暗黒騎士団
「でやあああッ!」
俺は
斥候とはいえ、流石は暗黒騎士だ。
目にも止まらぬ速さで迫ったはずなのに、ほんの一瞬でも遅れれば、俺の刃は寸でのところで避けられて、暗黒騎士の身体を切り裂くまでには至らなかっただろう。
とはいえ、俺の実力には遠く及ばないけどな。
「さて。斥候は潰したことだし、このまま一気に敵の本丸へ攻め込むとするか」
俺はまず探知魔法で、この先にある城と城の周辺の魔力反応、そして周辺の地形を探った。
それで分かったのは、この辺りは平らな草原が広がっていて、地理的優位は望めない。
つまり純粋な力と力のぶつかり合いを仕掛けるしかないという事だ。
ならば、俺の取るべき作戦はたった一つ。
「突撃だ!」
身体に更に
後ろから続くレーナ、マリー、イリスの魔力反応がどんどん遠のくが、そんな事は気にしない。
魔王ティアマトに負けてから始めての復帰戦だ。
思う存分、暴れさせてもらうぜ!
城の前まで来たところでまずは挨拶代わりにと城門を破壊する。
燃え盛る城門を潜って俺は城内に侵入する。
「聖剣バルムンクを返してもらいに来たぞ! 死者の墓を荒らす盗掘団はこの俺が成敗してやる!!」
「人間だ!」「人間の襲撃だぞ!」「敵は小僧が一人だ! さっさと殺せ!」
黒の鎧兜に身を包んだ暗黒騎士が次々と現れて俺を取り囲む。
そして一人、また一人と俺に向かって剣で斬りかかってくるが、俺はそれを軽く制して返り討ちにする。
暗黒騎士というだけあって、その太刀筋は悪くない。この前、戦ったゴブリンとは全然違う。
だが、それでも俺の敵じゃない。
俺は一人、また一人と確実に暗黒騎士を斬り伏せていく。
純粋な剣技のぶつかり合いはそれなりに楽しいが、これだと時間が掛かりすぎるな。
こいつ等にはちょっと悪いが、ここは術で一気にやらせてもらうか。
俺は右足を軸に身体を回転させ、横一線に炎剣を振るう。
俺の魔力から生成された炎は、俺の斬撃に合わせて横に広がり、俺を取り囲んでいた暗黒騎士達を一撃で焼き払った。
「よし。ほぼ片付いたな」
掃除が済んだところで、俺は聖剣バルムンクの魔力反応を探知しようと試みる。
だが、その必要は無かったとすぐに思う事になった。
なぜなら、
「まさか我が騎士達をたった一人の少年が倒すとはな」
さっき倒した騎士達と似た鎧に身を包んだ、四十代半ばくらいの年長騎士が俺の前に現れた。
長い黒髪を後ろで一本に縛り、大柄の体格をしたその騎士は如何にも騎士団の長という威厳を醸し出している。
「あんたが暗黒騎士団団長アスタロスか?」
「如何にも」
そう言う彼の右手には、柄に青い宝玉が埋め込まれた宝剣が握られている。
間違いない。あれは聖剣バルムンクだ。
「だったら、あんたがその手に握っている聖剣を返してもらおうか」
「せっかく手に入れたものを大人しく返すとでも?」
「勿論、そんな都合良く行くとは端から思ってないさ。ただ言ってみただけだ」
俺は地を蹴って空中へと飛び上がる。
そしてアスタロスの頭上からまずは挨拶代わりにと
こいつはただ水を圧縮しただけの弾だ。
元々サポート向きの
この水弾は威力こそイマイチだが、魔力消費は少ないし、術の発動に要する時間も短い利点がある。
狙い通りアスタロスは聖剣バルムンクを抜剣し、飛来した水弾を全て弾き飛ばす。
「この程度じゃ隙も見せないか。流石は団長様だ!」
重力による自由落下に身を委ねて、俺は炎剣でアスタロスに斬り掛かる。
水弾を弾いてからのアスタロスの身のこなしは素早く、いとも容易く俺の斬撃をバルムンクで受け止めた。
そしてアスタロスは聖剣を振って、俺を再び上空へと叩き飛ばそうとしてくる。
尤もその前に俺は、
「中々やるな、少年。だが、小手先の技で勝てるほど私は甘くは無いぞ」
「だろうな。だったら俺も、少しは本気を出してやるとするか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます