くのだろう。
玄関を上がり、廊下を進むと、一際頑丈に作られた扉が出てくる。
普通の扉とは全く違う、堅牢な造りで、あまり室内にそぐわない扉だ。
その取手の下には鍵穴が付いており、鍵無しでは開けることが出来ない。
扉の前には、この家を取り仕切っている、日本風に言えば番頭、西洋風に言えば家令である男が、鍵を持って立っている。
彼は深々とこちらに頭を下げてから、年配の女性に鍵を渡し、扉の鍵を開ける。
扉の先は四畳ほどの空間があり、そこに入ると、後ろ側の扉が閉められ、施錠される。
因みに、入ってきた扉の内側には鍵穴はおろか、ドアノブすらない。
屋敷側からしか開かない構造なのだ。
(この閉じ込められる感じが最悪だ)
腕の中のアーシャが怯えないように、何でもない顔をしているが、密閉された空間に入れられる、この感覚はどうしても慣れない。
小さな空間には簡易棚と二つの扉だけがある。
窓一つない完全な密室だ。
後ろのドアが外側から施錠されたのを確認してから、女性は渡された鍵で前にあるドアの鍵を開ける。
一つ目の扉と二つ目の扉は連動しており、一つ目の扉が施錠されるまで二つ目の扉は開けられないし、二つ目の扉が施錠されないと、一つ目の扉は開かなくなっている。
そこまでして、厳重に中の物を出さないようにしているのだ。
二つ目の扉をくぐると、その先は気持ちの良い回廊になっている。
前の部屋の圧迫感が嘘のように開放的で、大きな屋根のついた
庭は凝った造りで、季節の花々が咲き乱れ、外からの水流を分けて引いて来た川や、人工の滝、池などもある。
空間の小ささを感じさせない美しさだ。
奥には小さな竹林や植木が植えられ、ここを囲む高い壁から巧みに目を逸らす造りになっている。
一見圧迫感はないはずだ。
「……アーシャ?」
ないはずなのに、扉から出た途端、腕の中のアーシャはビクンと体を硬くした。
そして何かに怯えるように、ギュッと禅一のシャツを握りしめた。
「うに、うにぃ、うにぃあみぃ!うにぃあみぃっっ!!」
そして何か必死に訴える。
一体何を伝えようとしているのかわからないが、凄く深刻そうだ。
「………まさかトイレか!?」
禅一は慌てる。
補助便座を持ってきていない。
大人用のトイレを子供に使わせる場合、支えたら何とかいけるんだろうか。
自分であれば、誰かに支えられた状態での排泄など、出るものも引っ込みそうだ。
しかしここで一度帰って、離れのトイレに行くのは現実的ではない。
走っても十分はかかる。
小さな膀胱は、そんなに持ち堪えられないだろう。
意味もなくアーシャの背中をさすりながら、禅一は目まぐるしく考える。
「ご足労をかけて悪かったね」
父に会う前にトイレへ案内してもらおう。
そう思い定めた所で、渡殿の向こう側から影が現れる。
「っっっっ」
腕の中のアーシャがびくりと跳ね上がり、声の方向を見て、固まる。
微かにプルプルと震えている。
まるで怯えているかのようだ。
現れたのは長身でどっしりとした体つきの、岩のような体型の男だ。
足取りは水が流れるように澱みがなく、それだけで武道に通じている事がわかる。
顔つきは穏やかで、派手さはないものの、誠実な人柄が見てとれる。
「そちらが例のお嬢さんだね?……随分痩せて……」
ほぼ餓鬼のような外見のアーシャを見て顔を曇らせる。
彼こそが、この隔離された空間の住人であり、この村で最も発言権を持つ、宗主である。
穏やかで、優しく、金目当ての悪女にあっさりと騙されてしまった、一族の長には向かない人。
そして一族の為に、この閉鎖空間で飼殺しにされる事を、疑問なく受け入れてしまう人だ。
悪い人ではない。
寧ろ善良過ぎるほど善良で、真っ直ぐで、人を疑う事をしない清廉潔白過ぎる人だ。
「おっ……」
そんな人なのに、姿を見た途端、アーシャは怯えるように口に手を当てて丸くなる。
小刻みに震え、背中がじっとりと汗ばんでいる。
「突然すみません。トイレをお借りできますか?どうも急に具合が悪くなったみたいで」
そう言うと、気を悪くしたそぶりもなく、彼は頷く。
「まだ体調か万全じゃなかったんだな。唯子さん、案内を」
宗主は後ろに控えていた案内役の女性に声を掛けて、道を譲る。
彼が踵を返し、歩き去っていくと、アーシャの震えは少しづつ止まり始める。
そして宗主の姿が見えなくなったら、ハフっと小さく息を吐いてアーシャは禅一の胸にもたれかかる。
「もしかして………宗主が怖かったのか?」
これまで何かを怖がる素振りなどなかったので、肝の据わった子だと思い込んでしまっていた。
(しかし妙だな……)
自分で言うのもなんだが、宗主よりよっぽど禅一の方が人相が悪い。
宗主は顔も態度も穏やかで、誰にでも慕われる。
対する禅一は普通にしていても威圧感があるらしく、子供や小動物ととことん相性が悪い。
禅一を怖がらなかったアーシャが、宗主を怖がる意味がわからない。
(特定の奴を怖がると言うなら……以前からの顔見知り……?もしかしてアーシャの保護者……虐待をしていた奴が宗主に似ている……?)
ふっとそんな仮定が禅一の頭に浮かぶ。
保護者と言うことは親。
まさかアーシャは宗主の隠し子なのだろうか。
という事はこの子は生物学的妹?と、ちょっと嬉しくなってしまったが、すぐに禅一は首を振る。
宗主はある事情で四年前から、この閉鎖空間で過ごしている。
通いで世話をする者たちはいるので、隠し子自体は作る事はできるだろうが、子供なんかできたら、すぐに周りの知るところになるだろう。
それにアーシャは黄色人種ではない。
ハーフという線もあるが、こんな鄙びた田舎に欧米人は来ないだろうし、来ても宗主に会える確率はない。
(しかし宗主には外に出ている血縁がいたはずだ。従兄弟が……四人だったか?)
従兄弟のうち、会ったことのある二人は宗主と雰囲気が似ており、年に四回の儀式にも来ている。
なんらかの理由で彼らが、持て余した隠し子を殺すために禁域に置き去りにした、と言うのはありそうな気がする。
宗主の身内は優遇されているし、屋敷の中も自由に動き回れる。
この村に全く関わりがない人間が、山にアーシャを捨て、歩き回ったアーシャが偶然禁域に入ってしまった、と言うよりずっと確率的に高い気がする。
そう言えば、従兄弟のうちの一人は、禁域に入った者を罰するべきだと強行に言い張っていた。
(何一つ根拠がないただの予想だが、奴は宗主に似ているし……要警戒だな)
禅一は一人頷く。
彼の腕の中ではまだ小さく震えて、怯えるようにしがみついてくるアーシャがいる。
顔色は悪く、体も汗ばんだままだ。
「無理させてしまったな」
申し訳ない気分になって禅一は、アーシャの背中をぽんぽんと撫でる。
隠し子云々は完全な予想だが、宗主との対面はアーシャに負担をかけるようだ。
対面の方法を考えないといけないだろう。
(とりあえず、トイレには行かせておくか)
彼女が恐怖のあまり粗相をして、尊厳を失わないために。
禅一は先導する女性について歩き出した。
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