初任務

 そろそろ魔族の拠点が見えてこようとしていた


「この辺りには確か古い古城があったはずだけど。もしかしてそこを拠点にしているのかしら?」


 流石はマリー。事前の下調べは万全のようだ。


 イリスが車を止めて、俺達は外に出る。


「さてと。それじゃあまずは俺が突撃するから、三人は俺の後に続いてくれ」


「相変わらずざっくりとした指示ね」


「ホントだよね。一年前を思い出すよ」


「ふふふ! それでこそご主人様です!」


「それじゃあ行くぞ!」


 俺は自分の身体に風の精霊シルフの加護を掛ける。

 これにより俺は疾風に身体を乗せて、速く動く事ができるようになる。


 次は土の精霊ノームの加護を付与する。

 これで身体能力を底上げだ。


 二つの精霊術を重ね合わせる事で、現世の強化魔法では到達できないほどの俊敏さと怪力を発揮できる。

 俺はこの二重精霊術を使って森から飛び出し、魔族が拠点にしている古城へと単身で突っ込む。


 前世で契約した四大精霊、風の精霊シルフ土の精霊ノーム、火の精霊サラマンダー水の精霊ウンディーネ

 この四体の精霊が俺の今の武器というわけだ。


 前方に見張りのゴブリンが三体か。

 マリー辺りなら、気付かれないように始末して古城に潜入、と行くところだろうが、生憎俺はマリーじゃない。


「これが俺流の戦い方だ!」


 火の精霊サラマンダーとの契約で手に入れた炎の力。

 この力を右手の掌に集束させて、一気に打ち出す。


 放出された膨大な魔力は炎の柱となって古城の壁を焼き尽くし、その上にいるゴブリン達を余熱で焼き払う。

 煉瓦造りの城壁は最初こそ俺の炎に耐えるが、次の瞬間には超高温に耐え切れなくなって吹き飛んだ。


 火の精霊サラマンダーの炎は、この世にある物質全てを焼き尽くす事ができる無敵の炎。

 そしてその炎を風の精霊シルフの突風で加速して威力を増大させたんだ。


「さてと。これで突入口は開けたな」


 このまま火の精霊サラマンダーの炎で古城ごと焼き尽くしても良いが、それじゃあつまらない。

 ここは当然、突撃だ。


 俺が古城の城内へと突っ込むと、剣や槍を手にしたゴブリン達が奥から続々と姿を見せた。


 ゴブリンは魔族の中で下級魔族と言われるほど知能と戦闘能力が低い。

 そんなゴブリンにしては、対応が早いな。

 しかもいっちょ前に隊列まで整えている。


「これは、上級魔族がいるな」


 ゴブリンは魔王軍における雑兵。

 知能は低いが、自分達よりも上位の魔族には従順だ。

 つまりここには、このゴブリン達を統率している上級魔族がいる可能性がある。


「だったら、こんな雑魚の相手をしてるのは時間の無駄だ。この時代の上級魔族の実力を早く確かめたいしな!」


 そうと決まったら、雑魚はさっさと片付けるか。


 火の精霊サラマンダーの炎で俺は目の前のゴブリンを一気に焼き尽くした。

 後ろの三人にも獲物を残してあげたいところだけど、久しぶりの実戦だからか、どうも力加減がうまくできない。


 三人には悪いけど、全力で行かせてもらうぜ。


 右手に火の精霊サラマンダーの炎を集束させて炎の剣を作り出す。

 こいつはこの世の物質全てを焼き切る事ができる。文字通り全てを切り裂く俺のとっておきの炎剣だ。


「よっと」

 俺は軽く地面を蹴って空中へと飛び上がり、敵陣へと飛び込んだ。

 先陣に立つゴブリンの頭をクッション代わりにして着地し、右手の炎剣で心臓を一突きにして止めを刺す。


 目の前にはゴブリンの軍勢が数百。

 そいつ等に向かって俺は、炎剣を横一閃に振り、それに合わせて炎の津波がゴブリン達を襲う。


 一振りで百はやれたか。まあ、こんなものだろう。

 雑魚はさっさと片付けて先を急ごう。


 上級魔族と早く戦ってみたいしな。


 俺は炎剣でゴブリンを斬って斬って斬りまくった。

 久しぶりの感覚に、つい大人げも無くはしゃいでしまうが、考えてみれば今の俺は十三歳。れっきとした子供だし、これも年相応の反応だよな。

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