第22話 Bランク

召喚された勇者達がダンジョンに入った。彼等は城で騎士団副団長による指導で、この世界の歴史。武器を使った実験訓練。


そして地球には存在しなかった、スキルや魔法の訓練。


一週間,周りが引くほどの訓練を重ねた勇者達はバンクス帝国が管理する一つの下級ダンジョンに向かった。


生徒達の中に、一人。召喚された瞬間から面白い生徒を見つけていた。彼が愛する者を守りたい、と言う願いに、俺が人間の頃を思い出した。つい彼の状況に加護を与えたが。その力をどう使うかは、彼次第だ。



Bランク昇格試験を終えてから、三日が経った。

今日、冒険者ギルドにて試験の結果が発表されるはずだ。


ナビリスの挨拶に答えたショウは、今まで使用していた神眼を切り。目を開け、ベットから起き上がった。この宿に来てから毎朝欠かさないジャグジーに入る。その間、ナビリスから世界で起こった出来事が伝えられる。


ジャグジーから上がり、何時もの変わらない服装に着替えたショウは、そのまま変わらず賑わう街中へ出掛けた。


『…相変わらず今日も、俺も後を追っているな』


『ええ、全く同じ人数だね。どうするショウ?』


ナビリスのどうする?は消すかどうか?。なんだよな…。ん~面倒くさい。


『いや。放っておこう』


襲撃も受けていないので無視することにした。…面倒だし。


『ふふ、分かったわ、ショウ』


と言う事で、ほぼ毎朝寄っているコーヒーショップ店に入り、注文を頼もうとしたら。

既に俺が毎回頼むコーヒが用意されていた。どうやら、俺が毎度同じ時間。同じ種類を頼むので、店員が用意していてくれたらしい。


カウンターに置かれたコーヒーが入った紙コップを手に取り、笑みを浮かべている女性店員に礼を言い。少し多めに金を渡した。


珍しく機嫌が良い俺に誰の邪魔も無く、冒険者ギルドに辿り着いた。

建物の目の前にある広場で武器の訓練や、パーティーの誘い込みなどを横目で見ながら、何時も開かれている扉を潜り、ギルドに入った。


ギルドへ入った瞬間、無数の目線が俺に向く。特に嫉妬や、侮蔑だ。友好的な表情をする者はいない。

理由は、恐らく俺がパーティーを断り続けているせいだろう。中には権力をチラかせ、上から目線でパーティーに誘ってくる輩も居る。


そんな俺に集まる目線を全て無視して、受付に並んでいる列で待つことにした。


「お待たせ致しました。本日は何の御用でしょうか」


「Bランク昇格試験を受けたショウだ。試験の結果を知りたい」


今日まで見たことが無い受付嬢に内容を伝えた。

防具も碌に身に着けていない俺が伝えた内容に、受付嬢は驚いていたが。直ぐに丁寧な対応した。


「ショウ様ですね。…確かにBランク昇格試験をお受けになっておりますね」


カウンターの下から何やら書類を取り出し、俺の顔と一枚の書類を見比べた。

本物の試験者かどうか、確認しないといけないらしい。


試験結果は冒険者ギルドの裏にある訓練場で行うと言われ、受付嬢に礼を言うと、一回外に出て。裏に設置されたこれも又立派な訓練場へと向かった。

普段なら大勢の冒険者が訓練をしながらスキルを磨いたり、体力をつけるため筋トレをしていたり、パーティー同士で摸擬戦をしてたり、魔法の練習をしているが、今日は静かだ。訓練場の中心には今回の試験官であったAランクのベルンへイムとトゥーヴァの他に。他の試験者も居た。楽しそうにお喋りをしている。


彼等が俺の姿を確認すると、しんっっと静まり返った。この状況に俺は苦笑しながら、彼等の元へ向かった。


俺が他の試験者の元へ行き、全員が揃うと。今まで目を瞑り、腕を組んでいたベルンへイムが目を開いた。


「よし!全員揃ったな!それでは、早速試験結果を発表する!」


彼の迷いが無い大声に思わず固唾をのみ込む試験者達。


「では、合格者を発表する!」


彼の言葉を聞き逃さないよう、手を強く握りしめ合格を祈る試験者達。


「フォラス!カイエン!アザミ!フレア!ランディー!リカルド!そして…ショウ!お前たちは無事Bランク昇格試験を合格だ!」


結果はゼルギウス以外、全員が合格だった。名前を呼ばれた冒険者達は、驚きや、喜びを表している。フォラスなど泣きながらガッツポーズを取っている。

俺はゼルギウスの他に数名不合格なると思ったが、いい意味で裏切られた。


唯一名前を呼ばれなかったゼルギウスは頭を下へ向けながら、歯を食いしばっている。やはり悔しそうにしているが、それでもBランク昇格試験を受けれる実力を持つだけの事はある。ベルンへイムに文句を言おうとしない。


ベルンへイムが悔しく歯を食いしばっているゼルギウスへ寄り、彼の肩を数回強く叩き。そのまま手を載せた。


「お前の実力なら直ぐにでもBランクになれるだろう。だが、今回の試験内容は盗賊の壊滅だった。依頼が盗賊の捕縛なら、お前の判断は間違っていない。…まぁ、次の試験ではお前は絶対Bランクに上がれる!気に病むな!はっはっは」


ゼルギウスを励ますように言葉を伝えるベルンへイム。流石Aランクだ、と俺が関心していたら。目線を上げたゼルギウスが俺を睨みつけ、即座に「はい!」っと元気がいい返事をした。


俺…よく睨まれているな。

そんな呑気な事を考えていた。


Bランクに昇格した祝いに今晩、酒場で食事を取ることになった冒険者達。どうやら、彼等が所属しているパーティーも誘うらしいが、俺は誰からも誘われなかった。『ドンマイ』とナビリスが笑いながら俺を励ますが、俺は別に気にしない。彼等も断ったパーティーと一緒に祝うのは気まずい、と思ったのだろう。そのまま解散し、ギルドへ戻った。


「お待たせいたしました。こちらがBランクギルドカードとなります。どうか無くさないようお願い申し上げます」


ギルドへ戻り、受付に向かうと、丁度セリアが居たので、彼女の受付の列に並んで、Bランク昇格の事を伝えた。どうやら彼女は既に把握しており、カウンターの奥にある階段を登り、直ぐに金ぴかに輝くカードを持って来た。


彼女の言われた通りに一緒に渡された針で刺した傷から新しいギルドカードに血を垂らして、全て問題なく完了した。勿論、隠蔽スキルでステータスを変えてある。


「おめでとうございますショウ様。これでショウ様も上級者の仲間入りです」


彼女の笑顔が眩しい。


「しかし、Bランクになった途端、様々な責任が起こる事を理解してください。…特に王族と、貴族には気を引き締めてください。ここランキャスター王族貴族は他国に比べて大分マシですけど、それでもご十分をお気を付けて」


さっきまでの笑顔は何処にいったのか、今度は泣きそうな目で両手を胸前で合わせ、上目遣いで必死に伝えてきた。彼女は今までこの必殺技で他の冒険者を落としてきたのだろう。


「ああ、了解した。気を付けるよ。それじゃ」


表情を一切変えず、ささっと帰った俺にセリアは一瞬ポカーンとしていた。


『Bランクおめでとうショウ。それで?これからどうするの』


冒険者ギルドから出た俺は数日前見つけたカレー専門店で一番高い料理を頼んでいたら、ナビリスからの念話が入った。


『ん~飽きるまで塔に登ろうと思っている。折角だし最上階までは登ってみる』


呆れた様子で深い深い息を吐いたナビリス。


『ショウ…貴方、先日。塔は人類が攻略させるためにある、とか言ってなかった』


覚えていたか。


『え?なんだって?』


『……貴方は現人神であって、難聴主人公ではないでしょ…。は~』


よし、勝った。


『もし俺が塔を攻略しても人類にはバレない気を付けるから』


『…分かったわショウ、好きにしなさい』


おおー流石俺のナビリス。話が分かるねぇ。


あ、このカレー美味い。

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