第3話 『どいつもこいつもまなべさん』
数年後、
人口の半分が、政府の特別制度で『まなべ』に姓を変えているというニュースがリビングのテレビから聞こえている。
名前にプライドのないやつばかりである。
流行りに乗っかった哀れな連中だと罵る。
電気屋に行っても、スーパーに行っても、
ガソスタに行っても、コンビニに行っても、
『まなべ』『まなべ』『まなべ』『まなべ』
まなべ祭りである。
気がふれそうになるのを必死にこらえながら、
なんとか生きている。
『俺もねまなべに変えたんすよ』
という後輩の話を無視しながら、
昼飯の中華屋の一杯860円の餃子定食を食べながら、
テレビを観る。
政府はまなべ姓は日本人にふさわしい名字であり今後は全市民をまなべ姓に変える方針で、
まなべ姓に変えた特別給付金を出すとまで言っている。
全くここまでくると、冗談みたく思ってしまうが、
中華料理屋の店主も、常連客相手に、
『まなべ姓に変えようかね』
そしたらこの店の名前も変わるなと大笑いしている。
つまようじでシーハーシーハーしながら、
男は、呆れたようにその会話を見ているのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます