3

side. Subaru






「いらっしゃいませ~。」



嫌でも腹が鳴ると思ったら、昼もだいぶ過ぎていて。

仕方なく、学校近くのコンビニへと立ち寄る。

店員の業務用な挨拶はスルーして。弁当コーナーまで一直線に突き進んだ。






ちらりと店内を見渡せば、雑誌を読み耽っていたサラリーマンなんかがチラホラいたが…。俺と目が合うなり、慌てて本を棚へと戻すと、店から逃げるように出て行く。



見た目は至って普通のヤンキー。

髪は全体的に黒いけど、前髪には少しだけ赤くメッシュを入れてたし。耳には晃亮と同じ、二連のピアスをはめていた。


目つきも悪いし元々表情が薄い所為で。いつも不機嫌そうだと、晃亮にすら言われてたぐらいだったから。

他人からの第一印象は、間違いなく最悪なんだろう。






何より一番恐れられる理由、それはこの学ランが要因。

晃亮と同じそれは、県内屈指のの証。

最初はヤンチャ者の集まり程度だったこの学校も。

ずば抜けた晃亮ひとりの名の下に、悪名が広く知れ渡り…今や裏世界では″最恐″と唱われるようになった。


その鈴鹿すずか高校のもの…だ。






この学ランを着てるだけで、人の群れは滝のように俺達から遠ざかって行く。

例え未成年だと解っていても、酒だろうが煙草だろうが、無言で売ってくれる位だ。



今や店内はもぬけの殻。

さっきのダルそうなチャラい店員も、慌てて奥に非難したみたいだし。



別に俺は晃亮みたく、手当たり次第に人を傷つけたりはしないのに。

昔はこういったあからさまな嫌悪に、うんざりする時もあったけど…。既に在り来たりと化したこの光景を、気にするような事はもう無くなっていた。


別に、どうでもいい。









「ねぇ、キミ。」


弁当を選ぶ訳でも無く。

ボーッと陳列棚を眺めていると、すぐ真横で声を掛けられて。思わず振り向けば。


そこには──────…







「鈴高の子でしょ~?ダメだよ~堂々と学校サボっちゃ!」


ニコニコと、けれど決して媚びてるとかじゃなくて。

例えば、近所の悪戯っ子を優しく窘めるみたいな…ごく自然な振る舞いのソレ。



話し掛けてきた人物は、至って普通のアルバイト店員で。どうみても不良な俺とは、まず関わろうとしないような…本当に何処にでもいそうな、ちょっと垂れ眼で愛嬌のある青年だった。


そんな奴が天下の鈴高生徒を相手に、説教を噛ますだけでも驚くべき事態だが────…






「ん?どしたの?オレの顔、なんか付いてたかな…?」


立ち尽くす俺に、首を傾げて顔に手をやるこの人を。


俺は、知っていた────…






「あ、んた…」


「はいな?」


ずっと探してた。

たった一度、ほんの一瞬の出来事だったけど。


「あんた、あの時の…」



俺の中で、″あの日″は。



特別になったんだ…

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