第29話

「へ、消えた」


「うん、夜叉は逃げたよ」


 いつもの子供の姿に戻った大が声を掛けてきた。


「大、勝ったの?」


「うーん、引き分けってとこかな。それより、玉は?」


 そうだ、玉は?私を守ってくれていたはず。


「えっ」


 玉はいた。私のすぐ隣に。ボロボロの姿で。


「死霊としても死んだから、夜叉が他のアカングワーマジムンのように回収しなかったんだな」


「玉、死んじゃったの」


 私を守るために?

 仲良くしたのなんか、ほんの数時間じゃないか。

 そんな短い時間だったのに……


「玉にとっては、沙耶は誰よりも大好きなお母さんだったんだね」


「玉、いや玉、玉ーーーっ」


 涙が止まらない。ママ、ママと笑顔を向けてきた顔が瞼に焼き付いて消えない。そんな中、玉が光に包まれ始めた。


 消えちゃう

 玉が消えちゃう


「いや、連れて行かないで。お願い、お願い、

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