第2話 『夫の場合』

だんだん雲行きが悪くなってきた。

明かせる秘密がだんだん少なくなっていく。


あれも言った。

これも言った。

次は、何を明かそうか。


私は、いつの間にか、妻に嘘をつくようになってきた。


その内容がどんどんエスカレートしていく。


貯金が一億あるだの、

別荘がある。

大手株主だの、

次から次にホラを吹き、

それを秘密だと言って

得意気に語るようになってしまった。


そうなると、妻の秘密も本当かどうか、

疑わしくなる。


しかし、自分は嘘をついているので、

人を責められる立場にはいない。


秘密は、

本当かどうかより、

より多くの秘密を

考え出し、

その場をごまかせれば

それでいいのである。


いつの間にか、秘密を思い出すのをやめて、

作り話をすることに躍起になっていた。


そんなある日、妻がなんとなく元気がないように感じた。


やはり自分の嘘に感づいているのか、

妻もバカではない。

いつか気づいてしまうだろう。

その日がすぐそばまで迫っている気がした。


妻に打ち明けようかと必死に悩んだ。


悩んで悩んで、


そして、


秘密を明かす夜になる。


お互いにじゃんけんをして、


自分が、勝つ。


そして自分から、


『実は君に話がある』


そう言うと、


妻は、


『奇遇ね、私もよ』


と言う。


『君からどうぞ』


『あなたからどうぞ』


とお互いに譲り合っていつまでも言い出せないので、せーので言うことにした。


『せーの!』


『今までのことは(今までのことは)


ぜんぶ嘘だったの(ぜんぶ嘘だったんだ)』


『え?!』


『え?!』


妻も自分と同じように嘘をついていたというのだ。











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