第11話

「僕さ、この家に「もう、いいよ」


「もう、いいよ。その話は。今はこの家の屋敷神なんでしょ。それで十分じゃん」


 大が野良神様だった過去なんて聞きたくもない。知りたくもない。エロ神でもセクハラ神でも、今はこの家を繁栄させて守ってくれてる屋敷神と働いているんだから。過去なんてどうでもいい。


「沙耶、何かありがと」


「いいよ、別に」


「あとさ、言っておかないといけないことがあるんだ」


 さっきの野良神様や邪神みたいなヤバい話がまだあんの。大の正体が何でもいいよ、ここに居てくれるなら。


「さっき、お風呂のドアが御札のせいで通り抜けられなくて、力を強くするために沙耶がお風呂場で脱いだパンツを頭に被ってみたんだ」


「はあっ」


 何だ、コイツは。変態仮面なのか、パンツ被ってパワーアップするのか神様は。それが本当ならば、お賽銭箱の隣におパンツ箱でも用意しておけ。っていうか、脱ぎたてホカホカのパンツを被られた私のこの怒りと恥ずかしさがわかるだろうか。


「でも、パンツ一枚だけじゃそんなに力は強くならなかったけれど、僕にとって大切なモノだから洗濯ネットに入れておいたから安心して」


 何で私のパンツがお前の大切なモノなんだ、このエロ神。

 何枚パンツ被ればパワーアップすんだよ、このセクハラ神。


「出て行け、このエロ神」


 前言撤回。今すぐ、野良神になっちまえ。なんなら、後ででっかい段ボール用意してやる。そこに、誰か拾って下さいって書いておいてやる。引き取り手がなかったら、保健所に連れて行かれてしまえ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る