秘密の路地裏

銀風 カイト

秘密の路地裏

今日も、かあちゃんの買い忘れた豆腐を買いに行く。


「あのゴリラめ!これで何回目だよ!」

通行人の顔を見ると、どうやら心の声が漏れていたようだ。いや~うっかり、うっかり。


そう、この行動は1回、2回じゃない。これでもう164回目だ。

中学2年生の始まり頃からだから・・・って、そう考えると『 ウチめっちゃおかずに豆腐でてんなっ!』今度は、心の中だけで我慢できた。


“ 自称魔女 ” の、かあちゃんは、最近ずっとこの調子だ。というか増えてる。

かあちゃんは、顔はソコソコ、残りはザンネン。態度がでかくて、バナナが大好き。オレはいつも、心の中でゴリラって呼んでいる。


そんなこんなしているうちに、いつもの豆腐屋さんだ。

いつもは、そこそこのお値段でちょっと美味しいヤツ。と指定されている。でも、今日は、うんと安い豆腐を買ってやる。

「一番安い豆腐ください。」

今日は、そう言ってやった。

豆腐を買い終えると、余ったお金で、今日はゲームをしに行ってやった。


何時間か経った。


「あー楽しかった。」

時間なんて気にしてなかったが、時計を見ると9時だった。

やべっ!かあちゃんに怒られる!心の中でそう思い、急いで自転車にまたがった。

「近道、近道!」そう呟きながら、人通りのない路地裏に向かった。




「ん!?ここどこだ。」

オレはそう言った。いやその言葉しか、思いつかなかった。


「ボウズ迷子か?」

突然目の前に現れた、体格のいい男がそう言った。

「一緒に、お前の母ちゃん探してやろうか?」


このおじさんに僕は何歳に見えてるのだろう?もう中学生だぞ!

怒りの気持ちを抑えて、僕は答える。

「いや、その・・・ここどこですか?」


周りを見渡す限り、あきらかにさっきいた場所じゃない。

どこだここ・・・。


「ん!?おかしなやつだな。初めて来たのか?教えてあげよう、ここはみんなが知ってる、欲しい物は何でもそろう魔夜中商店街まよなかしょうてんがいだ!」

男は大きな声で言った。


バカげてる。そう思った。

コイツ頭がおかしいのか?頭の中では、そんな言葉が浮かんでいた。


「んで、ボウズ。お前の母ちゃん探してやるから、お前の母ちゃんの特徴を言ってみろ。」

男は言う。


「いや、大丈夫です。」

僕はひとまず答える。


「いいから、いいから。遠慮するな。おじさんに言ってごらん。」

男はひかない。


言わないと帰れない雰囲気になってきたので、特徴をいってみる。

「顔はソコソコで、ゴリラみたいな感じです。」


男は一瞬言葉につまり、

「すまん。その情報だけじゃわからんな。」

申し訳なさそうに言った。


すると、男の手に持っているものに目が留まった。

「それは、何ですか?」

訊いてみる。


「新聞だよ。今朝のな。」

そう言って、手に持っている新聞を見せてくれた。


 『!!』

そこには、あのゴリラが写っていた。

「ねえ、この人って有名なの?」


すると男は

「ん!?こいつを知らんのか?やっぱおかしなやつだな。」

そう言って、大きな声で笑った。


「教えてやろう、こいつはな、ツリー・マウスって言って、マウス社の社長だ。また新しい道具を、売るのやら、なんやらで。」

男は何だったかな・・と首をかしげて、思い出そうとしていた。


そこに新聞があるのに・・どうして読まずに思い出そうとしてるんだろう・・・。あれ?とぼくは首をかしげる。

ハッ!目の前の新聞が、真っ白になっているのである。

「おじさん、この新聞・・」

そう言いかけた時


「まずい!夜が明けるぞ!!」

男が叫ぶ。


「一緒に探してやれなくて悪いけど、お前の母ちゃんはもう家に帰ってるかもしれねぇから、ボウズもさっさと家に帰りな。帰り道は、後ろを真っ直ぐだ!じゃあな!」

男は慌てながら言うと、どこからか、ほうきを出してまたがり、あっという間に飛んで行った。



頭の中が真っ白になる。夢なのか現実なのか、わからない。



『そうだ!早く帰らないと、かあちゃんに怒られる!』オレは急いでチャリに乗り、男が言った方向へと走った。無我夢中で走り続ける。

すると、あたりが急にいつもの風景に戻る。


何だったんだろう・・・。と思いながらも、あの新聞に載っていた、かあちゃんの姿が気になり、すぐに家に帰った。一刻も早く、真実を確かめたかった。

急いでいて、どの道を通ったかわからないほどだった。



家につき扉を開ける。

ガチャッ。


「あら、トビー。遅かったじゃない。心配したのよ。」

かあちゃんは心配そうな表情をしながらも、何かを含んだ顔をしていた。


そんなことはオレの耳に入らなかった。

「かあちゃん、本当に魔法使いなの!?」


「そうよ~。前から言ってたじゃない。急にどうしたの?」


「オレ、魔法の商店街ってとこにさっきまでいて、かあちゃんが魔法の社長だって聞いたんだ。」

オレは、さっきの男から聞いた情報を、真実なのか確認する。


「やっぱ、あんた魔法使いの素質あったのね~。」

突然かあちゃんが言う。


『は!?何言ってんだ、このゴリラ!質問に答えろ!!』そう思った。が、口に出すのは我慢して、聞いた。

「どういうこと?」


「あんたが行ったとこ、魔法使いしか行けないとこなのよ。そうだ!あんた魔法の学校に行けば~?」


なんかのドッキリか?

でも、魔法の学校ってなんかおもしろそうだなぁと思った。


「そんなとこ本当にあるなら、行ってみたい。」

照れ隠しで、無愛想にオレは言った。




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秘密の路地裏 銀風 カイト @Sirokaze_Kaito

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