第3話 超展開スキル

 お披露目会……これは闘技場で定期的に行われる能力お披露目の会だ。

 まずリハーサルで能力が危なくない事を確認し、そして本番……つまり数万の全校生徒の前で披露するわけだ。


 そして今がそのリハーサル……。

 俺も怖くてまだ試せていない"超展開スキル"という能力。

 想像がつかない。


 空には少し雲がかかっている。

 雨が降らないといいが。


「それではよろしくお願いします。まずはどの様な能力かが知りたいです。力を徐々に解放してみてください」

「はい」

 お披露目会運営側の兵士の誘導に従い、発動させて見ようとする。


 えっと……確か頭の中で能力を思い浮かべて……。


 すると頭の中で絡まった紐が自然と解けていくように文字が浮かんでくる。

 あとは唱えるだけ。

 なるべく……力を入れすぎないように……。

「"超展開アスク"レベル1」


 ……。

 だが、何も起こらない。

 詠唱が間違ったわけでもなさそうだ。


 おかしいな……と思っていると異変は現れた。

「え、えっと……もう一度試してもら――えっ!?」


 兵士が慌てて空を見上げる。

「あれは……なんだ!?」

 俺も上を見上げた、そこには幾つもの星が昼なのにも関わらず不気味に輝いていた。

 不自然といきなり輝き出した星々は一瞬で消え、そして


「……!? 何かが落ちてくるぞ!! 結界魔法を張れ!!」

 兵士の指示でその場で待機していた他の兵士たちが一斉に魔法を唱え始める。

 だが……。


「効かないっ!! あれは何だ!!」

 まるで隕石のように落ちてくるは兵士たちの結界を何事も無いかのように破壊していく。

 そして――。


 凄まじい衝撃と共に大気が揺れる。

 その場の温度が一瞬で膨れ上がった……とても暑い。

「一体……何が……」


 砂埃が晴れ、徐々に視界が明けていく。

 自分の目の前にその熱気の正体がある、それが何となくわかる……これは何だ?


「熱っ……」

 恐る恐る触るとやはり熱い。

 だが絶えられないほどのものでは無い。

 俺はを引き抜いた。


「剣……?」

 視界が完全に晴れ、剣の形がはっきりと見えた。

 鞘の部分には女神様の紋章であるドラゴンとそれを包む女性のマーク。

 小さくもなく大きくもなく、俺がいつも使っている剣とほぼ変わらない重さだった。


 その時、一瞬にして背後に気配を感じた。

 振り向くとそこにはとても顔の近い校長がいた。

「こ、校長……?」

「間違えない……ロストアイテムだ……」

「へ……? え?」

 ロストアイテム……それは昔、女神様が使っていたとされるSランク以上のアイテムだ。

 ちょっとした魔道具は各地に展示されていたりするが、

 それが今俺の手に……。

 とてもじゃ無いが、信じられん。


「レイ君……」

「は、はい……」

「……凄いなぁ!! 召喚系か? それとも創造系か? いずれにせよ、もう一回やってみてくれよ!」

 この校長は驚きよりも好奇心が勝っているのか?

 俺は好奇心よりも、怖いよこの能力。

 レベル1なのにロストアイテムが出てくるなんて……。


 リハーサルはどちらにせよ二回確認する。

 それはその能力が本当に安全かを見極めるため……。

 あー、正直本番出たくないなぁ。


「わかりました……」

 だがそれは仕方のないこと。

 Sランクがここで逃げ出せば最悪指名手配だ。


「わくわく……」

 完全にキャラを見失っている校長は置いておいて、俺は力を込めた。


「"超展開アスク"レベル1」

 しばらくの静寂。

 兵士たちも流石に気を張っている。

 結界魔法の準備を行う者がほとんどだ。


「総員、警戒ぃぃ!!!」

 ……。


 ……。


 ……。


 どのくらい経っただろうか。

 武器よりも三倍ほどの時間が流れた。

「来る……」

 校長がそう言った瞬間、またも兵士が叫ぶ。


「総員、結界魔法を――」

「やめい!!!」

 校長が止めた。


「"風操作ブロウ"6

 突然、周りの音が何かの音によってかき消される。

 人の声も何もかも聞こえない。

 代わりに聞こえるのはまるで魔女の笑い声だった。

 恐ろしい程の不気味な音に俺は思わず尻をついた。

 未だ前に立っている校長を見ると、こちらをみてウインクしてきた。


 少し落ち着く……と共に、おっさんがウインクはやめろ、とも思った。


 冷静になって上を見て気づく。

 それは異様に不自然で、不気味……けれどもとても綺麗な光景だった。

 何か二つの……いやふんわりとこの闘技場に落ちてくる。


 そして、さっきまで空にあった雨雲は闘技場の周辺だけはなかった。

 代わりに明るい太陽が俺たちを見下ろしていた。


         ***



 レビュー見ました! ありがとうございます!!

 次も明日予定。

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