第2話 『増殖するまなべさん』

私がまなべさんを探しはじめて4ヶ月が、経とうとした頃、


まなべさんが越していったというアパート


『メゾンド鰯』の近くに自分もアパートを借りた。


『ほうれん荘』という名前の昭和テイストのアパートだ。


そのアパートから張り込みの刑事のようにまなべさんを見張ることにした。


ただ、まなべさんがどんな人物かわからない以上、


手の打ちようがない。


そこで聞き込みを再度することにした。


人物像を割り出そうという魂胆だ。


すると、いくつかのことがわかった。


今までのことを総合して考えると、


『まなべさんは神出鬼没』


『足が速い』


『まなべさんは男であること』


『まなべさんは誰もが知る顔の知られた有名人』


『ただし、顔は知られているのにも関わらず誰もまなべさんをどのような人物か説明できない』


そして、新事実


『まなべさんは信じるものにしか見えない』


というのが調べてわかったことだ。


信じるものにしか見えないならば、


まなべさんとニアミスするのは、おそらくそういうことが理由なのであろう。


アパートに乗り込もうと、


『メゾンド鰯』の門をくぐる。


こうなれば直接住人を一人ずつあたるしかない。


部屋をひとつずつつぶしていくように、


『まなべさん知りませんか?』


と訪ねると、


『隣がまなべさんです』


というので、隣を訪ねると、 


『真下がまなべさんです』


というので、


真下を訪ねると、


『最上階にまなべさんはいます』


と言われる。


結局たらい回しにされただけで、


まなべさんはこのアパートにはいないことがわかった。


きりがない。


管理人に聞くのが一番手っ取り早いと思い、


管理人に聞くことにした。


管理人実の呼び鈴を鳴らす


(ピンポーン♪)


『お忙しい中すいません、まなべさんこのアパートにいますか?』


すると、


『このアパート全員名字がまなべですよ』


そこは、


『同姓専用アパート』だったのだ。


ちなみに、管理人の名前も


『まなべさん』だった。


私が探すまなべさんは一体

何処にいるんだろうか。


また、一からまなべさんを探す放浪の旅がはじまるのであった。







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