1章 学園試験
第4話 外の世界での戦闘
正午。
森の中を息がキれない速度で駆け抜ける。
木が密集しているところは木や地面を蹴り進んでいく。
運よく魔物の数は少ないため踏み台にしたりして加速させ先を急ぐ。
目的地のアルテカ王国の方角はわかっている。
森の中でも日差しは見ようと思えば見れる。
ジンから集落から300キロも進めば着くと言われている。
おそらく4時間ほど走っているが一時間で50キロは走れているからあと2時間も走れば到着するだろう。
体力的に持つかは心配な部分ではあったが問題なく走れているところを見ると修行の成果は出ているのだろうと実感するところがある。
少し気持ち的に興奮気味になるがペース配分は間違えない。
無心で1時間ほど走ると森を抜ける。
そこで立ち止まってしまう。
集落は森に囲まれた場所で木々に囲まれた世界で生きてきた。
抜けた先にあったのは話でしか聞いたことがなかった草原が広がっている。
森で感じる風とはまた違う風が頬を撫でる。
深呼吸をする。
森のないという景色が新鮮過ぎて頭の中が真っ白になる。
心を入れ替えると再び駆け始める。
そこからすぐの事だった。
固まっている人たちを囲んでいる魔物たちを見つけたのは。
視点???
「お嬢様!!我らの後ろにお隠れください!!」
「お嬢をお守りしろ!!我らの命に代えてもだ!!」
私は一人剣の柄に手を添えて隠れている、
無力というわけではないと自負はしている。
しかし私の執事や護衛たちはそんなこと関係なく守ろうとしてくれている。
その圧に負けて隠れてしまっているのだが...。
周りの魔物はエビルモンキー、グレントベア、ブラックウルフだ。
グレントベア一体とエビルモンキー5対程度なのは問題なかったのだがブラックウルフが20体もいることが痛手だった。
モンキー3体とブラックウルフ7体は倒していたが5人いた護衛のうち2人は重傷を負って私の周りで苦しそうにしている。
何とか魔力が続く限りヒールをかけているが修練不足なのだろう傷をうまく治すことができない。
「自分の体とか擦り傷程度なら上手くいくのに...」
苦い顔をしながらもなんとか治癒し続けるが
「がぁぁぁぁぁ」
「一人やられたぞ!!ヤバいグレントベアの爪が深く入っちまった」
私は蒼白してしまった。
今のケガの応急処置だけでも手一杯なのにそんな重傷者が...。
決心する。
守られるだけではもうジリ貧だと。
「モーリエ!!私も戦います!!!」
「ダメです、ユーリお嬢様!このまま戦っても戦力不足になるだけです。悔しいですが私の治癒にも限界が...」
「お嬢様の意思をしかと受け止めました。このモーリエお嬢様に傷一つつけませぬぞ!やるぞぉ者どもぉ!!」
「おおおお!!!!!!」
護衛たちから歓声が上がる。
私は剣を抜き戦闘の態勢に構える。
「お嬢様、ベアは私が押さえますのでエビルモンキーをお願いいたします。今の技量なら問題なく殺れる魔物です」
「わかりました」
私はエビルモンキーに体を向け、足に力を入れて駆けだした。
自分を襲ってきたと感じたエビルモンキーは拳をこちらに飛ばしてくる。
避けられない速度の攻撃ではないので顔に触れるまであと数センチというところで体の軌道をを変えて避ける。
後ろに回れたと同時に持っていた剣を全力で振るいエビルモンキーの首を撥ねた。
「ギャァァァァ」
エビルモンキーの悲鳴は完全に撥ねたと同時に消え失せた。
修練通りの結果が出たことに落ち着きを覚えてしまう。
それが命取りだった。
気づいたときには遅かった。
もう一匹いたエビルモンキーから拳を腹に貰ってしまった。
「きゃぁぁ」
「お嬢様ぁ!」
モーリエが飛ばされた私の体を受け止めてくれる。
しかし、その隙を見逃さずグレントベアが大腕を振るう。
その時無防備だったモーリエの背中を切り裂いた。
「...グゥ」
モーリエは膝をついてしまう。
「ごめなさい!モーリエ私のせいで!すぐ、すぐ治すから」
大慌てでヒールをかける。
しかし未熟な私のヒールでは治癒が遅い。
もう戦えるのは護衛2人。
一番強いモーリエが倒れてしまった今もう生きる希望を失ってしまった気持だった。
涙が流れてしまう。
あぁ、終わるんだと。
ただ、苦しくなる。
「ごめん...なさい」
苦し紛れに出てしまう。
「お父様...ユーリはここまでのようです」
神に祈る、救済を。
叶うはずもないのに。
その時だった、目の前に知らない背中が現れたのは...。
魔物が囲んでいるのは人の集団だった。
馬車があるところを見るとジンからの話だと貴族か移動中の平民用の馬車だったはずだな。
それだけの情報があればこの状況の解は簡単だった。
襲われている。
犬とクマとサルもどきだが見たところかなり苦戦している。
ジンからは自分の価値観だけで物を見るなと伝えられているがあそこにいる人たちでは辛い戦闘なんだろうな。
魔物たちの隙間から少女が見える。
その少女が老人を抱えて涙を流していた。
それを見た瞬間、黒月の柄を握る。
「
俺はその直線状にいた魔物を斬って少女の前に立っていた。
犬は3匹程度斬れたがかなり余ってしまった。
目の前にはクマが立ちふさがる。
「あんたら、下がって馬車あたりに固まっていろ。間違って刃が飛んじまうかもしれねぇ」
「え?」
少女は困惑した声を上げる。
「早く下がれぇ!!!」
「は、はい!」
軽く引きずる音が聞こえる。
馬車のほうに行っているのは音の離れ方から感じ取れる。
「さて、殺るか」
黒月を鞘に納め、格闘の構えをとる。
「な...、...てるんで...」
後ろが何かわめいているが気にしなくていいだろう。
まずは魔物に殺気を飛ばす。
魔物たちの意識がこちらに向いた瞬間クマに向かって駆ける。
「
クマの腹に拳を叩きこむ。
サルもどきなら即死だがクマは固いから麻痺程度の威力しかないがそれでいい。
再び黒月の柄を握る。
頭の中で敵の斬るルートを浮かべクマの体を蹴りサルもどきと犬に駆ける。
クマの体が地面に転がるのをよそめに黒月を抜いた。
「
完璧に想像したとおりに8連撃をキメる。
一匹残ってしまった犬がこちらに襲い掛かってくるが反射で斬った。
斬った首が撥ねたところを確認すると、クマに体を向き直す。
クマは先ほどの状態から立ち直りこちらに殺意を向けてくる。
俺はそこで放心した。
鈍らないように、ある技を使うために。
刀の刀身をクマに向け、目をつぶりただ...待つ。
敵がこちらに来るのを。
クマは警戒しながら殺意を向けながらこちらの反応を伺う。
まるで師との間合いとり。
しかし、クマごときがその次元の戦いができるはずがない。
我慢をきらし先に動いたのはクマだった。
深呼吸する。
ただ世界に自分を落とし込む。
そんな感覚を身体に形作る。
クマが間合いに入る。
瞬間肉体が‘‘勝手に‘‘動く。
「
銀の筋が2つできる。
その筋はちょうどクマの心臓のある位置と首で輝いた。
巨体は倒れる。
3メートルはあろうクマはただそこに倒れる。
俺は目を開け後ろを振り向く。
そこには俺が切ったであろう魔物たちの死骸が転がっていた。
深呼吸する。
落ち着いて思考を回し始める。
よし、とりあえず。
助けたしさっさと王国行こう。
ハクレイの姉さんが待ってるからな。
俺は助けた人たちを尻目に王国のある方角へと駆けて行った。
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