第10話

「一番最初? 随分昔の話だけれど、僕はすごくタイミングが良かったんだ」


 タイミング? まったくわからん。


「僕らみたいな屋敷神が家に憑くには二通りの方法があるんだ。一つは、神様のいない神棚に自然発生的に生まれる場合、もう一つは野良神様が居憑く場合」


「野良神様? そんな野良犬や野良猫みたいに神様も野良になるの?」


「うん。例えば居憑いた家に人がいなくなったり、居憑いた家の敷地から長時間離れてしまったりした場合に野良になってしまうんだ」


「その野良神様になっちゃったら、どうなるの」


「運良く誰も憑いていない神棚を見つければ、そこで新たに屋敷神として存在できるんだけれど、それが見つからない場合は消滅するか邪神になっちゃうかするんだ」


「邪神?」


「うん、神様としてのことわりを忘れて、自分の欲求のみを追求する存在になっちゃうんだ、それが邪神さ」


「じゃあ、大のエッチな性格やセクハラ止めないのも邪神になっているからなんじゃない」


 私は笑いながら、からかった。そう軽い気持ちでからかったつもりだった。でも、大の方を見ると俯いて黙り込んでる。あれ、なんか言っちゃダメな内容だったのかな。


「あの、さ。大?」


「うん、そうなのかもしれない」


 えっ、ちょっと待ってよ。冗談のつもりだったのに。


「さっき、僕がこの家にどうやって来たのかって訊いたよね。僕はもともと野良神だったんだ」


 大が、野良神様だったなんて……

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