第27話

「ご明答。よくわかったな」


「何なの夜叉って」


「めちゃくちゃ強い悪鬼だ」


「大、勝てるの?」


「たぶん」


 えっ、大でも勝てないかもしれないの。これはヤバいんじゃ。逃げたいけれど、ママ、ママと言ってくる玉をおいても行けない。


「ほう、お前、ただの屋敷神ではないな。ならば、女はお前たちに任せる」


 そう言って、夜叉は再び手を挙げると五体の赤ちゃんが現れた。赤ちゃんたちは、ハイハイで私に迫ってくる。


「気をつけろ、全部アカングワーマジムンだ」


「ひぃぃぃ」


 どうしたらいいんだ。玄関方向には夜叉、窓の方向には五体のアカンなんとか。森沙耶、終了のお知らせが鳴り響く。


 その時、腕に抱いていた玉が暴れだし床に落としてしまった。


「玉、大じょ」


 玉は向かってくるアカン何とかに一人で立ち向かい、私に近寄らせないようにしている。


「玉っ」


 玉はその小さな体で必死に私を守っている。


「何をしているのだ、その死霊は。ええい、役立たずめ。その死霊ごと殺してしまえ」


「そうはさせないよ」


 いつの間にか、本来の青年の姿になった大が夜叉のすぐ隣に立っていた。

「くっ」

 横に飛び退きながら、大に向けて腕をふるった。長く伸びた爪が大の頬を切り裂き、鮮血が舞う。


 神様も血が流れているのか。しかも普通に赤って、神様何だから金色とかじゃないのか。そんなどうでもいいことを考えている私もピンチだ。一対五、どう考えても玉に分が悪い。今も玉の首や腹部には他のアカン何とかの腕が巻き付いている。このままじゃ、玉が死んじゃう。


「玉、頑張れ。後でいっぱい甘えさせてあげるから、だから、頑張って」


 応援するしかできないはがゆさ。それでも股の下を通らせないために座り込む程度のことはできる。何があっても絶対に立たない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る