第2話

 ちなみに、大という呼称は、私がひどい便秘中、トイレで戦っている時に急に目の前に現れられたため、驚いた拍子であと少しで出そうだった私の"大"が引っ込んでしまった。その時、「あんたが出てきたせいで、私の大切な"大"が出なくなった」とブチギレたら、「じゃあ僕を沙耶の大切な大と同じで、大って呼んでよ」とサラッと言ってきやがった。超美形にそんな事を言われて、パンツを下ろして座っていた守備力の低い私は考えもなしに思わず、「うん」と応えてしまった。


 大は、私のご先祖様がこの土地に屋敷を構えた二百年以上前から、この家を守ってくれているらしい。そして、大の姿は代々当主には見えたり、会話できたりする。私は約百五十年振りの女性当主(代理)だそうだ。この久しぶりの女性当主である私と話すことが何より嬉しいようだ。


 が、残念ながら私には信仰心と呼ばれるモノは、微かにしかない。なので、あまりにお風呂やトイレを覗いてくるこのセクハラ神へのお供えを、反省のために一週間行っていない状況だ。


 お祖父ちゃんもお父さんも、毎朝バカでかい神棚を掃除して、しっかりとお供えをしてお祈りをしていたから、一週間何もしてもらえないなんてことは大にとっては初体験だったのだろう。罰当たりと怒られるかもしれないが、私にとっての大は、ただのセクハラ神でしかないので全く怖くない。


「じゃあさ、お風呂は諦めるからお米供えてもらえない?」


「………」


「せめて、塩だけでも」


「………」


「すいませんでした。水だけでも結構ですので」


 よし、だいぶ首を垂れてきたな。


「もう、お風呂やトイレを覗かないと約束するなら、お供えするけれど」


 大はびっくりするほど目と口を大きく開けて、うんうん考え始めた。お供えより、覗きが大切なのか、このセクハラエロ神は。


 まさに苦虫を噛み潰したような苦悶の表情で、お供えを要求してきた。自分で言うのも哀しくなるが、私の裸にそんなに価値があるのか。平均的な胸や尻、なんなら左右の胸はソッポ向いていて所謂サヨナラオッパイだぞ。

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