11


side. Subaru






「ひゃぁ~オレこーいうとこ来んの、兄ちゃん達と中学ん時来て以来だよ~!」



最年長の円サンが、一番子どもみたいにはしゃいでいる姿は…微笑ましい光景なんだけど。


対する俺の顔色は、かなり冴えない。



何故なら…







「ほらほら、昴クンに晃亮クンも急いで~!」


「…………」


いい年した男が3人。

うち2人は外見からしてガラの悪い、ヤンキーなわけで…。

全くもって奇妙極まりないメンツで遥々やって来たのは、



…────────遊園地。







「遊ぼーなんて言うから、若い2人にはこういうとこが良いかなって思ったんだけど…」


「初めて来た。」


「そぉなの!?楽しいよ~遊園地!」


「…………」


何故こんな事になったのか…

加えて、どうして俺まで一緒なのかと言うと。

驚くなかれ、晃亮が円サンにデート…のお誘いをしたから、らしい。


円サンにその自覚は皆無だったが…。





その際、行き先を円サンに委ねた結果、遊園地行きが決定したようで。

いきなり晃亮から、日曜日に円サンと遊びに行くんだと聞かされた時は、かなりショックを受けたのだが…。


それよりも更に上をゆく衝撃発言に、俺は言葉を失った。







『すばるも来い。』


晃亮に命令されたら、従うしかないものの。

まさに理解不可能な申し出に、

正直俺は、戸惑いを隠せなかった。









「うぁ~なんにしようかなあ?やっぱり最初が肝心だよね!」


どれ乗りたい~?とか言いつつ、パンフレット片手に勝手に歩き出す円サン。


対して遊園地には無縁の俺と晃亮は、落ち着いたもので…。

見た目も円サンのが幼いし、背も低いから。

どっちが子どもか判りはしない。



こういう年上を気取らない自然な所も、円サンの魅力なんだけど…。






「2人とも、日が暮れちゃうよ~早く!!」


かなり前方で両手を振る円サン。

チラリと見た晃亮は、まず無表情にしか見えないけど────…





(笑って、る…?)


長いコンパスですたすた追いつき、晃亮は円サンの目前で立ち止まる。


…と、






「わっ…なになに!?」


「ッ……!!」


…目を細め恍惚とした表情で、円サンの頭を撫でる晃亮の図。



円サンは照れ臭そうに俺を振り返り、助けを求めてくるものの。

俺は内心、メチャクチャ動揺しまくっていたから。


ただ苦笑うしかなかった。









「はぁ~…流石に絶叫マシン連チャンはクるね…。」


敷地内に設置されたテーブルに身体を預け、ぐったりする円サン。





「2人は、平気そうだね…」


寝そべったまま、俺と晃亮を交互に見やる。





「うぅっ…若いって良いよね~。」


「円サンもまだ18じゃないすか…」


嘘泣きだと解ってたけど、一応フォローしておく。

俺が会話しないと、間が持たないのが現状だったからだ。






「なにか、飲むか?」


そう申し出たのは晃亮。

あの晃亮が自らパシリを買って出るなんて、まずあり得ない光景だ。






「ん~シュワシュワするのが飲みたいなぁ~…」


鈴高のトップとも知らず、ここまで使いこなす円サンはもっと凄いと思う…。







「すばる。」


「あ、はい…。」


円サンを席に残して、2人売店を目指す。

とは言っても、さほど離れてはいないから、円サンの様子位は確認出来た。






「メシも、食うか。」


時計を見れば昼を少し過ぎていて。

とりあえずホットドッグとポテト、ドリンクを買って席に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る