第14話

 相変わらず、シャーッシャーッ言って噛みつこうとする相手を、絶妙な間で躱して反撃している。さっきとは違って楽勝ムードだな。やっぱり、本来の姿は強いんだな。しかも超絶イケメンだし、あの透き通るような肌……んっ、ちょっと待て、本当に透き通ってきてないか。大の姿が薄くなってきていないか。


「大、あんた薄くなってきてない?」


「さすがに屋敷の敷地外で、全開で神力使ってるから燃費が悪くて」


 大はそう言いながら、相変わらず華麗に相手の攻撃を避けつつ、確実に攻撃を当てているのに、あまりダメージが入ってないような。それに、さっきよりも薄くなってきた気がする。なんで薄くなってるの。あっ……。


”居憑いた家の敷地から長時間離れてしまったりした場合に野良になってしまうんだ”


”消滅するか邪神になっちゃうか”


 そんなことを大が言っていた。今、大がいるのは門の外、つまり敷地の外だ。ヤバいじゃん、薄くなってるのって、野良になりかけてるんじゃないの。


「沙耶、コイツ本当に手強くて、このままじゃヤバい。頼む、家に行って、僕の大切なアレを持ってきて欲しい。沙耶にはたいへんだと思うけれど、お願いだ」


 私はその言葉を聞いてすぐに家に向かってダッシュした。大の大切なモノか、たしかに私には大変な覚悟がいるな。チラッと大の方を見ると、私が家に入ろうとしている姿を見て安心した表情を浮かべている。本当に必要なんだ、と確信した私は、それこそ靴も脱がずに家に入った。大の大切なモノたちが詰められている引き出しに手を突っ込み、その全てを鷲掴みにした。そして、それらを持って再び門に急いだ。


「ハアハア、大、持ってきたよ、いっぱい。これでパワーアップできるんでしょ」


 そう叫んで、私は持ってきた大の大切なモノたちを大に向けて投げた。一枚じゃパワーアップに足りないって言ってたから、今回は出血大サービスだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る