第5話 波乱のお披露目会②

「さて今回はもう一人いまーす! 勉強勉強ひたすら勉強!! もはや勉強か訓練しかしていない超真面目もの!! 学年一位、合同三年生のAクラス……レイ・クリオスだあああぁぁ!!!」

「「うおおおぉぉぉ!!!!」」


 歓声がすごい、おそらく先ほどの試合の影響だろうが。

 ちらほら「……誰?」という声も聞こえるが。


「レイ〜〜〜〜!!! 頑張ってねぇぇぇぇぇぇ!!!」

 この声援はベレッタだ。

 信じられないくらい大きな声で応援してくれている。

 正直……少しだけ嬉しい。


「レイ・クリオスは……おおっと!! なんとイリス様と同じように能力のランクはS!! しかも未確認能力までも一緒だぁ!! 能力名は"超展開"!! 召喚系らしいのでそのまま発動させ……って召喚系!?!?」

 召喚系と彼女には伝わっているようだ。


「なんだとっ!?」

「まだ世界で一人しか使えない能力系統だぞ!!」

「はぁはぁ……しゅ、しゅきぃぃ!?!?」


 そう、召喚系が今まで使えていたのはただ一人だけ……全種族最強ホーラ・ドラク。

 龍族ドラクにして現在は消息不明の彼だが、数年前までは俺ら人族の味方をして共に魔王軍と戦っていたという。


 正直くだらない。

 Sランクだから、未確認能力だから、成績優秀だから……だからなんだというのか。

 捻くれているかもしれないが、そう思ってしまう。


「……これは私も気になる能力になりそうです!! それでは行きます!! よ〜いぃぃ!!! 始め!」


「"超展開アスク"レベル1」

 俺が唱えると共に周りは一斉に静かになった。

 注目されるのも変に力が入るから好きではない。


「何だよ! 何も起こらねぇじゃねぇか!」

「早くしろよ!!」

 ……やはり今回も発動時間が長いようだ。

 耐えきれなくなった観客から罵声を浴びせられる。


「もう少しくらい待ちましょうよ! 多分彼は今頑張っていると思うの!」

「うるせぇ! どうせお前はあいつの女だろ!!」

「んなっ!? そんなんじゃないわよ!!」

 ベレッタと観客の言い合いも聞こえてきた。

 流石に耐えきれなくなり、発動を止めようとしたその時。


「ん……なんか暗くねぇか?」

「おいおい、まだ昼だぞ……ってうわあああぁぁぁああ!!!」


 全員が一斉に空を見上げた。

 空が……?


 いや、違う。

「何かが落ちてきている!!」

 赤い物体の正体。

 それは超巨大な隕石であった。

 あまりにも大きすぎるそれに思わず空が赤くなったと勘違いするほどに。


「あ……あれを俺が……?」

 急に自分の能力が恐ろしくなってきた。

 本当に召喚系の能力だったらしい。


「まさか……ここまで大きな能力とは……皆、慌てるな!! わしが向かおう!! "風操作ブロウ"レベル4」

 風を操りライオス校長が空を飛ぶ。

 目指すは当然隕石だ。


「校長がいったぞ!!」

「やったわ! これでもう安心ね!!」

 安堵するのが早い。

 俺は知っている……大抵こういうのは……。


「"風撃ウィンダル"!!!」

 目には見えない風の塊が高速で円状に回転する。

 あまりの速さに俺たちはその空間が歪んでいるように見えた。

 だが、隕石に届く前にその歪んだ円は消えてしまう。


「威力が足りないか!! 仕方ない。"暴風ムスト"!!」

 今度は目に見える緑の枠が四つ作り出される。

 その四つの枠は増殖し、四つから八つ、十六、三十二と凄まじいスピードで増えていく。


「いけええぇぇ!!!!」

 校長の雄叫びと共に大量の緑の枠からは竜巻のような渦が現れた。

 それらはものすごい勢いで隕石に向かっていく。


「す、すげぇ……」

「すごく使いこなしてる……」

 その凄まじい能力に観客も思わず見惚れているほどだ。

 だが……。


 俺の目の前にがドサっと落ちてくる。

 落ちてきた物体に目を疑った。

 観客もそれに気づき、誰もが驚愕し口を閉ざす。


 そこには傷だらけの校長が倒れていた。

「こ、校長!!」

 やっと動いた口と足。

 そこで全員が現実に戻される。


「もうダメよ……お、おしまいだわ!!」

「校長が……こんな事になるなんて……」

「そもそもお前が能力を制御できていればこうはならなかっただろう!!! レイ・クリオス!!!」

 全員の怒りが一斉にこちらに傾くのを感じる。


 今俺はこの状況が分からなかった。

 何故こうなったのか。


「そうだそうだ!!」

「しゅきしゅき!!」


 全ての声が遠くなっていく。

 たくさんの非難の声……それに紛れる擁護する声

 何もかもが聞こえなくなってくる。


「やれやれ……これだから下界の者は、騒がしくて寝れやしない」

 俺の前に男が立った。

 黒いマントを身につけ、腰には紫の宝石が使われた細剣を持っている。


「何をすればこんな事になるやら、すぐ終わらせますね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る