第45話 黒幕を見つけろ
寝室に戻った俺はウォークインクローゼットに掛かっていた着心地が良いTシャツに、泥などで汚れても構わないジーンズに着替え。最後にメイドが綺麗に磨いたであろうコンバットブーツを履くとナビリスが手に持って来たミスリルロングソードが仕舞われた剣帯を腰に差した。少しベルトが緩くなっていたので、丁度良い位置まで調整すると。ナビリスに礼を言って一階に降りた。
廊下歩いているとばったりと会った銀孤に今から向かう予定を大雑把に伝え、玄関付近の床を箒で掃いていたメイドに扉を開けてもらい外へ出た。外に出た瞬間、まぶゆい太陽の光が俺を照らし。体の中まで射通すかのような明るい陽射しに思わず目を細める。
今の時期、季節は夏に近付いてきてる。王都の場所は大陸のやや北に位置しているので気温はそんなに高くは無い。しかし、念の為にナビリスにメイド達が作業中倒れないに、と伝えておくか。
無から作った馬車を過ぎ去り、徒歩で門まで向かう。役目をきちんと果たしている門番に一言声を掛け、そのまま貴族街へ向かった。
今回は神眼を使用していないので、まだ黒幕が誰かは判明していない。だが、神眼を使用しなくてもダーゲットを絞り込む事は出来る。
襲撃者を雇い、エレニールとアンジュリカを亡き者にしようとした黒幕は恐らく上級貴族の者だろう。
そんなに頭を使わなくても分かることだ。
おおよそ、婚約を掛けた決闘で負けた者の仕業であろう。
…あほらし。人間は自分が恥を掻いたと理由だけで同族を殺そうとする人種だ。
そうゆう光景は神界で数えられない程見てきた。しかし神々はどのような状況に成ろうとも手を貸さずただ眺めるだけ。
一応使命と関してして世界を管理しているが。本当はそんな面倒な事もしなくても良い。
ただ俺達神は暇つぶしとして無数の世界を作り、仕事と項目として管理しているだけだ。
例え管理している世界が破壊されても、崩れたジェンガをまた積むかの如く創り直す。
神々からすれば俺の方が異常だ。…まぁ俺が神界で色々下界の物を創造していたらそれに興味を持ち、自分が管理する世界へ遊びに降りたった神もいるが。
地球を管理する俺の娘であるメルセデスもその一柱だ。
特にメルはアップルパイには目が無い。
ある日、他の子供が勝手にメルのアップルパイを食べてしまい、神としてあるまじき本気で怒った時など親の俺でも手に負えなかった。
貴族街を抜け、他の区域と分ける様に置かれた城壁そ潜り抜け商人や平民が暮らす一般街へと進む。初めに冒険者ギルドへ寄った。
ちゃんとした理由は無い。ただ屋敷を出た時から遠くで俺を監視している目線が気持ちわるかっただけだ。
神眼は使っていないので何者かは判明出来ていないが十中八九エレニールの手の者。それか、俺の噂を聞きつけた貴族の下っ端か。まぁどちらでも俺は構わない。
冒険者ギルドへ入ると既に俺がAランクに昇格した事が広まっているのか中にいた冒険者達から一斉に目線が俺に集中し、ひそひそと彼等のパーティーメンバーで話し合っている。残念だがどのパーティーにも所属する気はこれっぽちも存在しない。逆に神という事がバレる可能性もある。
パーティーを誘ってくる冒険者達を華麗に躱し依頼が張られている掲示板へ向かい、面白そうな依頼が無いが確認する。
「……」
Aランクより上の依頼を眺めてみるが、貴族関係者からの依頼が殆どであり。依頼の内容も『何々を持ってこい』とか『我が息子に剣を教えろ』等の詰まらなそうな依頼しか張られていなかった。
「…はぁ」
無意識に失望でため息がこぼれた。もうギルドに用事は無いな。
そう思うと後ろを振り向き、そのまま冒険者ギルドから出ようとした瞬間。とある紙に書かれた内容にその足を止めた。近付き、掲示板の端に張られた気になった紙を読む。
依頼書でもない普通の紙に書かれた内容には、ここ最近誘拐事件が多発していることだった。
しかし、依頼ではない只の忠告の言葉だったのですぐに興味をなくすとギルドから出た。
扉へ向かう途中何回か話しかけられた気がしたが、別に無視でも構わないだろう。碌な用事でもなさそうだったし。
「…ん?」
道中美味しそうなパンケーキ屋で腹を満たし、満足そうに腹を擦りながらぶらりと貴族街の風景をこの目で眺めながら歩いていると、薄っすらと少し奇妙な魔力の流れを感じ取った。
歩いていた足を止め。流れを感じとった方角へ顔を向けると、そこには広大なな敷地からから薄っすらと流れていた。その流れには呪いに似た禍々しい何か。
さらに、周囲に設置された魔導具等を発動していて他の者には決して気づかないであろう微弱な流れだ。
『ナビリス』
念話でナビリスを呼んだ。
『ん?どうしたのショウ?』
即座に彼女からの連絡が来た。
『俺の視線の先にある屋敷から妙な魔力の流れを感じ取ってな。あの建物の所有者を教えてくれないか』
神眼を使用すれば即座に分かるのだが、今回は縛りを掛けているので彼女に頼む事にした。
『ん~?あ~成程。黒幕を発見するのは早かったわね?あの建物の所有者が王女達の暗殺を雇った者よ。土地の所有者はロスチャーロス教国に接した場所に領地を持つスティダハム辺境伯よ』
またロスチャーロス教国。それに意外だ。当初俺はエレニールに襲撃を仕掛けたのは、彼女との婚約を掛けた決闘に負けた腹いせだと思ったが。理由は全く別だったらしい。…ふむ、この指名依頼、きな臭いが少々興味深くなったな。今夜屋敷に忍び込むか。
勿論神眼の使用は禁止で。
それにあそこから流れてくる魔力も気になる。まぁ碌な物ではないは確かだが。
その場で今晩の予定を決めると。クルリと振り向き、自宅の方向へ向かった。
「いってらっしゃいショウ。やり過ぎには注意してね」
屋敷に帰り着きそのまま寝室に戻ると実行の時間まで本棚に入って居た本をを読んでいた。読み終える頃にはナビリスが調理してくれた特性のビーフシチューを銀孤を含めた三名で食べ終わり。寝室に戻り装備を準備していると、何時の間にか俺の近くに居たナビリスから忠告を貰った。
「心配する必要はない。エレニールから言われた通りに彼等が暗殺者を雇ったという確実な証拠を手に入れたらパパッと転移でこちらまで戻ってくるよ」
彼女が何に心配しているか分からない。神眼を使用していないとこんなに不便とは、これから神眼先生と呼ぼうか?
「…いえ、何でも無いわ。でもショウの事を心配するメイド長て良くない?」
そうフフフ、笑いながら俺をからかいだすナビリス。……そういうことにしとくよ。
「分かった。一応依頼の物を回収したらナビリスに念話で伝えるよ」
「了解」
そういって寝室から出ていった。これから彼女は奴隷達に訓練を与えるだろう。彼女は容赦ないからな。初日、ナビリスに良いところを見せようとした元冒険者の奴隷達をボロクソに訓練していたからな。自信があった攻撃を素手で受け止めていたからな。
…さて、俺もさっさと向かうか。
さっき魔力を感じ取った場所まで転移を唱え、俺の姿は一瞬にして消えた。
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