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side. Subaru





嘘みたく澄んだ青一色の、春の空の下で。

俺は珍しくで、特に宛もないままに歩いていた。





大乱闘後の翌日とあって、俺の身体はズタボロ。

それがほぼ毎日ともなれば、喧嘩にも痛みにも随分と馴れはしてはいたが。

流石に2人だけで、20人近くを相手にしたのだから…多少の怪我は免れない。




それでも普通に考えたら、この程度の怪我で済んだのは奇跡なんだろう。

2人で…と言っても、相手の大半を完膚無きまでにブッ潰したのは。


晃亮の方、だったんだから。








晃亮は今、家で寝てる。…と言っても実家じゃない。

晃亮が高校を上がってすぐ、彼の親から厄介払いとばかりに、マンションの一室を買い与えられたから。

必然的に俺もくっついて、一緒に住むようになった。





自由と言う名の牢獄。

裕福で何不自由なく見える生活も。裏を返せば、を放棄した大人達の考えついた、その場しのぎの言い訳で。

デカくなるにつれ扱いづらくなった、俺達に対する妥当な配慮…といった所なんだろう。







喧嘩の後の晃亮は、まるで電池切れしたみたいに翌日はずっと寝てる事が多い。



晃亮は俺なんかとは格が違うから。

敵と見做せば最期、容赦などしてくれやしない。

かなり顔が整っている分、無表情で人を殴り飛ばす姿は、機械仕掛けの人形みたいなもんで。

泣き許しを請う者にすら、慈悲など無く。その長い足で容易に踏みにじるから。


無心─────…そうなんだ、きっと。







俺も、感情的なタイプじゃないと自負してるけど。

晃亮の場合は、そんな甘っちょろいモンじゃなく。

俺ですら未だに、人を殴る事に躊躇う時があるし。例えどんなに許せない相手だったとしても…あそこまで非道を貫ける自信はない。






愛された事が無いから、


愛する事を知らない。


優しくされた記憶が無いから、


優しくする術を持たない。





ほんの少し前の俺なら、一番理解していた筈なのに。

今の俺はもうしまったから。晃亮に対する気持ちが、昔とは全く変わってしまった。



までは、確かに同じモノを見ていた筈なのに。


“尊敬から同情へ”


晃亮の背を追う俺は、無感情で無機質な彼を。

可哀相だと、思ってしまったんだ────…。






俺の異変に本能で勘付いた晃亮も。

それ以来、俺の扱い方を変えた。

常に傍に置き、弟ではなく、それこそ舎弟のように。必要とあらば、命令を下すようになったんだ。





お互い小さな頃から依存し合った、歪な関係。


″俺が晃亮から離れていく″

心を捨てた晃亮は気付いてないのかもしれないが。

きっと…独りに、なりたくなかったのかもしれない。






絶対的な力である晃亮の右腕となり、彼が修羅場に立とうものなら。

俺は迷わず、先陣を切るだろう。


一度でも晃亮を見下してしまった…俺の罪。

口には出さないが、許されはしない。




晃亮が風になってしまったのは、


俺の所為、なんだ…。

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