第3話

 とりあえず、私は神棚を掃除して新しく水、塩、米をお供えして、不承不承柏手打って頭を下げた。


「ふぅ〜、危なかった。死ぬとこだったぜ」


 いや、このセクハラエロ神、命懸けでお風呂を覗こうとしていたのか。っていうか、神様って死ぬのか。私は初めて大に、畏怖の念を抱いた。


「おっ、沙耶、今、僕に畏怖の念を抱いたね。やっと僕の凄さを理解してきたのかな」


 私は静かに立ち上がり、供えたばかりの水や塩を片付けようと手を伸ばした。


「申し訳ありません。調子に乗りました。ただ、僕も働いている神様だって沙耶に分かってもらいたくて」


「何、あんた何か神様っぽい仕事してんの?」


「当たり前だろ。僕が悪いモノたちから、この家を守ってるんだぞ」


 まったく思い当たらない。大がしていること、お風呂場覗き、トイレ覗き、以上。これのどこが神様らしい仕事なんだ。神様、暇そうでいいな、時給いくらだよ。


「そんなに言うなら、何か最近やった神様っぽい仕事を話してみてよ」


「さっ、最近は治安もいいし、侵入者など少ないし」


「要するに何もしてないんでしょ」


「いや、僕の問題じゃなくて、世の中がね」


 タダ飯神様乙。少しは働きやがれ。お供えは、週一でいいか。

 分が悪いことを察してか、大はいつの間にか姿を消していた。


 この辺りは、都会とも田舎とも言えないレベルで微妙に栄えているが、治安はとても良い。もちろん、戸締まりはしっかりとするが、泥棒に入られた、などという話はまず聞いたことがない。こんな平和な土地に屋敷神など要らないんじゃないかと思いながら眠りについたそんな夜……


 ガタッ

 という聞き慣れない物音で目が覚めた。手元のスマホで確認すると二時三十分。草木も眠る丑三つ時ではないか。


 ギシッ

 何の音?

 泥棒、幽霊、どっちも怖いじゃないか。自慢じゃないけれど、私は極度の怖がりだ。好きな男性のタイプは、ラグビーで言う二番(スクラムを組む時の最前列の真ん中)だが、私自身はか細くか弱い(自称)。こんな時に助けに来てくれる彼氏もいない。

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