第3話 『どいつもこいつもまなべさん』

数年後、


人口の半分が、政府の特別制度で『まなべ』に姓を変えているというニュースがリビングのテレビから聞こえている。


名前にプライドのないやつばかりである。

流行りに乗っかった哀れな連中だと罵る。


電気屋に行っても、スーパーに行っても、


ガソスタに行っても、コンビニに行っても、


『まなべ』『まなべ』『まなべ』『まなべ』


まなべ祭りである。


気がふれそうになるのを必死にこらえながら、


なんとか生きている。


『俺もねまなべに変えたんすよ』


という後輩の話を無視しながら、


昼飯の中華屋の一杯860円の餃子定食を食べながら、


テレビを観る。 


政府はまなべ姓は日本人にふさわしい名字であり今後は全市民をまなべ姓に変える方針で、


まなべ姓に変えた特別給付金を出すとまで言っている。


全くここまでくると、冗談みたく思ってしまうが、


中華料理屋の店主も、常連客相手に、


『まなべ姓に変えようかね』


そしたらこの店の名前も変わるなと大笑いしている。


つまようじでシーハーシーハーしながら、


男は、呆れたようにその会話を見ているのであった。

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